【完結】婚約破棄された令息を婿に迎えますが、その人は私の最推しです!

かずきりり

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「あ……いや、私は……」

 ちっ。すぐに戻ったか。
 まだまだ心を許してもらえる存在というわけではないという事に、今度は心がチクリと痛む。
 ノエル様はゆっくり起き上がり、呆然として周囲を見渡した後、項垂れた。

「……情けない……ですね……」
「へ?」

 何がだろう?
 私の知らない間に、何かあった? どこかで目が覚めた?
 疑問符が頭の中を駆け巡っていると、ノエル様は痛ましい笑顔を見せた。

「私は魔獣一匹さえ倒せませんでした……」
「それは! 当たり前の事です!」

 むしろ王都で公爵令息として過ごしていたノエル様は魔物と対峙した事すらないだろう。
 いきなり倒せるわけもない。
 私だってクレハが居なければ今頃死んでいたのだから!
 そんな話を一生懸命話すのだけれど、ノエル様の表情は曇ったままだ。
 むしろ、少し羨ましそうに瞳を細めた。

「肩に居るのは……聖獣様ですか?」
「え、あ、はい。クレハって呼んでます……聖獣らしいです……ね? 私も先ほど初めて知って……」

 クレハを責めるように少し睨みつけるが、完全に私の視線など無視をしている。
 子憎たらしい鳥めがっ!
 そんなやり取りをしていれば、ノエル様はベッドから下りて、床に膝をついて頭を下げた。

「紹介が遅れました。ノエルと申します。会えて光栄に思います」
『知っている。顔を上げよ』

 え? えー? ええええー?
 私はまじまじとクレハを眺めてしまった。
 ノエル様が膝を付くほどの存在なの!? ただの赤い鳥なのに!?

『……早くベッドへ戻れ。じゃないとソフィアに皮を剥がれて丸焼きにされてしまうわ』
「しないわよ! 不味そうじゃない!」

 いくら鶏肉とはいえ、誰が喋る鳥なんて!
 失礼しちゃう!
 私達のやり取りを見て、ノエル様は顔を驚愕で染め上げると、弱々しく笑った。

「……ソフィア嬢は凄いお方なんですね……」

 褒められた!
 いや、でもこれはクレハの功績か? 何か複雑だ……。
 大人しくベッドへ戻ろうとノエル様が立ち上がった時、外が騒がしくなってきた。
 それに気が付いたノエル様は、窓の方へと向かい、私もその後をついていった。

「あれは……?」

 お父様とお兄様が魔物を切り分けて、お母様とエディが街の人に配っている姿が見えた。

「先ほどの魔物ですよ! 今日の夕飯は豪勢になりますよ~!」

 沢山取れた魔物の肉は、こうして配っているのだと説明をした。
 美味しいものは皆で分けるに限るのだ!
 ちょっとだけでも栄養のある美味しいものを食べてもらいたいしね!
 今日のドラゴン肉に思いを馳せていた私は、ノエル様が掌を握り締めていた事に全く気が付かなかった。
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