【完結】全て切り捨てて自分の幸せを掴みます~都合良い駒として生きるのはやめてやる~

かずきりり

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 残念ながら、ミニバンのような車は誰も持っていなかったのだ。

「子どもが生まれたら、ミニバン買うのも良いな」
「えっ!?」

 隼人は私の心が読めるのかと思える程にタイムリーな話題を口にされ、私は心臓が口から飛び出るかと思った。

「荷物が多くても問題なく、色んな所へ遊びに行けるだろ」

 隼人の言葉に私の胸が熱くなる。
 願っても叶わなかった未来だった。
 幸せな家族を作る事。
 自然と家族三人の将来像を語る隼人となら、私が願っていた未来を手に入れられそうで嬉しさが込み上げる。

 ――正直、諦めていた。

 シングルマザーで良いやと思っていたし、隼人とも一夜限りのレベルで考えていた。
 未来の夢や希望に、旦那という存在はなかった気がする。
 それ程までに、前の人生では大地たちに心を打ち砕かれていたのに、今は簡単に手に入る未来が予想できる。

(幸せな家庭を築けるんだ……。築いても良いんだ……)

 たった一人我慢してきていた。
 そして今回もたった一人、戦い続けると思っていたのだ。
 けれど、今は違う。
 誰にも必要とされていなかった、以前の人生とは違う。
 笑い声が絶えない家庭。
 子どもと共に笑い、育ち……子どもの結婚式に出席する。
 授業参観だって行けるし、向こうの親御さんと挨拶も出来るんだ。
 しかも、ちゃんと自分と血の繋がりがある子供の。

「梨花?」
「ううん、なんでもない」

 そんな当たり前だと思える……そんな事が、私には許されなかった。
 私は金を運ぶ道具で、家の事を全てこなす家政婦。
 感情を出さない人形。

 ――あの時、一歩踏み出して本当に良かった。

 心底そう思える。
 当たり前の事を当たり前の幸せとして受け止められる今を、大事にしていきたい。

「ちょっと車出してくるね」
「うん」

 病院とはいえ、車いすスペースは限られている。
 車の近くまで行けど、きちんと車を出さないと乗り降りできるスペースはない。
 というか、立って歩けるけれど、足が痛すぎて隣の車を気にしては乗れないと思う。
 扉を隣の車に当ててしまっては申し訳がたたない。
 やはり、しっかりと扉を開けられるだけのスペースは欲しいのだ。
 すぐそこの距離、数メートル先にある車へと隼人は向かう。
 しっかりと隼人の姿が視界に入る距離だ。

「……梨花。……なんで、そんな幸せそうな顔してんだ」
「……え?」
「俺達はこんな状態なのに……なんでお前だけ……っ!」
「っ!」

 恨みの籠った、低い声。
 誰かと振り返れば、小汚い恰好をした……でも、面影のある人物がそこに立っていた。

「大地……」
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