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40: オキナ・タカサゴです。後悔してます。

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「お前ら、なんつー事言うんだよ…。」

「は?ジューニ何だよ、縁談だぞ?子を何人産めそうかとか家柄とか最重要項目だろ。」

「そうだぞ、真面目に釣書送るか検討してるだけじゃないか。」

ジューニの呆れた声にオニキリ達が反論する。
呆れた。貴族は皆こんな打算的で下世話な事ばかりを考えて縁談を結んでいるとでも思ってるのだろうか。呆れた。腹の底からムカムカしたものが汲み上げてくる。

確かに俺は今迄、ネオンが追っかけて来てくれてた意味を判ってなくて、アイツをΩとして無視するような扱いばかりしてきた。
その結果ネオンが学校に来なくなって、連絡付かなくて、それを親にも相談できなくて、一人で密かに探してる情けない状態だ。

一番の戦犯は俺だと判ってる。

それでも。

それでも、ネオンはずっと仲良くしてきた大切な幼馴染みだ。

学園入学したら学科が違ったり、茶会に行ったら誰かに話しかけたりしないでお茶ばっかり飲んでたり…βだと思ってたせいで戸惑う事も多かったけど……、今迄恋愛対象として見たことは無かったけど……。

大事な友人だと思ってたんだ。

いや、色々残念で困った所も多くて、どう付き合えば良いのか戸惑うけど、だけど憎めない、そんな弟みたいに思ってたんだ。

大事な弟をこんな口さがない事を言う奴等には絶対渡せない!


  「「「「どーすんだよ、オキナ!」」」」


散々下世話な話で盛り上がった挙げ句、兎にも角にも俺がどうするかを聞いてからだ、と結論付け、全員が声を揃えてやっとこさ立ち上がった俺を問い詰める。

その圧に、いつもなら気圧される所だが、俺はこの時ばかりは逆に彼等を圧倒させる程の威圧を気合いで放った。痛む足も気にせず踏ん張った。


「悪いが、俺がネオンと婚約する。釣書を送るのは諦めろ。」


キッパリ言い放った俺の言葉に、耳を澄ましてたヤツが沢山居たであろう騎士科校舎までシンと静まり返る。
取り敢えず、これで暫く下世話な有象無象が釣書を送るのは止めれた筈だ。俺の威圧に硬直するオニキリの横を通り過ぎながら、俺はそっと息を吐いた。

(早くネオンに会って話さないと…!謝って…それから、何かに誘おう。)

毎日欠かさず模擬試合を応援しに来てくれて、いつもタオルとお茶と軽食を差し出してくれたネオンをふと思い出す。
あの直向きな視線の意味に、どうして今まで気付かなかったんだろう。

どうして慕ってくれる弟だなんて思えたんだろう。

記憶の中のネオンは、派手派手カラーをこれ見よがしに着けて、いつも全身全霊で俺を好きだと物語っていた。

あれをどうして俺は、憧憬と称賛だと信じて居れたんだろう。

どうして、他のα子息が嫌がるから試合が終わったらすぐ帰ってくれ。とか酷いことが言えたんだろう。あんなに冷たくあしらえたんだろう。


どうして……どうして……。後悔ばかりが襲ってくる。

「はぁぁ……。ネオン、何処に居るんだよ…。」

アパルトマンに行った後ネオンから届いた手紙には、又貸しを内緒にしておいてくれという事と、元気であると言うことが書いてあるだけで、リターンアドレスは件のアパルトマンになってて何処に住んでいるかの手掛かりにはならなかった。

そして、久し振りに嗅ぐ、ネオン御用達Ω風香水は手紙に振りかけた訳ではなく移り香だったようで、微かに香るその香りはオレンジが効いたフルーティフローラルと甘いスパイスのとても可愛い香りで、キュンと胸を締め付けた。

あの時、踊り子Ωはアパルトマンから徒歩圏内だと言っていたし、手紙には、その日の内に食べなきゃいけないマカロンを食べたらしく「美味しかった♡どうもありがとう!」なんて書いてあったから、あの近辺には住んでいるのだろう。

そう見当を付けた俺は、連日放課後に繁華街を彷徨いて、似たようなアパルトマンがある通りを虱潰しにしているのだが、時間帯が合わないのか、一向にネオンを見つけられなかった。

その分、修練や課題の時間がずれ込むので、結果寝不足疲れ気味の毎日という訳だ。

(だけど、早く見つけて、色々話し合わないと…。俺がネオンを恋愛感情で見れるかどうかは後回しだ!)

ネオンを守るためにも、良い相手が見つかる迄暫くは俺が婚約しておくのも良いかも知れない。
もし相手が見つからなくても、俺なら、少なくともアイツに友情を持って接する事が出来る。オニキリ達よりはマシな相手の筈だ…!

なんて考えながら、俺は痛む足を引き摺って医務室を目指した。


まさか、ネオンがとっくに俺への気持ちを忘れ去り、別のαとイチャイチャ現在幸せの真っ只中♡♡みたいな事になってるなんて、思いもしなかった。

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