【完結】異世界で幽霊やってます!?

かずきりり

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36.怒り心頭

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「離して」

 流石に周囲の騒めきも大きくなってきた。お嬢様も少しイラつき怒りを孕んだ声でルネに対し言った。
 それでもただ睨むだけのルネに痺れを切らしたのだろう。お嬢様はルネの手を振り払おうとした……が。

「あ」
「お嬢様!?」

 いくら腕っぷしに自信があるとしても、筋肉満載の護衛騎士と令嬢だ。
 お嬢様が振り払おうとしても、ルネは一切力を弱めなかったのだろう。お嬢様は身体のバランスを崩し、少し後ろに倒れかかった。

「!」

 そこでルネも、しっかり捕まえていれば良いものを、思わずお嬢様の手を離した。支えを失ったお嬢様は、動きにくいドレスな上、背をのけぞらせて手を払おうとしていたのも相まり、頭から倒れ床に打ち付けた。

「お嬢様!!」

 慌てて声をかけるも、お嬢様の目が開く事はない。
 人一人守る事も出来ないのかと、ルネに対して嫌悪感が沸き起こる。
 あそこで手を離さなければ、おしりから倒れていれば……そんな事を考えていても無駄だが、俺は叫びながら、お嬢様へ手を伸ばした。

「あ……」

 無残にお嬢様を通り過ぎる手。俺の手は、お嬢様を抱き起すどころか、触れる事さえ出来ない。そんな自分にもどかしく思い、声をあげた。

「とっととお嬢様を運べ!運べよ!!」

 そんな声が聞こえるわけもなく。生身の人間である目の前に居る二人を恨めしく思った。

「大げさな……保健室へ運んでやれ」
「くっそめんどくせぇなぁ」

 お嬢様が倒れたとて、心配するより嫌そうな顔をし、そんな事まで口にするブルーノとルネ。アニスは何も言わず、ただブルーノの側で涙を流し、しがみ付いているだけだ。
 周囲はお嬢様が倒れた事により、息を呑んでいたが、二人の言葉にまた騒めきが戻る。
 中には天罰だと言いアニスの肩を持つ声もあるが、それは少数だ。ほとんどが何もしていない令嬢の手を掴み、暴言を吐いた二人へ対する侮蔑の言葉だ。

 ――こんな奴等が生きているなんて。

 そんな事さえも思える。
 羨ましく、恨めしく。
 助けを求める声もあって、助けられる手を持っているのに……他者を傷つける事しか出来ないのか。そして……この状態でも、誰もお嬢様の元へ来る事もなく、ただ陰口を叩くしか能がないのか。

「ふざけんな!!」

 誰に聞こえるわけでもないが、叫ぶ。叫びたくなった。
 怒りで自分自身がどうにかなってしまいそうだ。こいつら全員しょっぴいて、牢獄の中で苦しむだけじゃ済まさないとまで思う。ただ、それを自分が出来る状態でない事も理解している。

「誰か……誰か!」

 ――たすけてくれ。
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