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第一章
10.恵の決意
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結局、大切なものなんて必要ない。
作らなければ傷つかない。後悔や未練もない。
既に痛みの引いた頬に手を当てる。
……残してきたものと言えば、理沙だけ。
あれが理沙との最後かと……喧嘩別れしたまま、もう会えないのかと思えば、それだけが心残りなだけ。私には他に何もない。
――どうでも良い。
自分が傷つかないように、ただ今を受容して、流されるまま。
ただ、大事なものは作らない。それだけを心に決める。
◇
「では生活魔術の使い方を教えます」
午前中は国の成り立ちや聖女の事。午後からは生活魔術の勉強だ。
しばらくはみっちりと生活に基づいたものの勉強になるだろう。そして、護衛騎士のデイルは片時も離れず私の側に居る。……息が詰まる。
姿勢良くずっと立ち続けて側に居るという苦悶を平然とした顔でやってのけているのは、それなりの訓練もあるけれど精神力も強そうだ。そして任務に忠実そうだ。
あまり感情移入しない為にも、誰かが居るというのを意識しないようにはしているけれど、今まで自由気ままな生活をしていた私としては本当にしんどい。たった半日でメンタルがゴリゴリと削られている。
チラリと視線を他の三人へと移す。
琴子は少し怯えているようにも見えるが、真やキィは堂々としている。……元の世界に未練などないのだろうか? 恵は確実に帰りたがっている。
バタンッ!
講師が魔術の話を始めようとした矢先、扉が大きな音を立てて開いて中断した。
そこに居たのは恵で、特に何か言うわけでもなく、当然のように開いている席へと座った。
後ろからは疲れた顔をしたロランが溜息を吐きながら付いている。
「……何よ。魔術の使い方を教えるんじゃないの?」
恵が呆然としていた講師へ不機嫌に声をかけると、講師は慌てて正気を取り戻して教科書らしき書物のページをめくって授業を始める。
生活魔術とは生活に必要な魔法であり、呪文を唱えて神に祈り助けを求め、その力を貸してもらうのだとか。
「御託は良いから、魔術や神力の使い方を教えなさいよ!」
説明をしていた講師の声を遮り、恵は苛立った声をあげた。
「そんなのどうでも良いの。力の使い方を教えなさい! ったく。コイツが研究に役立つって言うから来てみれば御託ばっか……」
ぶつぶつと文句を言う恵に対し、ロランが苦笑いを返した。
……意外と苦労をしていそうな? というか、研究?
「私は絶対に帰るんだから」
小さな声でも、しっかりと心に響いた恵の決意。
あぁ、だから力の使い方を知りたいのかと納得した。
作らなければ傷つかない。後悔や未練もない。
既に痛みの引いた頬に手を当てる。
……残してきたものと言えば、理沙だけ。
あれが理沙との最後かと……喧嘩別れしたまま、もう会えないのかと思えば、それだけが心残りなだけ。私には他に何もない。
――どうでも良い。
自分が傷つかないように、ただ今を受容して、流されるまま。
ただ、大事なものは作らない。それだけを心に決める。
◇
「では生活魔術の使い方を教えます」
午前中は国の成り立ちや聖女の事。午後からは生活魔術の勉強だ。
しばらくはみっちりと生活に基づいたものの勉強になるだろう。そして、護衛騎士のデイルは片時も離れず私の側に居る。……息が詰まる。
姿勢良くずっと立ち続けて側に居るという苦悶を平然とした顔でやってのけているのは、それなりの訓練もあるけれど精神力も強そうだ。そして任務に忠実そうだ。
あまり感情移入しない為にも、誰かが居るというのを意識しないようにはしているけれど、今まで自由気ままな生活をしていた私としては本当にしんどい。たった半日でメンタルがゴリゴリと削られている。
チラリと視線を他の三人へと移す。
琴子は少し怯えているようにも見えるが、真やキィは堂々としている。……元の世界に未練などないのだろうか? 恵は確実に帰りたがっている。
バタンッ!
講師が魔術の話を始めようとした矢先、扉が大きな音を立てて開いて中断した。
そこに居たのは恵で、特に何か言うわけでもなく、当然のように開いている席へと座った。
後ろからは疲れた顔をしたロランが溜息を吐きながら付いている。
「……何よ。魔術の使い方を教えるんじゃないの?」
恵が呆然としていた講師へ不機嫌に声をかけると、講師は慌てて正気を取り戻して教科書らしき書物のページをめくって授業を始める。
生活魔術とは生活に必要な魔法であり、呪文を唱えて神に祈り助けを求め、その力を貸してもらうのだとか。
「御託は良いから、魔術や神力の使い方を教えなさいよ!」
説明をしていた講師の声を遮り、恵は苛立った声をあげた。
「そんなのどうでも良いの。力の使い方を教えなさい! ったく。コイツが研究に役立つって言うから来てみれば御託ばっか……」
ぶつぶつと文句を言う恵に対し、ロランが苦笑いを返した。
……意外と苦労をしていそうな? というか、研究?
「私は絶対に帰るんだから」
小さな声でも、しっかりと心に響いた恵の決意。
あぁ、だから力の使い方を知りたいのかと納得した。
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