【完結】婚約破棄された令息を婿に迎えますが、その人は私の最推しです!

かずきりり

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 なんて思っていた私だけれど、本当の黒幕。完全な悪役というのを舐めていたのかもしれない。

「ちょっと。平民がこんな所に居ないでよ。汚らしい」

 ただ廊下で出くわしたというだけで、この悪態だ。
 王女殿下の側に居る護衛騎士なんて、何故か手を剣に添えている。
 人の邸を血で汚す気なのかと呆気に取られていれば、王女殿下はフンッと荒い息を吐いて、私にぶつかってきた。

「偉そうに真ん中を歩くんじゃないわよ」
「……汚いとか言っていたのに?」

 不敬かもしれないけれど、呆れすぎて心の声が口から漏れてしまう。
 そんな私を王女殿下は睨みつけた。

「平民なんて汚らしい存在でしょ」

 民あっての国だろうが。なんて事を言うんだ。
 じゃあお前は汚らしいものが集う国のトップなのかよ。ただの汚物じゃないか。
 なんて事は口に出さず、心の中に秘めつつ、私は事実のみを口にする。

「まぁ馬小屋の掃除をしていたので汚いのは汚いでしょうね」
「きゃああああ!!! 早く入浴の準備を! 着替えを!!」
「王女殿下! お待ちください!」

 慌てふためき、王女殿下は自室へと駆け出して行き、護衛騎士はその後を追った。
 ……仕方ないだろう。馬は貴重な足だ。しっかりお世話をせねばならない。
 大体、馬車だって馬が動かしているのだ。馬が居ないと何処にも行けないというのに、王女殿下の叫びようときたら……。

「世間知らずの箱入り娘か……」

 少し溜飲が下がったが、呆れる気持ちの方が強い。
 一生涯関わりたくないような人間であると思ったのだが、私だけが思っていた所で無意味なのだ。
 それからも、事あるごとに王女殿下は私に難癖をつけてきた。
 出会えば嫌味は当たり前。
 ぶつかられるのは可愛いもの。
 庭を歩けば上から水が降ってくる程度で、炎と風の魔法で乾かせば問題はない。
 汚水じゃないだけマシというか……そんなもの用意したくないだけだろうけど。
 そして私の身体能力を考えれば、階段で突き落とされた位は何のその! 魔物相手に戦っているのだから、受け身くらい当然出来る。
 しかし……毎日こんなのではストレスが溜まって仕方ない。

『燃やすか?』
「クレハ……それは……やめとこうか」

 一つ一つはどうでも良いが、積もり積もれば面倒この上ないし、我慢の限界も来るというもの。
 だけれど、燃やしてしまえば更に面倒な事になるだろう。
 悪役令嬢はこんなに執念深くて、身分という面倒くさいものを持っているのか!

「私、いつからヒロインになったんだろう……?」

 軽やかにかわしつつも辟易としている私は、毎日ノエル様グッズ部屋で癒されるのだった。
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