【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第二章

14.信用できない

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「――っ!」

 琴子の言葉に私は息を飲み込んだ。
 そんな事ないなんて言えない。だって私達は人知を上回る神力を持ったとされる贈り人で、国の為に力を使う事で生活が保障されているのだ。
 この世界を知らないからこそ、絶対ないなんて言えない。
 その条件を達成できなければ、どうなるのか。正直、この国から逃げられるのであれば逃げてしまえば良いとも思えるけど、琴子は向こうの世界で逃げる事をしなかった。……出来なかったのかもしれないけれど。

「そういう恐怖が常にあるの……」
「そんな事はありません!」

 琴子の言葉に、アンドリューが声を張り上げた。

「贈り人で役に立たないなんて事はありません! その為に私達護衛騎士まで付けて、お守りするだけでなく生活の補助や生活魔術の使い方などを学んで、この世界で生きていく為の力をつけてもらうのですから!」

 正直、全く心に響かない。
 護衛騎士だと言っても、恵を見張ってすらいなかっただろうロラン。近くに居る事すらなくて、何が護衛騎士なのかとも思う。
 ……それに、恵の事がそうだ。
 危険因子だとか言って、辺境へと行かされた恵。あれは問答無用で切り捨てたようなものではないのか。
 例え人知を超えた力が、この身体に宿っていたとしても、国の判断により自分の身がどうなるのか分からない。

「聖女様にまで上り詰めれば、より立場や生活も安泰になります。不安に思われるより、鍛錬をして払拭すれば……」
「貴方が恵を売ったようなものじゃない!」

 悲鳴のような叫び声をあげる琴子に驚いたアンドリューは呆然とし、言葉を失った。
 売った……というのは適切でない気がする。アンドリューの立場からしたら、報告をあげるのも仕事だろう。
 そう、仕事なのだ。結局、仕事上での付き合いしかなく、そこに信頼があるのかと言えば……否だろう。

「仕事をしなければ切り捨てられる。望むように動かなければ終わり。……あっちもこっちでも、使い捨てられる奴隷のよう!」
「そんな……」

 望む成果が出なければ問答無用で殴られたのだろうか。
 琴子にとっては、トラウマを抉るような形で、恵の事があったという事か。
 耐えて……希望通りに動いたとしても、先にあるのは命の危機……なのかもしれないというのが不安なのだろう。

「……どう動けば希望に叶うのか分からない……いつ捨てられるかも分からない。私はアンドリューの事を信用していない」

 琴子の言葉に、アンドリューはショックを受けた顔をする。
 でも、確かにそうだろう。私達にとって……護衛騎士たる人達は信用するにあたるのだろうか。デイルともそれなりに打ち解けてきたとは思うけれど……。
 私は肯定の言葉は勿論、否定の言葉を出す事も出来なかった。
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