召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり

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番外編

番外.古龍の名前-二巻刊行記念SS

 古龍と共にドラゴンの谷へとやってきた。
 シロに乗っていれば上空からあっという間だ。周囲に飛んでいたドラゴンは、聖獣の存在に恐れおののいたのか、今は全く姿を見せない。

『モウ、イクノ?』

 古龍を送り届けて第一声にそんな事を言われれば、そのままさようならと離れるのも心が痛む。
 ブイヤベースが逃げる事はないけれど、ここで何が出来るのだろうと思ってしまう自分に苦笑しながら、一泊程度……と情に流れる所で思い出す。
 ここ、岩場しかないじゃないかと。
 流石に岩場で寝るのは無理。本当に無理。せめて砂。砂でお願いしたい! 身体が痛い!

「……そういえば古龍の生態調査とか言っていましたよね」

 フェスが滞在する理由を述べてくれたのだけれど、今はそれに対して全力で肯定は出来ない。

「しかし岩で寝るのは……」
「平にしてしまえば良いのですよ!」

 まさかの力技を言い出す聖獣。確かに凸凹しているよりはマシだろうけれど……素直には頷けない。

「ならばクロをベッドにしましょう」
「何それ最高」
『ならば岩は平にしてね!?』

 それだけの事であっさり了承するクロに対して本当に大丈夫なのかと思う気持ちはあるものの、本人が良いと言うのであれば良いのだろう。

『ヤッター!』

 しばらく滞在する事が決まったと喜ぶ古龍に対して、期待を裏切るような事を言う気持ちもなくなり、ただそのまま古龍の後ろを付いていく。

「古龍の他に古龍は居ないの?」
『コリュウノホカ?』

 歩きながら、生体数等の話を聞きたかったのだけれど、古龍を古龍と呼んでいる事に紛らわしさを感じてしまう。

「えんちぇんと? あんてぃーく?」
「英語とフランス語ですね! 確か、古という意味でしたか?」

 だからどこの歴代……以下略。
 シロは日本語以外にも言語習得しているのかと思えば、私以上の知力がありそうで。もはや突っ込みたくない。逆に間違いを指摘されそうで怖いわ。

「えん? ……あん……なんですか?」
「あ、アンで良いかも!」

 聞き取れなかったフェスの言葉から、名前にするのにはちょうどいいと閃く。

「古龍の名前はアンで!」
「赤毛ではないですけどね」

 またしても何か言っている聖獣が居るけれど、完全放置だ。なんでそんな物語まで知ってるんだよ、本当に……。

「古龍の名前はアン!」
『アン? アンー!』

 そこ。連呼するなと言いたくなる。何か嫌だ。

「アンね!」
『覚えやすいー』

 純粋な聖獣と魔王の言葉が、何となく良心に響いてしまう気がする。しかし今更ながら引き返せない事に若干の戸惑いを感じてしまっているのだけれど、そこは心の奥深くへと仕舞う。……ここにオトちゃんが居なくて良かったと思いながら。

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