【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

文字の大きさ
24 / 134
第一章

24.辺境へ送られる

しおりを挟む
「贈り人メグミ! あなたには辺境へと行ってもらう!」

 枢機卿と贈り人達、そしてそれに連なる護衛騎士達が集められた場で、王太子殿下は声高々に宣言した。
 辺境……? 辺境って、そのままの意味だよね?
 というか、贈り人としての力は国にとって有益なものではないのかと、頭の中を疑問符が駆け巡る。

「お……王太子殿下! 発言をお許し下さい!! 贈り人相手にそれは……聖女候補でもありますし!」

 必死の形相で異議を唱えたのはロランだ。

「しかし、メグミは帰る事にしか興味がないと聞く。マナーの授業は受けず、ずっと力を磨くだけならば、辺境の地でのびのびとしてもらった方が良いのでは?」
「しかし、同郷の者達と切磋琢磨をしていればこそ……」
「元の世界へしがみ付いているのもメグミのみと聞く……それは、あまりにも危険ではないか?」
「それは……」

 王太子の言葉に必死で食いついていたロランだが、ぐうの音も出なくなった。
 良い言葉で飾っているようだが、そんなに帰りたいと願うのは駄目な事だろうか。いや、国にとって都合良く扱えないから……か?
 ロランの態度から、辺境へ行く事はあまり良くない事に思える。

「……別にそれでいいけど」
「メグミ様!?」

 手を口にあてて、しばらく何かを考えこんでいた恵は、小さく頷いて発した言葉にロランが驚きの表情を見せた。

「あなた辺境なんて、ただの田舎ですよ!?」
「私は聖女になりたいわけではないから。学べるならどこでも良いわ」

 必死に止めようとするロラン。それをものともしない恵。
 恵は帰る事という一択にしか重きを置いていないから、田舎や街とか、娯楽や食事なんて関係ないのだろう。どんな言葉にも靡かない。

「おぉっ! メグミ様は物分かりが良い。辺境でゆっくりしていただけば良いので」

 にこやかな王太子。苦痛な表情をしているものの、止める事のない枢機卿。
 ……枢機卿でも止められない事なのか。
 元の世界へ帰りたいという思いは、そんなにもいけない事なのだろうか。

「そんな……くそ! こんな筈じゃ!」

 ロランは納得いかないと、口調が荒く険しい表情となる。
 それを王太子は見逃さなかった。

「……何だ? 不満か? ロラン・コントラ―侯爵令息」

 ビクリとロランは身体を揺るがす。
 ロランは護衛騎士だ。国に仕えている身だからこそ、王太子に逆らえる筈などない。

「それは……」
「護衛騎士の役目を放棄するとでも……?」
「っ!」

 自分の仕事を放りだすのかと、そういう事なのだろう。
 ロランは悔しそうに唇を噛みしめた後、いいえと小さく呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

聖女のはじめてのおつかい~ちょっとくらいなら国が滅んだりしないよね?~

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女メリルは7つ。加護の権化である聖女は、ほんとうは国を離れてはいけない。 「メリル、あんたももう7つなんだから、お使いのひとつやふたつ、できるようにならなきゃね」 と、聖女の力をあまり信じていない母親により、ひとりでお使いに出されることになってしまった。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

処理中です...