【完結】ネットゲームで知り合った配信者に恋をした

かずきりり

文字の大きさ
16 / 57

16

しおりを挟む
『私の得意分野って何だろう……』
『しぃは器用貧乏的なところがあるからな~』
『しぃさんには、しぃさんの良いところがあるの! 落ち込む必要なし!』

 そう慰められても、自分の良いところなんて全く分からない。
 ここで愚痴のようなネガティブさを吐き出しても仕方ないし、今は自分磨きに集中するかと画面を見ていれば、別のメッセージ通知が入った。

『ロイさんからメッセージきた!』
『いってら~。いちゃついてこーい』
『しぃさん、今絶対顔にやけてるよね。後で話聞かせてね!』

 男を優先するなんて嫌がられてもおかしくないのに、二人は常に応援してくれる。
 その有難さを胸に、後で良い報告できると良いな! なんて思いながら、ロイさんからのメッセージを開いた。

『最近ゲームしてる? あんま見ない(笑)』
『減ってるかも! 自分磨きしてる!(笑)』
『おー良い事だね! 応援してる!』
『バランス良い食事を作るだけで時間つかっちゃう~』

 ロイさんの為に。なんて事は言わないけれど、それ以外ならば他愛のない会話として送る。
 ただの雑談で話題が広がれば、メッセージのやり取りが増えて楽しい時間が増えるからだ。

『自分磨き成功したら会おうか? ご飯奢るよ(笑)』
『まだ言ってる(笑)』

 正直こんな事を常に言われていれば、期待する気持ちを持ってしまい、諦めようとしている心が揺れ動くものだ。
 ならば連絡を絶てば良いのだろうけれど、それも出来ない。
 この時間が大切で、楽しみで、かけがえのない小さな幸せでもあるのだ。

『今、動画あげた(笑)』
『見に行く!』

 今、という言葉に胸を高鳴らせる。
 前とは違って、今回は時間が経ってからじゃないのだと、嬉しさでマウスを持つ手が震えてしまう。
 サイトの立ち上がりが少し遅いだけでイライラしながら、上げられた動画に辿り着けば、既に再生数が百を超えており、沢山のコメントが書かれていた。

「早……」

 気落ちした気持ちを吐き出すかのように、ポツリと呟いて動画を再生すると共に、少しだけコメントを見てみる。

<かっこいい><さすが><イケボ>

 お決まりのように並ぶ言葉の中、ある1つのコメントに、思わず目を見開いた。

<ひなたん:明日は雨らしいよ! 傘持って仕事行かなきゃね>

「……え?」

 背筋が震えた。
 明日は雨……。ロイさんの住んでいる所が、と言う事?
 私が住んでいる所でも、明日は雨だ。
 思わず全国版の天気予報を見てみると、一部地域でだけ雨の予報になっている。と言う事は、私とロイさんの住む地域も近いのかと嬉しい発見を覚えたと同時に、恐怖心と嫌悪感が心を被う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

ハメられ婚〜最低な元彼とでき婚しますか?〜

鳴宮鶉子
恋愛
久しぶりに会った元彼のアイツと一夜の過ちで赤ちゃんができてしまった。どうしよう……。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...