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「もぉ! 大丈夫だって言ってるのに!」
「殺されそうになってただろ! 用心するに越したことないんだよ!」
目の前でいちゃつく平民に、心の中は怒りで震えるが、表情は穏やかな仮面を被る。
マリーの取り巻きの中で一番顔が良いのは、このサミュエルだ。
平民のクセに、どんな遺伝子を受け継いできたんだとさえ思える程で、兄以上の美男子なのだ。これで地位があれば言い寄る女は数知れずとなっただろう。
レティシアもサミュエルの顔ならば認めており、専属侍従にして側に侍らせたいと思って声をかけた事もあるのだ。
しかしながら、サミュエルはマリー一筋で、レティシアの誘いをにべもなく断ったのだ。
マリーなんて消えていなくなれば良いのに。
レティシアは苛立ちを押さえながら、落ち着く為にお茶を一口、口に含んだ。
「まぁ……ノエルも追放された事ですし、もう大丈夫なのでは?」
マリーが殺されそうになった。
それを指示したのはレティシアなのだが、失敗し犯行が明るみに出た事で、ノエルに全ての罪を着せた。
ノエルは周囲に疎まれていたし、マリーに苦言をよく呈していたので、疑う事なく冤罪を被せられたのだ。
しかし、暗殺者に頼んでいるレティシアをレイモンドは見ていたらしく、バレたのだけれど……レイモンドは今後マリーに手を出さない事を約束してくれるならと黙っていてくれたのだ。その上、ノエルを辺境に追放する後押しまでしてくれた。
レイモンド曰く、全てはマリーの穏やかな生活の為だとか。
だからこそ、もうレティシアはマリーを陥れる事が出来ない。
「確かにそうかもしれないですけれど……」
「いえ、私はノエル様がやったとは思っていません」
納得するサミュエルの言葉を遮って、マリーは真剣な目でレティシアを見つめた。
「ノエル様は真正面から私に適切な言葉をくれていただけです。暗殺なんて卑怯な真似をする筈がありません」
「マリー……」
マリーの毅然とした言葉に、サミュエルの意見が偏りそうだ。
ただでさえ冤罪説が浮上しているのに、被害者がそう言ってしまっては、煽るだけではないかとレティシアは焦る。
「ノエルはそういう人よ。私の婚約者だった方がごめんなさいね」
「でも! そんな方には思えません」
「私はノエルの事をよく知っているのよ」
「とても誠実な方だと思います」
この私が言っているのに! 王女の言葉を悉く否定するなんてと、レティシアの怒りは頂点に達した。
そもそもノエルだって知り合って二年にも満たないではないか。
男は全て自分のものだとでも勘違いしているのではないかという嫉妬まで沸き起こる。
「殺されそうになってただろ! 用心するに越したことないんだよ!」
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しかしながら、サミュエルはマリー一筋で、レティシアの誘いをにべもなく断ったのだ。
マリーなんて消えていなくなれば良いのに。
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「まぁ……ノエルも追放された事ですし、もう大丈夫なのでは?」
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それを指示したのはレティシアなのだが、失敗し犯行が明るみに出た事で、ノエルに全ての罪を着せた。
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しかし、暗殺者に頼んでいるレティシアをレイモンドは見ていたらしく、バレたのだけれど……レイモンドは今後マリーに手を出さない事を約束してくれるならと黙っていてくれたのだ。その上、ノエルを辺境に追放する後押しまでしてくれた。
レイモンド曰く、全てはマリーの穏やかな生活の為だとか。
だからこそ、もうレティシアはマリーを陥れる事が出来ない。
「確かにそうかもしれないですけれど……」
「いえ、私はノエル様がやったとは思っていません」
納得するサミュエルの言葉を遮って、マリーは真剣な目でレティシアを見つめた。
「ノエル様は真正面から私に適切な言葉をくれていただけです。暗殺なんて卑怯な真似をする筈がありません」
「マリー……」
マリーの毅然とした言葉に、サミュエルの意見が偏りそうだ。
ただでさえ冤罪説が浮上しているのに、被害者がそう言ってしまっては、煽るだけではないかとレティシアは焦る。
「ノエルはそういう人よ。私の婚約者だった方がごめんなさいね」
「でも! そんな方には思えません」
「私はノエルの事をよく知っているのよ」
「とても誠実な方だと思います」
この私が言っているのに! 王女の言葉を悉く否定するなんてと、レティシアの怒りは頂点に達した。
そもそもノエルだって知り合って二年にも満たないではないか。
男は全て自分のものだとでも勘違いしているのではないかという嫉妬まで沸き起こる。
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