【完結】婚約破棄ですか?妹は精霊の愛し子らしいですが、私は女神ですよ?

かずきりり

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 それなりに平和に暮らしていた……筈だった。
 数年前までは。

「やめて!それは返して!」
「やだ~お義姉様、こわ~い!良いじゃないの、これくらい~」

 大切に仕舞っていた葉と蝶のモチーフとなった台座に輝いているルビーのブローチ。
 それを何故か義妹のシャラが自分の身につけている。
 思わず取り返そうと手が出そうになったけれど、何かあって繊細な台座が壊れるのは困るから、何とか言葉だけで懇願する。

「それは、お母様の形見で……っ!」
「何?まだあんな女の物を大事に取っておいたの?それは私に対する嫌味かしら?」
「お義母様……」

 言い争う声でも聞こえたのだろうか、現れた義母は厳しい表情をしている。
 嫌味……そんな事ない。けれど後妻的には前妻の物が残っているのは嫌だろうと、ずっと隠すように仕舞っておいたのだけれど……。
 それでも、やはり実母の形見というのは、大事に取っておきたいのだ。

「お母様!これ私の方が似合うわよね~?もう私のものよね」
「シャラ!」

 得意気に言い放つ義妹の名を呼んで牽制するも、義母はその顔を歪めて嫌そうに言葉を放った。

「むしろ捨てなさい。そんなもの」
「は~い」
「やめて!」

 思わずシャラに縋ろうとした私だが、その手には問答無用で義母から扇が容赦なく振り落とされた。

「痛っ!」
「愛し子に気安く触るんじゃない」

 冷たい視線。
 シャラはこちらを見て、くすくすと笑っているだけだ。
 ……私の大事な物を何だと思っているのだろう……。

「シャラ、あなたにお似合いのブローチを買いに行きましょう。そんなものは、とっとと壊して捨てましょうね」
「ありがとう!お母様!」

 ……壊す。
 ……もう、そんな言葉を聞いても縋る気力もなく、私の心も更に壊された気がする。
 一体、私を何だと思っているのだろう。

『女神様、大丈夫?』
『雨を降らせてやろう』
『恩を仇で返す、醜い女だな』

 ――いいの。

 そう、精霊達を止める言葉をかける気力どころか、気持ちすら微塵も浮かばない。
 ……好きにしなさい。
 優しさが、どんどん減っていくのは自分でも自覚していた。

「……愚かな……」

 ポツリと呟いた声は、二人に届く事はない。
 少しくらいの雨であれば恵の雨程度だ。誰も困る事はないだろう。
 あんな足元にある小石程度の二人より……私は、この国が大事なんだ。だからこそ、第一王子の婚約者として、この国の未来を守るという目的がある。


 ◇


 ここ、ミシェル王国は神に愛された国とされている。
 女神が人を愛し、その男が女神と共に作った国、それがミシェル王国だ。
 実際、この国に不作というものもなければ、自然災害というものもない。毎年豊作で、雨風に怯える心配なんてなく、心穏やかに豊かな暮らしをしていけるのだ。
 それは、女神を慕っていた精霊達が、今もまだずっとこの国を守っているからと言われている。
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