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第三章
09.私を愛して
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「必要として……お願い、私を必要としてよ」
誰かに縋るように、キィは虚ろなままで自分の中にある感情を吐き出している。
「……小学生……なんだよね?」
「多感な時期とは言っても……」
犯罪の低年齢化とか、今の子はませてるとか。
そんな言葉を当事者以外の誰かから聞かされる……否、知っている人がそうなっていないからこそだろう。キィが今まで生きて来た状態を想像する事すら出来ない。
というか、一体何があったんだろうと思うしかないけれど……聞いていて、正直胸が痛い。
こちらも涙が溢れそうだ。
誰かに対して言葉を届けるかのように、必死に紡いでいたキィは、最後の言葉を紡いだ後、気を失ってウィルの胸の中にパタリと崩れ落ちた。
――私を愛して。
誰に……そんな縋るように……。
まだ小学生なのに……。
身を焦がすような相手と出会ったのかと思うけれど……そうではないだろう。
――私は要らない子なんかじゃない。
この言葉を放つ相手として考えられるのなんて……親くらいだ。
そこまで思考が進んで、背筋に悪寒が走るかのようにゾッとした。
虐待、ネグレクト。
親が子を殺すような事件が頻繁に起こる。
親が子どもに無条件な愛を注ぐのは絶対と言い切れないのだ。
「……一体、キィに何があったんだ……」
悔しさを滲ませるようにウィるが言葉を放って、キィを強く抱きしめた。
私達には何も答える事が出来ない。
向こうのでキィを知らないし、今考えた事だって、ただの仮説でしかなく、キィの口から聞いたわけではないのだから。
「キィ様は大丈夫ですか!?」
キィが倒れた事を聞きつけたのだろう枢機卿が、走ってこちらに向かってきた。
「早くお部屋へと運びましょう」
気を失ったキィを見て枢機卿は判断を下すと、ウィルはキィを抱き上げて部屋へと向かい、その後を私達も着いて行く。
さすがに、ここで別れるのは気分が悪い。
ちゃんとベッドで休んでいる姿を見てからにしたいのだ。
「一体、何があったのですか……?」
「……実は……」
枢機卿の問いに、私は事実のみを答えていく。
そこに私の変な予測なんて交えずに。
……そういえば、この世界では親子の関係というのは、どういったものなのだろうか。
日本でも昔に起こっていたような、食い減らしみたいな風習でもあったりするのだろうか。
無償の愛というのは、必ずしもあるわけではないのだろうか。
時代背景が違えば、変わるのだろうか……。
「私なら……自分の子どもに愛情を注ぎまくるのに……」
私にだけ聞こえるような声で琴子は悲痛な声で呟いた。
誰かに縋るように、キィは虚ろなままで自分の中にある感情を吐き出している。
「……小学生……なんだよね?」
「多感な時期とは言っても……」
犯罪の低年齢化とか、今の子はませてるとか。
そんな言葉を当事者以外の誰かから聞かされる……否、知っている人がそうなっていないからこそだろう。キィが今まで生きて来た状態を想像する事すら出来ない。
というか、一体何があったんだろうと思うしかないけれど……聞いていて、正直胸が痛い。
こちらも涙が溢れそうだ。
誰かに対して言葉を届けるかのように、必死に紡いでいたキィは、最後の言葉を紡いだ後、気を失ってウィルの胸の中にパタリと崩れ落ちた。
――私を愛して。
誰に……そんな縋るように……。
まだ小学生なのに……。
身を焦がすような相手と出会ったのかと思うけれど……そうではないだろう。
――私は要らない子なんかじゃない。
この言葉を放つ相手として考えられるのなんて……親くらいだ。
そこまで思考が進んで、背筋に悪寒が走るかのようにゾッとした。
虐待、ネグレクト。
親が子を殺すような事件が頻繁に起こる。
親が子どもに無条件な愛を注ぐのは絶対と言い切れないのだ。
「……一体、キィに何があったんだ……」
悔しさを滲ませるようにウィるが言葉を放って、キィを強く抱きしめた。
私達には何も答える事が出来ない。
向こうのでキィを知らないし、今考えた事だって、ただの仮説でしかなく、キィの口から聞いたわけではないのだから。
「キィ様は大丈夫ですか!?」
キィが倒れた事を聞きつけたのだろう枢機卿が、走ってこちらに向かってきた。
「早くお部屋へと運びましょう」
気を失ったキィを見て枢機卿は判断を下すと、ウィルはキィを抱き上げて部屋へと向かい、その後を私達も着いて行く。
さすがに、ここで別れるのは気分が悪い。
ちゃんとベッドで休んでいる姿を見てからにしたいのだ。
「一体、何があったのですか……?」
「……実は……」
枢機卿の問いに、私は事実のみを答えていく。
そこに私の変な予測なんて交えずに。
……そういえば、この世界では親子の関係というのは、どういったものなのだろうか。
日本でも昔に起こっていたような、食い減らしみたいな風習でもあったりするのだろうか。
無償の愛というのは、必ずしもあるわけではないのだろうか。
時代背景が違えば、変わるのだろうか……。
「私なら……自分の子どもに愛情を注ぎまくるのに……」
私にだけ聞こえるような声で琴子は悲痛な声で呟いた。
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