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「梨花……あんたっ!! ……あ……」
そこには顔面蒼白になっている母が立っていて、焦った声を出していたのだけれど、隼人の顔を見るなり正気を取り戻したようで動きを止めた。
「おばさん……梨花が起きてたから良かったものの……静かにして下さい」
「そ……そうね、ちょっと焦っちゃって……」
厳しめな隼人の声に大人しくなる母だけれど、物言いたげに隼人の方へと視線をチラチラと向けている。
一体、何なのだろう。
少し頬を赤らめている母に違和感を感じ、怪訝な目を向ける。
「どうしたの……?」
「えっと……その……」
率直に訊ねたのだけれど、母はまたも隼人へ視線をチラリと向けた後、何故か言いにくそうに口ごもる。
一体、なんだというのか。
隼人がいると話せない事なのか。
それを悟ったのか、隼人が少し腰を浮かした時、一つの足音が病室へとやってきた。
「なぁ、やっぱ8週目くらいなら、隼人くんとの子どもじゃないかな~。めでたいと言って良いのか……あ……」
「ちょ!」
言いながら入ってきたのは父で、私と隼人の顔を見ては動きを止めた後、一歩後づさっていた。
その顔は、しまったやってしまったというような顔だった。
「……え……?」
呆然とした声を出す隼人。
そうだ。そうなのだ。
私は無意識的にお腹へと手を回す。
……妊娠……していた? 本当に?
本当の本当に?
……あんな事があったのに、まだ私の中に居てくれたというの……?
涙が溢れる。
守り切れていなかったのなら、どうしようと。
守れないという事実より、妊娠していないという事実の方を欲したと思う。
けれど今、きちんとこうして生きていてくれるのか。
「俺の……子……?」
「……うん、その時くらいしか心当たりない」
ギギギ、と音がしそうな感じで首を回してこちらに向く隼人。
驚いているのだろう、ポカンとした顔をしていたが、私の言葉で更に目を見開いた。
だって、隼人としかした事がない。言い換えると、あの一夜だけしか経験がないのだ。
隼人の顔が徐々に赤く染まり、脳内で完全に理解しただろう頃には真っ赤になって口元を片手で多い、私のお腹辺りを見た後、私を凝視した。
「……産みたい……」
ポツリと呟く。
前は産めなかった。
でも今回は……きちんと産みたい。
以前の子と違うかもしれない。
もしかしたら魂は同じかもしれない。
あの時の後悔を今回もしたくない。
「産みたい! 駄目? 駄目なら一人で育てるから!」
「産んで良いに決まってる! 梨花、結婚しよう!!」
親の前だというのに、隼人は私を抱きしめ、私も隼人の背に手を回した。
そこには顔面蒼白になっている母が立っていて、焦った声を出していたのだけれど、隼人の顔を見るなり正気を取り戻したようで動きを止めた。
「おばさん……梨花が起きてたから良かったものの……静かにして下さい」
「そ……そうね、ちょっと焦っちゃって……」
厳しめな隼人の声に大人しくなる母だけれど、物言いたげに隼人の方へと視線をチラチラと向けている。
一体、何なのだろう。
少し頬を赤らめている母に違和感を感じ、怪訝な目を向ける。
「どうしたの……?」
「えっと……その……」
率直に訊ねたのだけれど、母はまたも隼人へ視線をチラリと向けた後、何故か言いにくそうに口ごもる。
一体、なんだというのか。
隼人がいると話せない事なのか。
それを悟ったのか、隼人が少し腰を浮かした時、一つの足音が病室へとやってきた。
「なぁ、やっぱ8週目くらいなら、隼人くんとの子どもじゃないかな~。めでたいと言って良いのか……あ……」
「ちょ!」
言いながら入ってきたのは父で、私と隼人の顔を見ては動きを止めた後、一歩後づさっていた。
その顔は、しまったやってしまったというような顔だった。
「……え……?」
呆然とした声を出す隼人。
そうだ。そうなのだ。
私は無意識的にお腹へと手を回す。
……妊娠……していた? 本当に?
本当の本当に?
……あんな事があったのに、まだ私の中に居てくれたというの……?
涙が溢れる。
守り切れていなかったのなら、どうしようと。
守れないという事実より、妊娠していないという事実の方を欲したと思う。
けれど今、きちんとこうして生きていてくれるのか。
「俺の……子……?」
「……うん、その時くらいしか心当たりない」
ギギギ、と音がしそうな感じで首を回してこちらに向く隼人。
驚いているのだろう、ポカンとした顔をしていたが、私の言葉で更に目を見開いた。
だって、隼人としかした事がない。言い換えると、あの一夜だけしか経験がないのだ。
隼人の顔が徐々に赤く染まり、脳内で完全に理解しただろう頃には真っ赤になって口元を片手で多い、私のお腹辺りを見た後、私を凝視した。
「……産みたい……」
ポツリと呟く。
前は産めなかった。
でも今回は……きちんと産みたい。
以前の子と違うかもしれない。
もしかしたら魂は同じかもしれない。
あの時の後悔を今回もしたくない。
「産みたい! 駄目? 駄目なら一人で育てるから!」
「産んで良いに決まってる! 梨花、結婚しよう!!」
親の前だというのに、隼人は私を抱きしめ、私も隼人の背に手を回した。
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