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22.お弁当は天ぷらで
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必要な素材を、その場で素早く調達できる為、皆で森に移動した。まぁ、村の中ではいくら家の中に居るとは言っても、変な緊張感でそれどころじゃないというのもある。田舎ならではというか、訪ねてきた人がいきなり扉を開けるという事もあるからだ。
「適当な肉と山菜を取ってきてくれる?」
森の中で私がそう言えば、子ども達が山菜を、エアロが肉を取ってきてくれるという。
「じゃあ俺はシアの手伝いをするね」
フィンはそう言って、森の中で適当な広さがある場所に簡易キッチンのようなものを素早く作ってくれた。
そう言えば、フィンの前で料理なんて初めてじゃなかったっけ。なんて思いながら少し恥ずかしくなる。いつもフィンが作ってくれる料理は美味しくて、プロに手伝ってもらう素人な気持ちだ。
「なら……野菜を切ってサラダにして……あと、卵と……」
今日作る予定なのは、天ぷら。何でも揚げれば良いという簡単料理だ。付け合わせにするサラダ用の野菜やちょっとした材料や調味料は村からしっかり持ってきている。味付けはシンプルに塩で良いか。
子ども達やエアロが食材を持って帰ってくると、洗って切って揚げて……を繰り返していく。手順をフィンに伝えると、驚きながらも素早く調理してくれる。1回言葉で伝えて作れるようになるなんて、流石としか言えない。
「ねぇ……シア……この料理法って……」
「え?何?」
「おいしそー!」
フィンが何か言っているようだが、油の揚げる音でよく聞こえない。聞き返したところで、タイミング良く子ども達の声が重なった。フィンは首を振ると、また料理に戻っていく。
何だったんだろう……何か変な事でもしたのだろうか。そんな思いを持ちつつも、私はエアロが狩ってきた鳥のようなものと卵、そして子ども達が持ってきたニンニクやショウガのようなものから、から揚げなるものまで作っているところだ。油使うなら、いっそ揚げるもの全部作ってしまえ。
そしてピクニックと言えばサンドイッチ。なんて、個人的見解があった為、パンに野菜やから揚げを挟んだりして作ってみた。出来上がったものをお弁当のように箱へ詰め込むと、ピクニックなるものを伝授する。それを聞くと子ども達は景色が良い場所がとか、花がある場所がとか、色んな意見を出し合いながら帰って行った。
あぁいう子ども達の笑顔は良いなぁ。
「……シア。ちょっと良い?」
「え?何?」
そんな事を思っていると、フィンが真剣な表情をして話しかけてきた。
「あんな料理、この世界にはないんだけど……シア、どこで知ったの?」
「……え?」
「物価や狩りの難しさ云々によって……手に入りにくい材料もあるんだよ?」
「あ」
やってしまったかもしれない。
フィンが簡単に調達してしまうという点や、今まで箱入りお嬢様だった私としては、こっちの世界では物価等が全く分からない。ちなみに通貨の価値も理解していない。
私は視線を彷徨わせながら、どうしようかと考えていたが、シア?というフィンの威圧的な声に逆らうという選択肢はないのでわ?と思った。
「適当な肉と山菜を取ってきてくれる?」
森の中で私がそう言えば、子ども達が山菜を、エアロが肉を取ってきてくれるという。
「じゃあ俺はシアの手伝いをするね」
フィンはそう言って、森の中で適当な広さがある場所に簡易キッチンのようなものを素早く作ってくれた。
そう言えば、フィンの前で料理なんて初めてじゃなかったっけ。なんて思いながら少し恥ずかしくなる。いつもフィンが作ってくれる料理は美味しくて、プロに手伝ってもらう素人な気持ちだ。
「なら……野菜を切ってサラダにして……あと、卵と……」
今日作る予定なのは、天ぷら。何でも揚げれば良いという簡単料理だ。付け合わせにするサラダ用の野菜やちょっとした材料や調味料は村からしっかり持ってきている。味付けはシンプルに塩で良いか。
子ども達やエアロが食材を持って帰ってくると、洗って切って揚げて……を繰り返していく。手順をフィンに伝えると、驚きながらも素早く調理してくれる。1回言葉で伝えて作れるようになるなんて、流石としか言えない。
「ねぇ……シア……この料理法って……」
「え?何?」
「おいしそー!」
フィンが何か言っているようだが、油の揚げる音でよく聞こえない。聞き返したところで、タイミング良く子ども達の声が重なった。フィンは首を振ると、また料理に戻っていく。
何だったんだろう……何か変な事でもしたのだろうか。そんな思いを持ちつつも、私はエアロが狩ってきた鳥のようなものと卵、そして子ども達が持ってきたニンニクやショウガのようなものから、から揚げなるものまで作っているところだ。油使うなら、いっそ揚げるもの全部作ってしまえ。
そしてピクニックと言えばサンドイッチ。なんて、個人的見解があった為、パンに野菜やから揚げを挟んだりして作ってみた。出来上がったものをお弁当のように箱へ詰め込むと、ピクニックなるものを伝授する。それを聞くと子ども達は景色が良い場所がとか、花がある場所がとか、色んな意見を出し合いながら帰って行った。
あぁいう子ども達の笑顔は良いなぁ。
「……シア。ちょっと良い?」
「え?何?」
そんな事を思っていると、フィンが真剣な表情をして話しかけてきた。
「あんな料理、この世界にはないんだけど……シア、どこで知ったの?」
「……え?」
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「あ」
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