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「ミア・セフィーリオ公爵令嬢、ルイス・セフィーリオ公爵子息のご入場です!」

 ザワリと周囲の騒めく音を聞きながら、入学パーティの会場へと足を踏み入れる。

「あれが噂のセフィーリオ姉弟……」
「魔術オンチと天才魔術師か」
「男の方は養子だと聞いたが……」
「二人、婚約したの知らないの?」

 いつの間に、そんな噂が流れていたんだ。
 おかしいだろ、私はモブだぞ!?
 確かゲームの中でミアは回想程度に出ていたけれど、ルイスを虐め倒す所か……あぁ、煌びやかに着飾っていたな。見事な公爵令嬢として、きちんと動いていたのだろう。
 ルイスを孤独へと追いやった描写しかなかったから、きちんと公爵当主となっているだろうし。そもそも私のように魔道具を作ろうとして四苦八苦もしてないだろう。そして、ちゃんと社交もしていそうだ。
 ……私は面倒でしてないけれどね!

「はああ……」
「「「ヒッ!」」」

 私が小さく溜息を吐けば、何故か周囲の人達は小さく悲鳴をあげ、蜘蛛の子を散らすように去って行った。
 ん? 私の溜息は何かの兵器なのか!? 何も出してないぞ?

「義姉上?」

 顔を上げれば、心配そうなルイスが私の顔を覗き込んできていた。

「ルイスの顔がかっこよすぎて兵器だ」
「ありがとうございます?」

 驚きに思考が停止し、思っていた事が、つい口を滑って出て来た。
 照れたように、けれど少し困ったように笑ってお礼を言うルイスが可愛すぎる! 尊い!
 けれど、それ以上に恥ずかしい! やばい恥ずか死ぬ!

「の……飲み物……」
「俺が取って来るので、義姉上は休んでいてください」

 ルイスがイケメンすぎて更に推せる。
 お言葉に甘えて、壁の方へ行って周囲を見渡す。
 探しているのは目立つピンク髪のヒロインだけれど、そんな髪色は見当たらない。

「義姉上、どうぞ」
「あ、ありがとうルイス。……私はここでゆっくりしているから、ルイスも行きたい所へ行って良いんだよ?」
「俺は俺の意思で義姉上の隣に居る事を選んでいるのです」

 ゲームとは全く違うルイス! これはこれで推せます萌えます!
 しかし、本来ならこのパーティでヒロインと踊るスチルがあった。ならば、今日出会う筈なのだけれど……。
 どれだけ視界を彷徨わせても、一向にヒロインらしき者は見当たらない。

「折角のパーティなのだから、ルイスの好きにして良いのに」
「……婚約者でしょう? 隣に居させて下さい」
「ルイスのお好きなようにー!?」

 ルイスの幸せを願うからこそ、ヒロインと出会って欲しいのだけれど、そう言われたら無碍にも出来ない。
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