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第一章
11.絶対なんて存在しない
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「やっと出来たぁ」
「お見事です」
メイドやデイルに補佐をしてもらいながら過ごした一週間。やっと私は自分の力で灯りを出す事が出来た。
この世界で生活魔術を使えないというのは物凄く面倒臭い。灯りを灯すだけでなく、水や火を出すのも生活魔術だ。文明の利器はどこに行ったんだ状態である。……まぁ、ないのだろうけれど。
「自分の中で何かを感じ取る必要があるわけかぁ……」
「ほとんど無意識で行っているので、あまり分かりませんが……」
生活魔術は呪文を紡ぐだけで発動はしない。力を何かに分け与えるというか、注ぐような感覚が必要だった。
それを掴み取るのに時間を有したわけだけれど……と、私は洗面器のようなものに水と火を出し、お湯を作り出す。
顔を洗うだけで人に頼まないといけない生活というのは、本当に気を遣うし、気が滅入る。でもこれで、やっとそんな生活からも、おさらばである。
「あつっ!」
安堵の息をついて顔を洗おうと、洗面器へ手を入れたら熱湯だった。
……どうやら温度調節までは上手くいかなかったようだ。ひとつ出来たからと言って、全て出来るわけではない。
「あまり無理をなさらなくても。俺やメイド達がいくらでもフォローしますのに」
デイルが氷を作り出し、お湯を適温に調節してくれ、有難く使わせてもらうけれど、私は早く独り立ちをしたいのだ。
「だって……どうせいつかは居なくなる」
デイルがポカンとした顔をして、私は今しがた心に思った言葉が口から放たれたのだと気が付いた。
「何をおっしゃるやら。私は瑞希様の護衛騎士ですよ? 居なくなるなどと」
「絶対なんてない」
心を許す必要もないなら、隠す必要もないと判断し、私はそのまま口を開いた。
まぁ、隠していたというか言わなかっただけではあるけれど。だってわざわざ言う必要なんてない。
「護衛で命を落とすかもしれない。明日には何があるか分からない。ずっと一緒なんて、ただの幻想でしかない」
そう、絶対なんてありえない。永遠なんてありえない。
ずっと一緒なんて言葉は、ただの夢幻だ。
「それ……は」
反論の糸口を掴めないデイルが、唇を強く噛みしめたのを見て、私は就寝の準備へと入れば、デイルはそれを察知して部屋から出て行った。
変わらない明日なんて存在しない。
また明日というのは、ただの気遣いか定型文でしかない。だって、それは分からない事でしょう?
明日も会えるなんて、当たり前に思っていてはいけないのだ。
だからこそ、今ある幸せを感謝して生きて来ていたのだけれど……。
「お見事です」
メイドやデイルに補佐をしてもらいながら過ごした一週間。やっと私は自分の力で灯りを出す事が出来た。
この世界で生活魔術を使えないというのは物凄く面倒臭い。灯りを灯すだけでなく、水や火を出すのも生活魔術だ。文明の利器はどこに行ったんだ状態である。……まぁ、ないのだろうけれど。
「自分の中で何かを感じ取る必要があるわけかぁ……」
「ほとんど無意識で行っているので、あまり分かりませんが……」
生活魔術は呪文を紡ぐだけで発動はしない。力を何かに分け与えるというか、注ぐような感覚が必要だった。
それを掴み取るのに時間を有したわけだけれど……と、私は洗面器のようなものに水と火を出し、お湯を作り出す。
顔を洗うだけで人に頼まないといけない生活というのは、本当に気を遣うし、気が滅入る。でもこれで、やっとそんな生活からも、おさらばである。
「あつっ!」
安堵の息をついて顔を洗おうと、洗面器へ手を入れたら熱湯だった。
……どうやら温度調節までは上手くいかなかったようだ。ひとつ出来たからと言って、全て出来るわけではない。
「あまり無理をなさらなくても。俺やメイド達がいくらでもフォローしますのに」
デイルが氷を作り出し、お湯を適温に調節してくれ、有難く使わせてもらうけれど、私は早く独り立ちをしたいのだ。
「だって……どうせいつかは居なくなる」
デイルがポカンとした顔をして、私は今しがた心に思った言葉が口から放たれたのだと気が付いた。
「何をおっしゃるやら。私は瑞希様の護衛騎士ですよ? 居なくなるなどと」
「絶対なんてない」
心を許す必要もないなら、隠す必要もないと判断し、私はそのまま口を開いた。
まぁ、隠していたというか言わなかっただけではあるけれど。だってわざわざ言う必要なんてない。
「護衛で命を落とすかもしれない。明日には何があるか分からない。ずっと一緒なんて、ただの幻想でしかない」
そう、絶対なんてありえない。永遠なんてありえない。
ずっと一緒なんて言葉は、ただの夢幻だ。
「それ……は」
反論の糸口を掴めないデイルが、唇を強く噛みしめたのを見て、私は就寝の準備へと入れば、デイルはそれを察知して部屋から出て行った。
変わらない明日なんて存在しない。
また明日というのは、ただの気遣いか定型文でしかない。だって、それは分からない事でしょう?
明日も会えるなんて、当たり前に思っていてはいけないのだ。
だからこそ、今ある幸せを感謝して生きて来ていたのだけれど……。
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