【完結】愛していたのに処刑されました。今度は関わりません。

かずきりり

文字の大きさ
15 / 23

15

しおりを挟む
 前回の事を振り返れば、私が会いに行かなくなった期間と被る。
 そう考えると、ランテス男爵令嬢が駄々をこねて、カラルスがそれを受け入れて、王女殿下の教育係になったのではないか。そんな事を思う。
 不敬があってはいけない、と言ったけれど、前回の事を考えてみれば、淑女としての教育レベルは同じだったかもしれない……せいぜい私の方が家柄的に上というだけだ。

「ねぇ、レガス伯爵令嬢、聞いてる?」
「あ、申し訳ございません、何でしたでしょうか」

 溜息が漏れ出るのを堪え、王女殿下へ意識を向ける。不敬にならないように気を付けなければ。そう思う反面、王女殿下はとても気さくで、むしろ市井に憧れを抱く少女だった。夢は平民になりたい!とまで言うので驚いた程に。
 話し相手として教養が必要だろうと思ったけれど、それは他の方がするので、王女殿下の息抜きとなるような相手を探していたらしい。……そうなれば、ますます前回の時はランテス男爵令嬢が行っていても問題はないという事になるのだけれど。

「……貴族として決められた婚姻って、どうなのかしら?レガス伯爵令嬢は幸せ……?」
「……っ」

 その言葉に、私は思わず息を詰まらせる。
 王女殿下の手にあるのは市井で流行しているという恋愛の物語だ。

「……恋って、どんなものかしら?とても素敵なものよね?」
「……そうとは限りませんよ……」

 困ったような微笑みで、それだけを返す。その言葉に裏を見抜いただろう王女殿下は、このお菓子美味しいのよ!と話題を変えた。それだけで、この王女殿下がとても察しの良い、賢い子どもだという事がわかる。とても教育をされているのだろう。
 幼い年齢でしっかり教育を受けているのであれば、確かに息抜きがなくては疲れてしまうだろう。今度市井のお菓子を……そう言おうとした所で、私はハッとする。
 ……毒を盛られた王族が、もし王女殿下なのであれば……。
 処刑される日まで、もう少しだ。ここは何としても乗り越えたい。
 ……乗り越えたところで、安心できるかは分からないけれど、今のように色々考えなくても済むだろう。できるのならば……婚約も白紙に戻したい。

「……王女殿下のお気に入りを私に教えていただけますか……?」
「えぇ!レガス伯爵令嬢も是非読んでみて!」

 物語の上でだけは幸せな恋人同士。現実は全く違うとしても……。
 せめて、そんな物語を読む事で、少しでも自分の心を慰められる事が出来たならば……。
 そうはいかないと分かっていても、何かに縋らないと自分の心がダメになってしまう気がしてしまう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです

hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。 ルイーズは伯爵家。 「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」 と言われてしまう。 その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。 そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

間瀬
恋愛
わたくしの愛おしい婚約者には、一つだけ欠点があるのです。 どうやら彼、『きみ』が大好きすぎるそうですの。 わたくしとのデートでも、そのことばかり話すのですわ。 美辞麗句を並べ立てて。 もしや、卵の黄身のことでして? そう存じ上げておりましたけど……どうやら、違うようですわね。 わたくしの愛は、永遠に報われないのですわ。 それならば、いっそ――愛し合うお二人を結びつけて差し上げましょう。 そして、わたくしはどこかでひっそりと暮らそうかと存じますわ。 ※この作品はフィクションです。

あなたの言うことが、すべて正しかったです

Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」  名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。  絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。  そして、運命の五年後。  リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。 *小説家になろうでも投稿中です

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ

さこの
恋愛
 私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。  そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。  二十話ほどのお話です。  ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/08/08

処理中です...