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70.魔物という存在
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しかし、一体こんなところで何をすると言うのだろう。そんな疑問がリディアの脳裏をよぎったけれど、ディアスの正気を失った目を見ていたら、絶対に何かをするだろうと思えた。
「聖獣なんて居ない……獣人は人間より下なんだ……魔獣は討伐されるべき存在だ!」
ディアスは叫んだかと思ったら、何やら聞いた事のない言葉を紡ぐ。背後に迫っていた騎士達から、禁術!?と叫ぶ声が聞こえた。
勉強嫌いと言っても、禁術は使えるのかと思えてしまう。押し込み方式の勉強術……リディアは元居た世界を思い出してそんな事を思ってしまう。リディアも勉強なんて大嫌いだったけれど、自分の好きな事だけはのめりこむ事ができた。それが仕事になるのか……と言われれば、そうでもなかったけれど。この世界よりは多種多様な生き方があったように思える。まぁ、この世界ほど勝ち負けがハッキリしてるわけでもないけど。
所詮、ヒロインであるリディアは勝ち組であって、それ以外ないのだ。むしろ勝ち組でなければいけないと強く思う。
「うわぁあ!」
「逃げろ!」
「団長を呼べ!」
「陛下に報告だ!」
頭上に黒く大きな渦状の雲が集まり始める。それはどんどん広がり、周囲に太陽の光が届かなくなって薄暗い空間に呑まれたかのようだ。周囲に居た人達は、恐怖によって腰を抜かす人も居れば、上司の判断を仰ごうと走り去っていく者もいる。ほとんどが侍女や使用人達な為、ただただ震えて頭上を眺めているだけだ。
そんな中リディアも、ただ好奇心とこれから何が現れるだろうという楽しみから、目を輝かせてその雲を見入っている。
「来い!」
王都全体を飲み込むかのような渦を巻く黒い雲に向かい、そうディアスが叫ぶと、そこには大きな鳥のような影が見えた。その影を見た侍女や使用人達は、蜘蛛の子を散らすように悲鳴を上げながら逃げ去った。まだ残っているのは、騎士や兵士など腕に自信のある者だけだ。
「あ……あれは……」
雲が晴れていき、その姿がうっすら目視出来るようになってくると、誰かがその名前を口にした。
「ワイバーン!?」
「伝説上の生き物じゃなかったのか!?」
「魔物だ!」
魔獣は、魔物と獣を掛け合わせたものだと言われている。けれど魔物なんて書物の中に描かれているだけの存在だったから、聖獣と同じく伝説上の生き物とされていたのだが――。
「な……なんで……」
禁術を使って呼び出した当の本人であるディアスまでも腰を抜かして頭上に居る生物を眺めている。リディアも……まさか伝説上の生き物が登場すると思わず、呆けたままその姿を見ている事しかできなかった。
――伝説ではなく、実在する。
そう、目の前で実現させてしまったのだから。
「聖獣なんて居ない……獣人は人間より下なんだ……魔獣は討伐されるべき存在だ!」
ディアスは叫んだかと思ったら、何やら聞いた事のない言葉を紡ぐ。背後に迫っていた騎士達から、禁術!?と叫ぶ声が聞こえた。
勉強嫌いと言っても、禁術は使えるのかと思えてしまう。押し込み方式の勉強術……リディアは元居た世界を思い出してそんな事を思ってしまう。リディアも勉強なんて大嫌いだったけれど、自分の好きな事だけはのめりこむ事ができた。それが仕事になるのか……と言われれば、そうでもなかったけれど。この世界よりは多種多様な生き方があったように思える。まぁ、この世界ほど勝ち負けがハッキリしてるわけでもないけど。
所詮、ヒロインであるリディアは勝ち組であって、それ以外ないのだ。むしろ勝ち組でなければいけないと強く思う。
「うわぁあ!」
「逃げろ!」
「団長を呼べ!」
「陛下に報告だ!」
頭上に黒く大きな渦状の雲が集まり始める。それはどんどん広がり、周囲に太陽の光が届かなくなって薄暗い空間に呑まれたかのようだ。周囲に居た人達は、恐怖によって腰を抜かす人も居れば、上司の判断を仰ごうと走り去っていく者もいる。ほとんどが侍女や使用人達な為、ただただ震えて頭上を眺めているだけだ。
そんな中リディアも、ただ好奇心とこれから何が現れるだろうという楽しみから、目を輝かせてその雲を見入っている。
「来い!」
王都全体を飲み込むかのような渦を巻く黒い雲に向かい、そうディアスが叫ぶと、そこには大きな鳥のような影が見えた。その影を見た侍女や使用人達は、蜘蛛の子を散らすように悲鳴を上げながら逃げ去った。まだ残っているのは、騎士や兵士など腕に自信のある者だけだ。
「あ……あれは……」
雲が晴れていき、その姿がうっすら目視出来るようになってくると、誰かがその名前を口にした。
「ワイバーン!?」
「伝説上の生き物じゃなかったのか!?」
「魔物だ!」
魔獣は、魔物と獣を掛け合わせたものだと言われている。けれど魔物なんて書物の中に描かれているだけの存在だったから、聖獣と同じく伝説上の生き物とされていたのだが――。
「な……なんで……」
禁術を使って呼び出した当の本人であるディアスまでも腰を抜かして頭上に居る生物を眺めている。リディアも……まさか伝説上の生き物が登場すると思わず、呆けたままその姿を見ている事しかできなかった。
――伝説ではなく、実在する。
そう、目の前で実現させてしまったのだから。
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