【完結】異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり

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第四章

10.そして真はどこかへ飛び去る

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 その後を私達も追いかけるが、真と枢機卿は振り返る事なく神殿の中を進んでいく。その足取りは迷う事なく、玄関口まで。
 バタンと大きな音を立てて、二人は玄関の扉を開け放つと外へ出て行く。
 私達も急いで玄関から外へと出る。
 そこには、立派な騎士服を着た人が1人、姿勢正しく立っていた。

「無駄な抵抗は止めて、大人しく追放される事を勧めます」

 何を言っているんだ。
 真に抵抗されたら、ここに居る人達はただではすまないというのに。
 周囲へと視線を向ければ、怯え視線を背けている兵士達が多々居た。
 ……この中には、隣国の戦争で命を助けてもらった人も沢山居るだろう。だけれど、国に背けないというのは、こういう事なのだろうか。
 俯き、真の姿を視界にとらえている兵士は少ない。

「そうですね。大人しくします」

 真がそう言えば、立派な騎士服を着た人は安堵したように小さく息を吐いた。

「枢機卿も、あまり事を荒立てないように」
「わかりました……マコト様」
「!」

 枢機卿があまりにもあっさりと肯定するような言葉を言った事で、キィが前に飛び出そうとしたのを止めた。
 ここで私達が暴れたとしても役に立たないどころか、大変な事になる。真だけでなく神殿まで危険に晒すような気がしたからだ。
 それを分かっているのか、キィはそれ以上暴れる事もなく、琴子も大人しく事の成り行きを見守っている。……見守るしか出来ない。何とも歯がゆい事だけれど。

「こちらへ。国境まで連れて行きますので、決して戻ってこようなどと思わぬように」

 真が前へと出て騎士の前へと行けば、騎士はそう言って真へと手を差し伸べた瞬間、真の姿が消えた。

「!?」

 その場に居た誰もが驚愕に目を見開くが、人型の影がある事で、私達は上空を見上げた。

 ――そこに居たのは真だ。

 いつの間に、空に舞える程の力を使えていたのだろうか。
 否、今更か。もはや真の持つ力は私達の理解を超えているとしか思えない。……同じ贈り人でも、だ。

「マコト殿!?」
「殺されそうだから自分で出て行く方がマシー」

 焦る騎士とは裏腹に、のんびりとした真。
 いきなり姿をくらませるのではなく、神殿への過失はないと言わんばかりの宣言をした後、ゆっくりと舞った後、どこかへ飛び去ってしまった。

「真!?」
「マコト殿!?」
「マコト様!?」

 私達や騎士はともかく、枢機卿も驚いているという事は予定外の行動なのだろうか。もはや真の考えが分からない。
 ただ、騎士達に身を委ねるのが危険だという事は、激しく理解が出来る。

「追いかけろ!」

 そう言って騎士や兵達は神殿に目をくれる事なく、真を追いかけて行った。
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