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08.家出をします
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広い邸に1人や2人起きていたところで、小さい音になんて気が付くわけもない。警備の人が居るけれど、一体ここで何年暮らしていると思っているのだ。……と言っても、抜け出すなんて事はしたことないけれど。
置手紙を机の上に置き、簡素なワンピースに着替えて、少しの手荷物だけを持って、部屋を抜け出す。それはまるで家出するような高揚感があるのだけど、きっとそう生半可なものではないだろう。申し訳程度に宝石類も持たせてもらった。いきなり仕事が見つかるとは思えないから、少しの間、生活する費用とする為だ。その事についての断りや、私を貴族籍から抜いて欲しい事も書いてある。
髪の毛を服や帽子で隠し、裏門へ向かう。そこにも警備の人が居るだろうけれど、いきなり親が倒れたから帰る侍女辺りを演じれば良いかと思う。とりあえず見つかって困るのは執事長や私の侍女達で……。
「シア様?」
いきなり背後からかけられた声に、ビクリと身体が揺れる。そのまま返事をする事も出来ず、振り返る事も出来ない。だってこの声はフィンのものだ。私と常に一緒に居たのだから、どう足掻いたところで既に私だと断言しているのに逃げられる筈もない。
邸から出る事も叶わない、初の家出計画。そりゃそうか、前世でも家出なんてしたことないしな、なんて溜息を洩らしフィンの方へ向こうとしたら、それを遮るかのようにフィンが声をあげた。
「少々お待ちください。お供いたします」
そう言って踵を返そうとしたフィンは、あ、と小さく声を上げた後、失礼しますと言って私の手を繋いだ。
「置いていかれては困るので……俺はずっと貴女の傍に居たい」
可愛い!と、つい叫びそうになってしまう。胸キュンするような台詞なんだけど十歳男児。いや、私はショタコンではないのだけれど、それでもこの可愛さには萌えてしまう。
「嬉しい。……でも良いの?今の生活を捨てても」
「俺は貴女に仕えたくて、ミゼラ公爵家に来たんですよ。仕えているのはミゼラ公爵ではなく、シア様です」
私を真っすぐ見つめる、フィンの瞳に嘘はない。フィンが居れば、それだけで心強い。今までずっと一緒に居たのだ。いきなり一人で戸惑って生活する事を考えれば、何て幸せな事だろう。
「ありがとう!」
笑顔でそう言えば、フィンは驚いたかのような顔をした後、そっぽ向いてしまった。少しだけ耳が赤いのを見て、まだまだ純情だな、なんて思ってしまう。
フィンは部屋へ戻ると素早く着替えをした後に、小さな手荷物1つだけを持って、すぐに出てきた。
「あれ?早かったわね?」
「シア様が平民になると願い出た後から、すぐ用意していました」
荷造りとかしなくて大丈夫なのだろうかと心配して声をかけたのだが、まさかの返事に私が驚きを隠せなかった。……え?私の行動、そんな先読み出来るものなの?
置手紙を机の上に置き、簡素なワンピースに着替えて、少しの手荷物だけを持って、部屋を抜け出す。それはまるで家出するような高揚感があるのだけど、きっとそう生半可なものではないだろう。申し訳程度に宝石類も持たせてもらった。いきなり仕事が見つかるとは思えないから、少しの間、生活する費用とする為だ。その事についての断りや、私を貴族籍から抜いて欲しい事も書いてある。
髪の毛を服や帽子で隠し、裏門へ向かう。そこにも警備の人が居るだろうけれど、いきなり親が倒れたから帰る侍女辺りを演じれば良いかと思う。とりあえず見つかって困るのは執事長や私の侍女達で……。
「シア様?」
いきなり背後からかけられた声に、ビクリと身体が揺れる。そのまま返事をする事も出来ず、振り返る事も出来ない。だってこの声はフィンのものだ。私と常に一緒に居たのだから、どう足掻いたところで既に私だと断言しているのに逃げられる筈もない。
邸から出る事も叶わない、初の家出計画。そりゃそうか、前世でも家出なんてしたことないしな、なんて溜息を洩らしフィンの方へ向こうとしたら、それを遮るかのようにフィンが声をあげた。
「少々お待ちください。お供いたします」
そう言って踵を返そうとしたフィンは、あ、と小さく声を上げた後、失礼しますと言って私の手を繋いだ。
「置いていかれては困るので……俺はずっと貴女の傍に居たい」
可愛い!と、つい叫びそうになってしまう。胸キュンするような台詞なんだけど十歳男児。いや、私はショタコンではないのだけれど、それでもこの可愛さには萌えてしまう。
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「ありがとう!」
笑顔でそう言えば、フィンは驚いたかのような顔をした後、そっぽ向いてしまった。少しだけ耳が赤いのを見て、まだまだ純情だな、なんて思ってしまう。
フィンは部屋へ戻ると素早く着替えをした後に、小さな手荷物1つだけを持って、すぐに出てきた。
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