【完結】悪役令息の義姉となりました

かずきりり

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 むしろ婚約者でした! そうでした!
 期間限定だと思うのだけれど。

「義姉上、俺と踊ってくれませんか?」

 軽く飲み食いしていれば、もうダンスの時間らしい。
 ルイスに差し出された手を取るか……未だにヒロインは現れていない。
 ここで断るのも、義姉……いや、婚約者としてどうよ? エスコートされているわけだし。

 ――と、考えたのも、ほんのわずか。

 居ないヒロインの事を考えても仕方ない!
 ここはルイスに恥をかかせない事が重要だ。

「はいっ!」

 私はルイスの手に自分の手を乗せる。
 嬉しそうにするルイスの顔を見て、私は幸せを感じる。ルイスの喜びは私の幸せだ。
 正直言うなら、ルイスのダンススチルを現実で見て、目に焼き付けたかったのだけれど……ルイスと踊れるなんて、それもそれで良いのでは?
 リアルにルイスと触れ合うダンス。
 ルイスの体温や力強さ……そして匂いを合法的に拝めるダンス!
 息遣いまで感じられる、思った以上の密着具合に、今この瞬間を密封したいとまで願ってしまう。……どういった道具があれば、そういうの作れるんですかねー!?
 ルイスの口から吐き出された息が四散されるなんて……勿体ない!

 ――バタンッ!

 ありえない現実に蕩けていれば扉の開く大きな音が響き、そちらに意識と視線を向ければ、ピンクのロングへアに、可愛らしいドレスを来た女の子が入場口からパーティ会場を見下ろしていた。

 ――ヒロイン、マリー・クレトン子爵令嬢だ!

 私はダンスのステップではなく、嬉しさから軽く飛び跳ねてしまったのだけれど、立ち止まったルイスにより、その胸の中へ顔面からダイブした。
 うん、ごちそうさまです胸筋!
 喜びから少し冷静さを取り戻した私は、そこで音楽が止まっている事や、周囲の人達もダンスを止めて騒めいている事に気が付いた。
 そうだ。名を呼ばれる事もない途中入場ならば、静かに誰にも悟られないよう入るものなのだ。
 思いっきり初日から、ヒロインならではの無邪気さ出てますかー!?
 しかし、こんなシーンなんて覚えがない。

「気に食わない……」

 ボソリと呟いたルイスの言葉に顔を上げて表情を見れば、鋭い目つきでヒロインの居る方向を睨みつけている。
 何で!? 恋に落ちるのは、いつだっけ!?
 と、ヒロインの方に顔を向ければ、何故か視線が合ったような……しかも、思いっきり睨みつけられてませんかね!?
 しかも私の方を睨みつけながら、パーティ会場へと歩いていませんかねー!?
 え? なんで? どうしてだ?
 私、何かイベント忘れていたっけ?
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