【完結】転生悪役令嬢は婚約破棄を合図にヤンデレの嵐に見舞われる

予想外の騎士団長と謎の銀髪参戦

血が登りかけた頭を軽く振って、礼を言いながら見上げると、肉の塊の正体は王国騎士団長だった。

えっ！！！

騎士服が破れんばかりの逞しい腕で優しく私を抱き、私の丁寧に編み込まれた白金髪をそっと撫でながら、
大丈夫かな？とか、こんな時でもそなたは私の魂を掴んで離さないな、とか囁いて来てるけど、

えっ！？？脳筋のパパ！！？

そういえば脳筋が小さい頃に奥さん亡くしてるんだっけ。
って、いやいや脳筋、眼を見開いてる暇があったら止めてよ！同い年の母親が出来るの嫌でしょ！？

と、このタイミングで魔力弾の補充をしていたらしき魔道師達がマシンガンの様な魔道具で一斉掃射してきた。

騎士団長が私を庇い、背中に魔力弾を雨霰と受けながら扉を蹴破って中庭に飛び出す。
あの銃器型の魔道具は西モンテン皇国の物だ。
あの人達、令嬢令息に扮してるけど、モンテン皇国皇弟殿下と大使の手の者なのかな。


「ぅっわーーーー！凄いね、見た？？怒濤の大乱闘！
ていうか、卒業生も給仕も楽団もみーーんなマリア嬢目当てだったみたいだけど、これ、入れ替わりの為に結構な人数拐かされてない？
てか、タイソン、お父上ってばいつの間にマリア嬢の事好きになってたの？
何でタイソンのお父上はここに居てたの？
あ、見て見て！ランスロットがピクピクしてるよ！
ねぇ、王子もミュリィも起きてる？？
さっきからうんともすんとも言わないけど」

腹黒ショタこと、ラインハルト・ジュディマは興奮冷めやらぬ様子でピョンピョンしながら捲し立てる。
片眼鏡ことシューレン・マッケナは、呆然と固まる王子と男爵令嬢と騎士団長子息を一瞥した後、中庭へと歩き出した。

「ラインハルト、行きましょう。見逃しますよ」

「行こう、行こう！ね、誰が勝つと思う？？」

「ふふ、多分、ラインハルトと同じ考えですよ。」

それじゃ賭けにならないなぁ、と、楽しそうに笑う二人が向かう先、中庭から、私はダンスホールのエントランスに逃げ込んだところだった。

私を中庭に連れ出した騎士団長は、魔道師十人を束にして相手をしている際に背後に現れた銀髪の長身に不意撃たれ昏倒した。

その際、きっちり魔道師十人も道連れにしていたのは流石だと思う。

というか、銀髪の長身に心当たりがなくて震える。

取り敢えず追手がない内にとエントランスの端に向かって走っていると、エントランスのすぐ外、遊歩道からダカッダカッと蹄の音が聞こえてきた。

「お嬢様！！マリアお嬢様！！早く此方に！」

現れたのは御者のサミュエルだった。
馬車から外したであろう馬に乗って颯爽と現れる姿は正に、私にとって白馬の王子さまだった。

ありがとうサミュエル！
いつも馬車を出してくれるとき、笑顔で挨拶したり、ドレスの裾を気にしてくれたり、道に泥濘があるからと手を貸してくれる貴方が最近の私の唯一の癒しよ！
帰ったら何でも買ってあげる！！

急いでサミュエルの後ろに飛び乗ると、サミュエルの鍛えられた背中にぎゅっとしがみついた。

家に！家に帰れる！！