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魔界編

14.久しぶりのもふもふ

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クロは視線を彷徨わせ、言いにくそうに口を閉じていたが、しばらくすると意を決したのか私の方へ強い視線を向け、姿勢を正して口を開いた。

「……スワを傷つけたくなかったから」

なんだこの可愛い生き物は。
思わず胸が高鳴ってしまう。もう思いっきり撫で回したい衝動に襲われつつも我慢して、その先の言葉を促す。
そもそも瘴気に関しては人間が影響を与えてしまうもので、その瘴気によりクロは正気を失ってしまう。瘴気というより、人間の心が怖くなって逃げたと。このまま人間の側に居てしまえば、正気を失った自分がスワを傷つけてしまうのではないかと不安になったと。

「スワと一緒に居たかったけど……二回目だったし……」

目にいっぱいの涙を浮かべて、クロが言う。表面張力が頑張って働いているが、今にも零れおちそうなほどだ。
そんな顔でそんな事を言われたら、怒るに怒れない……というか可愛すぎる。

「あ……愛らしいっ」

思わずそう呟くと、視界の隅でフェスがピクリと動き、一瞬殺気だった気がしたが、ほんの少しだったので気のせいだと思う。

「全力もふもふを所望するーーー!!!!」
「はいぃいいい!!!」

私の掛け声に、叫びながら思わず条件反射かと言う感じで、大きいサイズの黒もふもふに変化したクロに飛び込み、頬ずりし、まさぐりまわし、もふもふをしっかり堪能する。
顔をつけ、しっかり息を吸い込んだりしているが、クロも逃げる事なく大人しくされるがままになっている。本当にクロは大人しくて他人の事を思いやれる、優しいこだ。
勝手に逃げた事に対し思う事があるのか、どこか所在なさげに視線を彷徨わせたり身体を揺らしたりしているのは気がついているが、全力で無視させていただいた。そもそもクロは悪くない。
、とりあえず今はもふもふ成分を補給しなければいけない、しっかり充電しなければ無理だ。もふもふ欠乏症とも言って良い。

「もう逃げないでね」

久しぶりの懐かしさをしっかり堪能しつつ、離さないぞ、という意味を込めて、クロの毛を握りながらクロにそう言う。
それに答えるかのように私を中心にクロも身体を丸めさせる。

『うん……』
「胃袋掴まれてるくせに逃げようなんて馬鹿ですわ~」
「結局捕獲されるだけなんだからな」

クロの返事に安心したかのようにシロとルークも悪態をつく。

「次逃げたら、縛り付けて、目の前でスワ様の料理をいただくところを見せつけますね」
『ごめんなさいいぃいいいいいい!!!』
「すみません、何言っているのか分かりません」

フェスのお仕置きが本当に嫌なのか、クロは謝るようにフェスに向かって頭を伏せた。
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