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31.またしても怪我人
また来る。その言葉は、しばらく日数を開けてから来るものだと思っていたのだけれど、あの日から毎日のように親子は昼食を食べに来ている。
「まともに飯が食える場所として認定されてるからなぁ」
エアロが苦笑と共に吐き出した言葉は、隠れ里の食糧事情が良くない事を示している。けれど、皆、何もしないという事ではない。午前中に来ては畑仕事を学び、料理を学んでから、食べて帰るのだ。こちらはある意味で場所と知識を貸し与えるだけとなっている。
そんな平和な日々に慣れてきた頃、エアロが叫びながら飛び込んできた。
「助けてくれ!」
「!?」
エアロの方へ目を向けると、肩に担がれた人は大量の出血をしているのが分かる。
「こちらへ」
素早くフィンがベッドのある部屋へ案内し、ロアにたらいとお湯、そして綺麗な布、ギムには薬草の用意を頼んでいた。……十歳様々だ……。おかしい、前世ペットの方が飼い主より優秀……。いや、それは前から分かってたけど……。
「えっ!?里の者じゃない!?」
「狩りにでも失敗したの!?」
子どもの母親達もこちらに集まっては、顔を青くさせている。どうしたら良いのかと右往左往している中、ロアとギムがフィンに言われた物を持ってきた。
「これ、どうするの?」
「どうするんですか!?」
ロアがお手伝いするつもりで聞いたのだろう言葉に、他の人達も身を乗り出して聞いてくる。
「獣人は自然治癒に任せっきりだからな……」
確かに、動物であれば治るまでジッとしているものだろう。……人間も動物だけど。
「元々持ってる治癒を向上させるようなものだよ」
そう言いながらフィンが怪我をした人の服を切り裂いて、怪我の状態を確認していく。その間に私は薬草を準備していると、皆が真剣にその様子を伺っている。親達がギムに、その草はどこから?どうやって見分けたの?なんて聞いている辺り、この知識も持って帰るつもりだろう。知識はいくらあっても無駄にはならない。
消毒や細菌という概念があるのか分からないけれど、出来うる限り解説を加えながら手を動かしていく。
「炎症起こしてるのかな。熱がある」
「冷やすもの……」
「氷作るよ。あ、シア。感染の危険もあるから直接触らないで、助手よろしくね」
フィンがテキパキと治療をしていく中、私は道具を渡したりという程度しかさせてもらえない。どうしよう。既に貴族令嬢ではないのに、年下の子ども従者が甘やかせてくるのですが。人としてどうよ!?なんて事を思いながらも反論せず従う。
最後は少しだけ私の回復魔法をかけると、皆は心配そうにしながらも里へ帰って行った。
誰も残らないあたり、それだけ信頼されているのかという嬉しさが込み上げるが……。
「看病しておくから、シアはゆっくり休んでね?」
有無を言わさない威圧をフィンから放たれた私は、大人しく休む事にした。
……というか、疲れ切った私と、まだまだ動けそうなフィンから、体力的にも絶対適わない気がする。
「まともに飯が食える場所として認定されてるからなぁ」
エアロが苦笑と共に吐き出した言葉は、隠れ里の食糧事情が良くない事を示している。けれど、皆、何もしないという事ではない。午前中に来ては畑仕事を学び、料理を学んでから、食べて帰るのだ。こちらはある意味で場所と知識を貸し与えるだけとなっている。
そんな平和な日々に慣れてきた頃、エアロが叫びながら飛び込んできた。
「助けてくれ!」
「!?」
エアロの方へ目を向けると、肩に担がれた人は大量の出血をしているのが分かる。
「こちらへ」
素早くフィンがベッドのある部屋へ案内し、ロアにたらいとお湯、そして綺麗な布、ギムには薬草の用意を頼んでいた。……十歳様々だ……。おかしい、前世ペットの方が飼い主より優秀……。いや、それは前から分かってたけど……。
「えっ!?里の者じゃない!?」
「狩りにでも失敗したの!?」
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「これ、どうするの?」
「どうするんですか!?」
ロアがお手伝いするつもりで聞いたのだろう言葉に、他の人達も身を乗り出して聞いてくる。
「獣人は自然治癒に任せっきりだからな……」
確かに、動物であれば治るまでジッとしているものだろう。……人間も動物だけど。
「元々持ってる治癒を向上させるようなものだよ」
そう言いながらフィンが怪我をした人の服を切り裂いて、怪我の状態を確認していく。その間に私は薬草を準備していると、皆が真剣にその様子を伺っている。親達がギムに、その草はどこから?どうやって見分けたの?なんて聞いている辺り、この知識も持って帰るつもりだろう。知識はいくらあっても無駄にはならない。
消毒や細菌という概念があるのか分からないけれど、出来うる限り解説を加えながら手を動かしていく。
「炎症起こしてるのかな。熱がある」
「冷やすもの……」
「氷作るよ。あ、シア。感染の危険もあるから直接触らないで、助手よろしくね」
フィンがテキパキと治療をしていく中、私は道具を渡したりという程度しかさせてもらえない。どうしよう。既に貴族令嬢ではないのに、年下の子ども従者が甘やかせてくるのですが。人としてどうよ!?なんて事を思いながらも反論せず従う。
最後は少しだけ私の回復魔法をかけると、皆は心配そうにしながらも里へ帰って行った。
誰も残らないあたり、それだけ信頼されているのかという嬉しさが込み上げるが……。
「看病しておくから、シアはゆっくり休んでね?」
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