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「小林さ~ん!掃除変わってくれる?」
放課後ならば、すぐに帰宅してしまえば逃げられるけれど、最近はそれを見越してか昼休みの段階で声をかけられる事が増えた。
「えっと……」
「良いよね?小林さん、優しいもんね!お家が神社で巫女さんだし!」
はっきり答えられない私に対して、私のコンプレックスを付いた言葉で追い打ちをかけてくるクラスメイト。
今日は舞の練習があって、早く帰って来いと親に言われている……けれど、巫女のイメージを損なうなとも言われている。
子どもの頃から神社の娘だから、巫女だからと、清純で優等生で、優しく奉仕の心を持つのが当然だとばかりに扱われていた。
それは仮面を何十にも付けるように、いつくものマトリョシカに入るように、本当の私はどこにも見えない。
「分かった」
「ありがとう!やっぱ小林さんだね!」
了承の言葉を貰って、どこかへ行くだけマシなのかもしれない。こちらが引き受けても居ないのに、言うだけ言って、引き受けて当然だとばかりに去って行く人も居る。
私って、一体なんだろうな。なんて、心の中で何度自問自答したか数え切れないが、それでも答えなんて出なかった。今日も心の中でため息をつき、感情は悲しみと諦めで満たされる。
本来、日直が授業の後に黒板を消したり、日誌を書いたり、掃除をして帰る。
日直は出席番号順に男女ペアで回るのだが、頼んできた女子は勿論の事、ペアとなっている男子まで掃除に現れず、一人で行う事となった。
だからと言って、手を抜くという事も出来ない。元々の気質なのか、求められた仮面なのかは自分自身でも、もう分からない。
ただ、手を抜いた事が分かるようであれば、それはきっと巫女らしくないと罵られる理由を作る事になってしまうのだろう。
一人で掃除をして、日誌も書いて、職員室に居る担任の元へ持っていく。
もう毎日私が日誌を持って行っているのに、それを疑問に思う事もない担任にも諦めていた。
「小林だからな。頼られているんだろう」
一週間程、続いた時に担任から言われた言葉だ。
その言葉を聞いた瞬間に、相談するという気持ちは消え失せて、期待というものもなくなった。
私にとって神社の娘というポジションも、巫女という肩書きも、全てが私を偽って形成するだけの足枷でしかなく、本来の自分自身すら見えなくなる。
他者の視点でしか自分の価値を、自分自身を見いだせず、承認欲求だけで形作られてきた。
自己肯定感なんて皆無。
それが、十六になってまで己というものを持たず、小林 美緒という名称を持つ物体として生きている私だった。
放課後ならば、すぐに帰宅してしまえば逃げられるけれど、最近はそれを見越してか昼休みの段階で声をかけられる事が増えた。
「えっと……」
「良いよね?小林さん、優しいもんね!お家が神社で巫女さんだし!」
はっきり答えられない私に対して、私のコンプレックスを付いた言葉で追い打ちをかけてくるクラスメイト。
今日は舞の練習があって、早く帰って来いと親に言われている……けれど、巫女のイメージを損なうなとも言われている。
子どもの頃から神社の娘だから、巫女だからと、清純で優等生で、優しく奉仕の心を持つのが当然だとばかりに扱われていた。
それは仮面を何十にも付けるように、いつくものマトリョシカに入るように、本当の私はどこにも見えない。
「分かった」
「ありがとう!やっぱ小林さんだね!」
了承の言葉を貰って、どこかへ行くだけマシなのかもしれない。こちらが引き受けても居ないのに、言うだけ言って、引き受けて当然だとばかりに去って行く人も居る。
私って、一体なんだろうな。なんて、心の中で何度自問自答したか数え切れないが、それでも答えなんて出なかった。今日も心の中でため息をつき、感情は悲しみと諦めで満たされる。
本来、日直が授業の後に黒板を消したり、日誌を書いたり、掃除をして帰る。
日直は出席番号順に男女ペアで回るのだが、頼んできた女子は勿論の事、ペアとなっている男子まで掃除に現れず、一人で行う事となった。
だからと言って、手を抜くという事も出来ない。元々の気質なのか、求められた仮面なのかは自分自身でも、もう分からない。
ただ、手を抜いた事が分かるようであれば、それはきっと巫女らしくないと罵られる理由を作る事になってしまうのだろう。
一人で掃除をして、日誌も書いて、職員室に居る担任の元へ持っていく。
もう毎日私が日誌を持って行っているのに、それを疑問に思う事もない担任にも諦めていた。
「小林だからな。頼られているんだろう」
一週間程、続いた時に担任から言われた言葉だ。
その言葉を聞いた瞬間に、相談するという気持ちは消え失せて、期待というものもなくなった。
私にとって神社の娘というポジションも、巫女という肩書きも、全てが私を偽って形成するだけの足枷でしかなく、本来の自分自身すら見えなくなる。
他者の視点でしか自分の価値を、自分自身を見いだせず、承認欲求だけで形作られてきた。
自己肯定感なんて皆無。
それが、十六になってまで己というものを持たず、小林 美緒という名称を持つ物体として生きている私だった。
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