家出した令嬢は自由気ままに『捕食』する!

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家出した令嬢は冒険者になるようです

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みなさまご機嫌よ。サルビアと申します。
現在、私は薄暗い洞窟の中にいます。正確には、取り残されたのですが……。

本来なら、Cランクの冒険者の3人と共に行動するはずなのですが、彼らはゴブリンキングが現れると私を残したまま洞窟の外へ我先にと駆け出してしまいました。


確か……… 彼は「新人いじめをして楽しむ趣味があるペテン師」と呼ばれているって受付嬢のハニカさんが言っていたわね。だから、冒険者になったばかりの私を誘ったのでしょうか。

私の近くには彼らが蒔いた高位種の魔物をおびき寄せる薬が散乱していて、薬瓶が地面に転がっていた。

「はあ…、ばかばかしい。」

さすがに私もゴブリンキングの強さは知っている。
昔、本で読んだだけだが………。 みぐるみを剥がすわけでもなく、彼らは一体なにをしたかったのか。彼らは私が死んだ後に手荷物を回収するつもりだったのかもしれないが。そんなことにはならないだろう。

そういうわけで、男3人が逃げ出した後、私は一人でゴブリンキングの前に立っていた。
目の前に敵がいたらどうするか。戦って倒すしかないでしょう?

私は両手を前に出し、一本の棒を生み出すようにゆっくりと両手を開いた。
黄(光)魔法で、小刀を出現させる。

私は、その黄色の炎を纏った刀を左手で握りしめて、ゴブリンキングに向かって、走り出した。
ゴブリンと構造自体は一緒だが、コアが数倍堅かったはず…。
キングゴブリンの素早いパンチを避けた瞬間、胸元にあるコアを一瞥した。
ギルドで素材を買い取ってもらえるのよね。
なるべく1発で仕留めて、傷を付けないようにしないと。

敵が魔法を放とうと動きを鈍らせた刹那、私は、地面を強く蹴りゴブリンキングのコアの正面にあたる、およそ8メートル程地面を蹴り、跳んだ。

私は小刀を敵の核の部分に突きつける。

「ヴァアアァァァ…...」

刹那、敵はゆっくりと倒れた。それは一瞬の出来事。

よかった…読んだ通りだったわ。
私は、微笑んだ。

私はこの洞窟には一人になっていたと思っていた。しかし、洞窟にはもう一つの影があった。洞窟を捜索していた男は突然の爆発音にただ事ではないと察知し、岩陰からサルビアの闘戦を見ていた。
巨大な敵を華麗に倒す少女。このおかしな空間を彼はただ楽しんでいた。


「あんた、すげえな!!」

岩陰から一人の青年が、現れた。見た目は20代前半。私が倒した一連の流れを傍観していたようだ。
青年は心躍っていた。

(ありえないだろ。相手はBランク、いや、コアの質からしてもっと上位のものだ…。普通の冒険者なら数十人でやっと対等に戦えるかどうかという敵なのに。)

その異常な状況を分析して、笑っていた。

(まさか、俺ら、以外にもハイランクの奴と戦える人に出会えるなんてな…)

彼は宙を仰いだ。
彼もまた異常な部類。
だから、青年は私に声を掛けた…のかもしれない。

当の私は知る由もないが。



……それはさておき、私が洞窟にいた理由は、数時間前に遡る。


数日前、私は初めて王都に来た。

ムーン・ロッシュ王国。
鉱山が有名で、月光のような美しい宝石が発掘されたことが、国名の由来となっている。中でもここ、王都は、貿易の中心地であり、国内だけでなく、海外からも多くの人が訪れ、世界屈指の賑わいを誇っている。
また、近くには無数のダンジョンが存在していて、それを目的に訪れる冒険者も多いとか…。
私は、大通りを早歩きしながら、目的地に向かった。
1つのギルドの前で立ち止まる。

「ここね…」

ここは、Sランク冒険者を志す者が多く集まる冒険ギルド。王都からも極めて近いことから、貴族や王宮などからの特別な依頼も多く引き受けている。

「ふぅ………」

こういうのは、第一印象が大事と聞く。
とりあえず、身だしなみを整えた。
ギルドの扉を押し開け、ゆったりとした足取りで受付まで歩く。私の恰好はひざ下まであるブーツにフード付きのマントを羽織っていて、少々怪しく見えるだろう。多くの冒険者が私に注意を向けているのはこの恰好のせいだと思う。
 
うん、多分…。

決して、私の容姿が珍しいわけではないと思う。
私の髪は、青く長い。また、瞳も青色である。

現在は。

これは侍女から教わったイメチェンというやつだ。
とりあえず、冒険者登録をしよう。

「すいません、冒険者登録をお願いします」
「はい、こんにちは!!あ、初めまして、私は受付嬢をしております、ハニカと申します」
「こんにちは、サルビアです。よろしくお願いします」
「では、サルビアさん、準備をしますので少々待ってくださいね!」

受付嬢のハニカさんは元々冒険者をされていたそうだ。
ハニカさんは黄色い髪に大きな瞳ととても可愛らしい顔立ちをしている。

例えるなら、リス?うさぎ?…...そこらへんである。ハニカさんは受付の奥から鑑定盤と呼ばれる石板を持ってきた。

「はい、こちら鑑定盤です。手を触れると貴方のステータスが表示され、ギルドカードが発行されますよ」
「ありがとうございます」

鑑定盤とは、言葉通りステータスを鑑定して数値を出すという石板。ギルドカードを発行したり、魔物を討伐するなどして、上がったレベルを確認するとか。

ちなみに、ギルドカードは身分証代わりになる。ギルドカードに載っているステータスから相手の力量を図ることも多く、一種の資格の役割も果たしている。
また、ランクがHからAまであり、Hが最低位ランクでAが最上位ランクとなっている。ランクによって推奨される依頼が変わってくるが、別にランク外の依頼も受けれるそうだ。

私はそっと鑑定盤の中心に描かれている魔法陣に触れた。私が触れると石板は淡い光を放った。

なるほど…。これは、意図的に体内のマナを吸収、分析して、魔素量を測ることと同時に、対象者の記憶に介入して、特異や適性を測る魔法を兼ね備えた重複魔法の石板ですか。
私は、マナの流れを少し逆流させ、鑑定盤に吸収させる量を少し減らした。

石板から放たれる光が和らいだ後、鑑定盤の上側、私から見ると真正面にステータス情報が表示された。

ステータスが表示された後には1枚のギルドカードが発行された。


名前:サルビア【23】
ギルドランク:E
種族;人間
加護:捕食
魔法適正:青・緑・黄
称号:なし


「はい、終わりました。あら、サルビアさん、補食の加護をお持ちなんですね…珍しい。初めて出会いました。あと、まあ!!!」

ハニカさんは、私のカードをまじまじと見た。
彼女の鋭い眼光が私を射貫く。ハニカさんはそっと私にしか聞こえない声で呟いた。

「貴方は、どうやら隠蔽のスキルをお持ちのようですね。しかも、鑑定盤さえもごまかせる程の腕前のもの……」
「…...」

返答に迷う私を察して、ハニカさんは、何かに気づいたような素振りをして、微笑む。

「あっ、うふふ…、いいえ、ごめんなさい。冗談ですよ。冗談…。気分を害してしまったのなら、すいません。冒険者の皆さんの情報は守秘義務がありますので、安心してくださいね!」

(にこにこ)

…えっ怖っ。

ハニカさんは先ほどの穏やかな調子に戻っていた。私は一度、呼吸を整えた。さっきのは、幻覚?幻聴?

…絶対に違う。

彼女こそ一体何者なのかしら?

「あの、分かるものなのかしら?」
「いや、ほとんどの冒険者の方は分からないと思いますよ。私は、これでも受付嬢の経歴が長いですからね。色々とあるんですよ」

そうなんですか…。受付嬢の仕事ってすごすぎませんか。経歴が長くて、相手の力量を正確に悟れたらもう鑑定はいらないのではないかしら。

むしろ、ハニカさんの方が、正確…。

いや、とりあえずおいておきましょう。
分からないことを深堀してもそんな意味はないですし、ね!!

「サルビアさんは魔法適性が、3つもありますね。とても珍しいことですよ。ハイランク冒険者でもなかなかいません。魔法の才もおありのようですね」

魔法は白(光)、黒(闇)、赤(炎)、黄(電気)、茶(土)、緑(木)、青(水)の7色の属性があり、その7つの魔法から派生して、様々な魔法が生まれている。
 魔法自体を使える人はかなり稀であり、なぜか貴族等の位の高い者に生まれることが多いようだ。

「こほん…。では、軽くご説明させていただきますね。先ほども申し上げた通り、このギルドではHからAランクまでありまして、ギルドランクに見合ったクエストを受けることが推奨されています。
例えば、サルビアさんはEランクなので薬草の採集や、少しレベルが高いですが、ゴブリン討伐なんかもお勧めですよ。もっと高いレベルでもサルビアさんなら、大丈夫だと思いますよ。はい。……まあ、だってサルビアさんは詐称してますし……」

ハニカさん、本音が漏れていますよ。

そのように、痛いところを的確につくのを辞めていただきたい…です。
けれども、私は普通に冒険をしたいだけなので、そんなに、ランクとかステータスとか興味ないんですよ!!
 
多少冒険心がくすぐられましたが…。

まあ、クエストボードを見て考えようと思いますので、そのおあつい視線を止めていただけませんか?

あ、そういえば、

「最後に私から一つ、倒した魔物は自由にしても大丈夫なののかしら?」

「ええ、もちろん大丈夫ですよ。もし、状態が良ければ、ギルドでの買取も行っていますので、いい素材が手に入った時は御贔屓下さいね!!」

さらっと答えたついでにギルドの宣伝もするあたり、ちゃっかりしている。

「そうなんですね、良かった…」

私は、小さくガッツポーズした。

しかし、私は、知らなかった。
普通の冒険者は、ランクHから始まること。ここ数年ではランクEから始まった冒険者はいなかったこと。

ハニカさんは面白半分であえて黙っていたことを…。






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