【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第二章

21.琴子への治療

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「治療室へ……」
「そんな時間はありません!」

 アンドリューを声を遮って枢機卿は怒鳴るような声を上げると同時に、神力を琴子へと流し始めた。
 上手く神力を使っているのが、目に見えて分かる。主に出血の所へと輝く光が集中されているからだ。それだけ枢機卿が神力を上手く扱えるという証拠だろう。
 それを見て、キィもすぐに枢機卿の隣へ膝を付くと、琴子に神力を流して治療を始めた。先ほどより光が強く輝く。

「今は出血を抑える事に集中しましょう! 切り傷へと意識を集中させて、そちらに神力を流し込むように」
「……こう?」
「そうです! もっとお願いします!」

 実践でのアドバイスをキィに施しながら、二人は額に汗を流して治癒に励むのを見て、私も二人とは琴子を挟んで反対側へと膝をつく。
 ……神力を流すと言っても……スキャンとかみたいに全体を見る事は出来ないのだろうか。
 試しにとばかりに、私は神力で琴子より少し大きいくらいの四角い膜のようなものを作って、上から下へと移動させてみた。

「瑞希様……!? それは!?」
「!」

 驚く枢機卿の問いに答える余裕はない。けれど真は私が何をしているのか理解出来たのだろう。生活魔術で水を出して、琴子の傷口を洗い、邪魔な衣服を切り裂いた。

「真様! 一体何を!」
「怪我の具合を見るんだ! 周囲を被って周りに見えない配慮を!」
「! 陣営地のように大きな布を持ってきて囲め!」

 アンドリューが焦って真を止めようとするけれど、真の言葉を理解したのか、すぐに周囲へと指示を飛ばした。
 確かに色んな人に素肌を見られるのは嫌だろう。いくら処置の為とはいえ。それは日本でも配慮という形で言われていた。……あれは治療をされている人を背にして、人垣を作るようなものだけれど。
 いくら助かったとはいえ、色んな人が自分の裸を見たと知ったら、外に出る事が怖くなるだろう。私なら、なりそうだ。

「……内臓の損傷がひどい!」
「わかった!」

 スキャンの手ごたえを感じた私が叫ぶように言えば、すぐに理解した真も私の隣へと膝をついて琴子へと手を伸ばせば、そこから輝く光が現れた。
 ……そういえば真との訓練はほとんど別だから、あまり見た事はなかったのだけれど……神力の輝きは殊更美しく、更にそれを巧に扱う技術に対して一瞬見惚れてしまった。
 キィも同じなのだろう。あんぐりと口を開けて目を見開いたけれど、すぐに琴子の治療へと戻ったのを見て、私もすぐに治療へと入ったのだけれど……。

「……これは……」

 治療の成果を目に見えるよう、血を洗い流して邪魔になる衣服を取り除いた先に見えたのは、致命傷と思える傷以外にもあった多数の傷跡だった。
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