【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第一章

20.二人の言い争い

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 何の言葉だと思って発した私に、キィは噛みついてきた。
 ……ズルいとは?
 魔法陣で生活を楽にしている事だろうか。しかし、メイドや護衛騎士に頼めば大抵の事はしてもらえる。
 首を傾げていれば、キィは恵の方へ鋭い視線を向けた。

「興味がないってフリして、聖女の座を狙ってるんでしょ! それでコソコソとこんな勉強を……ずるい!」

 ここに居る誰もが聖女の座に興味はないと思いますけれど!?
 特に恵は帰る事にしか執着していないけれど!?
 キィは……聖女になりたいのだろうか。この異世界で。
 帰りたいとは思っていないのか。こんなに幼いのに。

「おい……やめろよ……」

 ウィルが呆れかえって止めようとするけれど、キィは更に激高する。

「私だけ仲間外れにして! ずるいじゃない! 子どもだからって馬鹿にしてるの!?」

 いや、真も居ないんだけど……。
 そして子どもだからと言って馬鹿にもしてないんだけれど……。
 キィが努力して頑張っている事くらい、見ていれば分かる。
 ウィルは、もうこれ以上止める気がないのか、溜息をついた。

「……これだから子どもは」
「何よ!?」

 琴子が嫌そうな顔をしてキィに向かった。
 呆れ……だけではない。心底嫌なものを見る目だ。

「ずるいって何が? 周りの行動を見て自分で行動を起こした結果でしょう? だいたい、こういうのだって恵が自分で見つけて勉強してるものなのに。あんたは言われた事だけやっていただけでしょ。何も見てない奴が言うものではないわ」
「でも……ズルい! 教えてくれても……」
「教えてもらえると思ってるのが甘いし、それをズルいという神経もわからない」

 子ども相手にきつい言葉。
 琴子は子どもが大嫌いなのだろうか。溜め込んだものを吐きだすよう、厳しい言葉と視線をキィへと向けており、キィに至ってはもう涙目だ。

「……まだ子どもだから、そんなの分からないわよ!」
「子ども扱いするなと言っておいて、都合が悪くなったら子どもになるの?」
「どうした!?」

 このタイミングで真がやってきた。
 声が響いていたのだろうか。真の後ろにメイドが真っ青になって佇んでいる。
 贈り人相手に喧嘩の仲介は出来ないと、わざわざ真を呼びに行ってくれたのだろうか。
 少し申し訳なさがあるものの、そもそも喧嘩しているのは私ではないので、他人事の気持ちしかないけれど。

「そ……んな……」

 とうとうキィの目から涙が零れ溢れる。

「子どもだからって泣けば良いと思ってんじゃないわよ!」

 心底軽蔑した目で、琴子はキィを怒鳴りつけた。
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