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第一章
12話 お迎えが来ました
しおりを挟む見上げると真上にきた太陽が眩しい。
あたし達は小川へ向かった。
下半身だけでも洗いたかったんだ。
周囲に人がいないのを確認。川の水は澄んでいる。
膝丈貫頭衣の裾を胸の下までたくし上げて結び合わせ、裸足になって川の中へ入る。ノーパンだからこんだけでOK。服を脱いでしまわないのは、誰か来た時にすぐ対応できるように。それにしてもエロい格好してるな、あたし。
チドルも真似して入ってきた。
川はそんなに深くはないけど、しゃがむとお腹まで浸かれる。流れは緩やか。ほどよい冷たさが気持ちいー。
一応持ってきてたタオルで足や下腹部を擦る。
チドルの体も擦ってあげる。
きゃはは、とチドルは身悶えた。
そのうちなぜか水の掛けっこに。結局、服びしょびしょやん。
川から上がると、また追いかけっこしてじゃれあう。
それで服を乾かした。生乾きだけど。
チドルが神様に感謝したいと言うので教会に向かう。
あたしも中を覗いてみたかったし丁度いい。
途中、教会裏の墓地に寄る。チドルは両親とお姉さんのお墓の前で祈りを捧げた。
墓標が卒塔婆そっくりだ。
あたしも手を合わせる。こんにちは、服借りてます。
教会の中へ。
小さな村の教会だからね、そんな凝った造りじゃない。
あたしらは玄関ホールから礼拝堂へ入って行った。そこはがらんとした薄暗い空間。学校の特別教室くらいの広さで、飾り立てるものもなく素朴だ。椅子なんかはない。何だかひんやりしてて肌寒いよ。
中をまっすぐに進んで行くと祭壇の前に出る。祭壇周りにも過剰な装飾はなし。
人は誰もいなかった。聖職者も必要がある時のみ、あの城塞都市からやって来るらしい。人が集まるのはその時だけで、普段は思い思いに礼拝するんだって。
祭壇の奥には金箔の小箱が置かれていた。
どうもそれが祈りを捧げる対象のようだ。
「あの中に神様がいるの?」
あたしは聞いた。
「神様がっていうか、神様が人間になって教えを説いた時のね、その身体のお骨が少し入ってるの」
チドルが一生懸命説明してくれる。
ふうん、仏舎利みたいなものかな。想像してた神像とはかなり違う。
こんな風に本物とも思えないお骨が各教会に祭られてるんだろうね。全部集めると人一人分より遥かに多い的な。
ビザ教のことはできるだけ知っておいた方がいいと思った。
教えてチドル先生!
なんでも昔々、創世の神のビザ様は下界におりて人となった。そして貴賎を問わぬ博愛を説き、堕落を厭い、時の皇帝の不興を買った。その為、無惨に処刑されたという。そっからの現在に至る流れはどっかで聞いたような物語。だから割愛。まぁ、巨大宗教になっても元の正しい教えが守られているように思えないのはお約束か。
帝都には教皇がいて、大規模な組織が国の隅々までがっつりと影響力を行き渡らせている。教皇の下には数人の司教。そして、帝国に属する諸侯の国にはそれぞれ司祭がその地のトップとして在任している。新生ドーマ帝国がどれくらいの規模なのかはよく分かんないけど、あたしは勝手に神聖ローマ帝国をイメージしてる。名前似てるし。
ちなみに内部の異端には厳しいけど、異教徒に対しては割りと寛容な様子。改宗を強要したりはしないっぽい。
あと皇帝への反乱勢力を強く非難したりはしてない。反乱側が勝つ展開も有り得ると思ってるのかな?
ま、質問責めしてチドルから聞き出せたことを推測交えて整理するとこんなとこ。
話が済むとチドルはひざまずいて手を組み、小箱に向かって神様への感謝の言葉を小さく呟いた。
祈りを終えたチドルは顔を上げると言った。
「そろそろおうち帰ろうか」
家に戻ると今度は室内遊びに興じる。
お互いに国の遊びを教え合った。
あたしが石ころでハイレベルなお手玉をやって見せるとチドルはびっくり。
この世界にもトランプ的なものが既にあったので、調子に乗ってカードマジックも披露した。チドルは唖然、呆然。あたし東方の魔女じゃないからな。
チドルが最初にやって見せてくれたのは、並べたおはじきの一つを弾いて順にぶつけ合わせ、その音で単純な楽曲を奏でる遊び。
並べ方を変えると曲が変わる。これは面白い。曲によって石の間隔の空け方など色んな要素が加わり、複雑さが増していく。
おはじきはそれぞれ違う特定の音が鳴るように出来ている。自然に採れる石の中に叩くと音が出る音鳴り石というのがあって、加工の仕方でこういうおはじきを作れるらしい。この世界、色んな面白石があるんだね。
こんな風に次々と交互に色んな遊びを見せっこする。
あやとりはこの世界にもあって、チドルは「知ってる、知ってる」とはしゃいだ。作る形が同じでも、あたしとチドルでその意味が違うのは当然だろうけど興味深い。
チドルが紙を使った遊びを教えてくれた時、あたしは思いついた。
「ねぇ、正方形の紙ある?」
「あるよー」
チドルが持ってきてくれた15センチ四方の紙を使って、あたしはパパッと鶴を折ってみせた。
「すごぉい!」
チドル感嘆。やっぱりウケた。外国人にだってウケるもんね。
「西の谷のドラゴンだあ!!」
チドルは嬉しそうに叫ぶ。
は、ドラゴン?
「へえ。ドラゴンの伝説があるんだ?」
「伝説? 今もいるよ。滅多に姿は見せないけど」
なんでもチドルも空を舞うのを遠くから一度見たことがあるだけらしい。
・・・・・・そっかぁ。ドラゴンいるかぁ。
異世界だなぁ。
夢中になって遊んでると、瞬く間に時間は過ぎる。
さて、お腹が減った。
夕食の時間です。
昨晩と同じものです。
お世話になってる分際でちょっとガッカリしたあたし、感じ悪っ!!
あ、木の実のスープの中にキャンディ入ってる・・・・・・。
「あーーーーーっ!!」
チドルが突然甲高い声を上げる。
「えっ、何?」
「荷造り、まだ全然してなかったぁ!!」
慌てて作業に取り掛かるチドル。
あたしも手伝う。
ドタバタして、何とか片付け一段落。
就寝でーす。
素っ裸になって、おやすみ。
「今日ね」
ベッドの中でチドルが呟く。
「うん?」
「追いかけっこしてて、お姉ちゃんの服来たミチルの後ろ姿見てたら・・・・・・」
顔を赤らめ、うつむく。
その先をチドルは言わなかった。
ゴゲゴッゴーーーーー!!
朝。
伯爵が寄越してくれた迎えの馬車が来た。
ガラガラ近付いてくる騒音がしたので窓から覗くと見えた。
二頭立ての四人乗りくらいの四輪馬車。乗車スペースがちゃんと屋根・ドア付いた箱型になってるやつ。窓は開口部に木蓋が付いてる様子。
馬車はチドルの家の前に停まる。
大きな通りじゃないので道が狭くなる。
へえ、馬はワニのような尻尾が短めだあ。色んな品種がいるのかな。
あたしは数回、深呼吸。
ふう、いよいよだ。
いよいよお城へ行くんだ。
チドルのお姉さんのお出かけ服着て、準備は万端整ってる。
純白のロングワンピース姿。胸の辺りが少し伸びてるけど、まぁ、そこはまぁ。
それにしても、やっぱり緊張するなー。
お城はチドルの家みたいな気楽な所じゃないだろう。
気を引き締めてキチンとしなきゃ。
チドルはというと、遂にお姉さんに買ってもらった純白のよそ行きワンピを装着。
かっ、可愛い! 天使ぶりが上がった。
あたしらお揃いだぁ。
んー、お姉さん、こんな風にお揃い服で一緒にお出かけしたくて妹にあの服買ってあげたんだろうなぁ。
それにしてもチドル、メチャクチャ緊張してる。
歩き方が余りにもカッチカチなんでちょっと吹いた。
おかげでこっちの緊張は少し緩んだよ。
馬車から降りてきたのはイケメン青年。
丁寧な挨拶は握手から。
彼は「伯爵様の使いで来ました。侍従のランマルです」と名乗った。
・・・・・・何だ、その伏線くさい名前は。
伯爵と一緒に謀反に遭って死んだりしないだろな。
それにしてもこの人、あたしの顔を見ても村人のような物珍しげな反応は一切しない。感じのいい笑顔を保っている。よく訓練された侍従さんだ。
そのランマルさんは膝上丈の青いコタルディ姿。体にぴったりした服だよ。
脚には伯爵が穿いていたようなホーズ。色は白。
あそこにコッドピースは被せてないね。
そして、頭には小さめの臙脂色のベレー帽みたいなの被ってる。髪は明るいブラウンのミディアムロングヘア。スラリと背が高くカッコイイ。
彼にエスコートされてあたしらは馬車に乗り込む。
馬車の中では後ろ側の席にあたしとチドルが並んで座り、向かいの前側になる席に侍従さん。あたしらの荷物は御者の人が侍従さんの横に乗せてくれた。
うーん、これはどうもある程度の格式がある馬車ではないか?
この感じ、やっぱただの雇われ人ではなく、それなりの立場の人間としてあたしを扱うよう伯爵に指示されてるんだろうなぁ。
「お気楽に」
侍従さんが言った。
馬車の窓の木蓋を開ける。
周りの家から何人も人が出て来て眺めてた。
チドルが手を振る。
「いってきまーす」
御者さんが馬もどきに鞭を振るった。
土煙を上げて馬車は走り出す。
Uターンできないので、そのまま真っ直ぐ進んで回ってく。
さあ、出発。
お城へ!
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