【完結】転生悪役令嬢は婚約破棄を合図にヤンデレの嵐に見舞われる

サミュエル、お前もか

家に！家に帰れる！！

「…！！……っ…お嬢様っ……ぁぁ、お嬢様がこんなに必死に俺にしがみついて……ふふ…やっぱりだ……やっぱりお嬢様は俺を……！」

あれ、ようすがおかしい。

ヤバい、とは思ったものの、サミュエルは凄い勢いで馬を走らせ、結局私はしがみつく以外出来なかった。

しかし、数人の騎士らしき者が同じように馬で追いかけて来、カーチェイスの様に両側からゴリゴリと馬を寄せて止めようとしてきた。

もう少しで止まる、という瞬間に、飛び降りようとしていた私は誰かに抱き抱えられて宙を飛ぶ。
背後でサミュエルと騎士達が馬上から何かに叩き落とされ爆発した。

ビックリしている顎を掴まれたと思ったら、あっという間に謎の銀髪の顔が目前に迫り、口付けと共に何かを嚥下させられた。

「……んっ……ぅんん！……」

離せと銀髪の厚い胸板をドンドンと拳で叩くもびくともせず、歯列をなぞられ、上顎を擽り、充分に口内を蹂躙されてから、やっと解放された。

ダンスホール前のロータリーの中央に降ろされ、動こうとするが、足に力が入らずへたり込んでしまった。
クラクラして微かに末端が痺れる。
さっきのは麻痺薬だったか。
しかし、私が何の対策もしてないとでも？


「あの銀髪、誰なんだろう。中々強そう！
あ、マリア嬢尻餅ついた。麻痺？わぁ、小指の爪噛んだら浄化魔法発動したよ！ネイルに魔法組み込むとか、発想が乙女ならではだね！斬新ーー♪」

「…ふむ、参考になりますね。」

麻痺を払拭した私は、すぐに高く飛び上がった。

その瞬間、私が居たところと銀髪に四方から鎖の暗器が飛んできた。
銀髪は鎖で拘束されたが策があるのか余裕そうだった。

しかし、チャンスなので、銀髪が何かする前に上から雷撃を数発お見舞いする。

バリバリッと音を立てて雷撃は銀髪と暗器使いを襲う。鎖を通して感電した暗器使いは全員沈んだが、銀髪は膝をついた程度だった。
なかなかしぶとい。何者なんだよ！

と、凄い勢いで馬車がロータリーに突入してきた。
勢い良く扉が開き、中から見知った人物が出てきた。


「マリア！大丈夫か！？此方だ！！早く来なさい！！」