【完結】転生悪役令嬢は婚約破棄を合図にヤンデレの嵐に見舞われる

syarin

文字の大きさ
11 / 11

片眼鏡は満を持して登場する。こうして幕は降ろされた。

しおりを挟む
卒業パーティーでマリアは婚約破棄されるというエサをばら蒔いて、愚か者どもをご招待する。


そうして迎えた卒業パーティー、彼女は、彼女を愛するが故に愚か者どもにでっち上げられた数々の罪を断罪され、虎視眈々と彼女を狙う愚か者に囲まれながら、気丈に佇んでいた。

そして、奮闘し、ボロボロになった。

追い詰められていく様は可哀想で、それでも美しくて、今すぐ助けてあげたくて胸が張り裂けそうだったが、ぐっと堪えて、彼女の美しい一挙一動を眼に焼き付けた。

私に泣きながら目ですがり、必死に這い、手を伸ばす様は愛しく、神々しいまでの美しさに溢れていた。

マリアは絶望の表情までもが美しかった。

愛しいマリア、あの時、君の中で確実に育った私への気持ちを垣間見たよ。

私の笑み一つで全ての苦しみを忘れたようなあの顔。

それが恋だと、愛だと、そろそろ気付いてくれたかな。

次逢った時、君と同じスピードで恋をしてあげるね。

男爵令嬢にメロメロになった私は、真実の愛を知り、失恋の痛みを知り、そして君と恋に落ちるんだ。



予想通り、あのパーティーで彼女を手にしたのはバレイの新しい王だった。

銀髪の長身、多大な魔力と戦闘センスでバレイ王国を掌握した若き王。

暗殺文化の発達したあの国で幾多の暗殺を掻い潜り、自分の力だけで玉座をもぎ取った一騎当千の猛者。

バレイの王族の何人かがマリアに執着しているのを知り、興味本位でマリアに近付き溺れてしまった可哀想な犬コロよ。

お前の弱点は、お前の駒がお前しか居ないことだ。



私はマリアに埋め込んだ術式で全て把握していた。

マリアの純潔を守りつつ、マリアに女としての快楽、欲望を自覚して貰うため、適度にバレイ王に触らせ、口説かせてやった。

危うくなれば、バレイ内のマリアに惚れた残党や、西モンテン、リブレーにマリアを奪還させる。

そうやってマリアを奪い合っている間に、第1王子が侵略とクーデターの準備を進める。

何と効率的で美しい日々だったろうか。
自分で書き上げた戯曲の完成度に自画自賛する。

今頃、侵入者の報せを受けて、マリアを大切に隠しリブレーの公爵とモンテンの皇子どもと戦っている頃だろうか。

知っているぞ、バレイ王。
一騎当千のお前と云えどそろそろ限界だろう?

この一年、マリアを手に入れようとしつこくお前に暗殺者を贈る国内の残党どもの相手に、
マリアとの時間を作るための過労気味の政務、
マリア奪取にマリア奪還の戦闘の数々。

休む間も無かったものな。


ふふふ、やっとマリアと繋がれると思った瞬間にマリアを転移させてやった時のお前の顔と言ったら。

ふふふ、

毎回お前はリブレーかモンテンだと思っていたようだが、あれはマリアの中に組み込んだ術式で私がやったんだよ。

バレイ城内のモンテンやリブレーの間者の近くに転移させれば良いだけだから、とても簡単だったよ。
御愁傷様。

思い出し笑いに肩を揺らしながら懐中時計を開き見る。

この片眼鏡を着けなければ見えない情報が目の前に広がる。
モンテンは敗れ、リブレーが善戦しているようだな。

あの中年、ねちっこく厭らしい戦い方をするから、さぞかしバレイ王を痛め付けてくれたろう。
予定通りお互い満身創痍で、ろくに抵抗する力も残ってないから、第1王子達が到着次第制圧されるだろう。

マリアと共に逃げた場合の退路にも、ランスロットとバレイの残党を配置しておいたが、バレイの残党を倒した頃合いでタイソンが到着するから、功績の確認だとか何だとかで時間を稼いでくれるハズだ。

彼には感謝している。

辺境伯家のノウハウでマリアを自衛出来る位には鍛えてくれたし、あの鍛練のお陰で彼女は確実に大人へと成長していったのだから。

おっと、噂をすれば、第1王子達の到着だ。


さて、バレイ王。

この一年、マリアの純潔以外は味わせてやったんだ。
後は惨めに生きるといい。

バレイは素敵な国だな。

素晴らしい景色に名所、異国情緒溢れる寺院にマーケット。
閉じ込めるばかりで見せれなかったお前に替わって私がマリアに紹介しておくよ。



シャルドネを飲み干し、身嗜みと酔い醒ましの為に浄化魔法をかけると、パチンと音を鳴らして懐中時計を閉じた。

数歩先の鏡の前で服装を整える。
魔法中心の魔剣士なので甲冑などではないかっちりとした軍服に身を包み、長い銀髪を邪魔にならないように結った姿にトレードマークの片眼鏡。
左耳に、彼女を想って作った白金と紅玉のピアスが揺れる。

腰に佩いた剣を一度確認してから、深呼吸。

バレイ城内の一角に転移する。




さあ、お迎えの時間だ。


誰も居ない廊下を靴音鳴らして進み、堅牢な扉に手を掛ける。

バレイの王が苦心してかけた結界と鍵の数々を一つずつ開錠していく。

マリアは今日の服、気に入ってくれるだろうか。

鍵の最後の一つが外れた。

どんな顔を見せてくれるだろうか。

逸る心を抑えて、ゆっくりと扉を開いた。

正面、暗闇の中、光が射し込んでいく。

寝台の上、可愛い人がはっと振り向く気配がする。


「やぁ、やっと見つけたよ。マリア……」

一年ぶりの愛しい人に、私は優しく微笑んだ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本当に短いギャグにするはずが、どうしてこんなことに。と思いつつも、勢いに任せて楽しく書けたので良しとしました。
これは短編なのか長編なのか、Rをつけるべきなのか、1話の文字数の適量はどのくらいなのか、判断がつかない事だらけで、色々と読み辛い点もあるかと思いますが、読んでくださってありがとうございました。

纏めると、ヤンデレ頂上決定戦は主催者が最後に乱入してきて独り勝ち。
主人公は断罪されて身も心もボロボロ、
断罪した王子と令嬢は次期王&王妃からの臣籍降下するものの、上さえ見なければ楽しく暮らせそうという、全転生悪役令嬢が羨むポジション。
という誰得な小説でしたが、次はもっと面白いものが書けるよう頑張りますので、また見かけたら読んでくださると嬉しいです。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

haaaaaaaaa
2022.02.16 haaaaaaaaa

めちゃくちゃ面白かったです!syarinさん、凄いです( ; ›ω‹ )

2022.02.16 syarin

わぁ!ありがとうございます!
読んでくださって嬉しいです(((o(*゚∀゚*)o)))
此方こそ!いつもhaaaaaaaaa さんの小説楽しませて貰ってます( 〃▽〃)
次のお話も楽しみにしてますね(*´ω`*)♪
読んでくださってありがとうです♡

解除
緋影 ナヅキ

 面白かったです。
 この後の話やバレル国にいる間のマリアsideを読みたいです。

 主催者が最後に横から攫うという、なんだろう。「お前か〜い!」というふうに思いました。


 …にしても、マリアすごい人気。傾国の美少女かな?

2021.12.29 syarin

ナヅキさん、感想ありがとうございます(*´∀`)
機会があれば書きたいですねー♪( ´ ▽ ` )ノ

解除
ミミ
2021.10.09 ミミ

面白かった(^-^)
マリア目線が読みたい!

2021.10.09 syarin

ミミさん、初感想嬉しいですー!
機会があれば書いてみたいと思います(*´∀`*)

解除

あなたにおすすめの小説

嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜

As-me.com
恋愛
 事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。  金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。 「きっと、辛い生活が待っているわ」  これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。 義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」 義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」 義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」  なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。 「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」  実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!  ────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?

悪役令嬢ですが、どうやらずっと好きだったみたいです

朝顔
恋愛
リナリアは前世の記憶を思い出して、頭を悩ませた。 この世界が自分の遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気がついたのだ。 そして、自分はどうやら主人公をいじめて、嫉妬に狂って殺そうとまでする悪役令嬢に転生してしまった。 せっかく生まれ変わった人生で断罪されるなんて絶対嫌。 どうにかして攻略対象である王子から逃げたいけど、なぜだか懐つかれてしまって……。 悪役令嬢の王道?の話を書いてみたくてチャレンジしました。 ざまぁはなく、溺愛甘々なお話です。 なろうにも同時投稿

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

【完結】ゲーム序盤に殺されるモブに転生したのに、黒幕と契約結婚することになりました〜ここまで愛が重いのは聞いていない〜

紅城えりす☆VTuber
恋愛
激甘、重すぎる溺愛ストーリー! 主人公は推理ゲームの序盤に殺される悪徳令嬢シータに転生してしまうが――。 「黒幕の侯爵は悪徳貴族しか狙わないじゃない。つまり、清く正しく生きていれば殺されないでしょ!」  本人は全く気にしていなかった。  そのままシータは、前世知識を駆使しながら令嬢ライフをエンジョイすることを決意。  しかし、主人公を待っていたのは、シータを政略結婚の道具としか考えていない両親と暮らす地獄と呼ぶべき生活だった。  ある日シータは舞踏会にて、黒幕であるセシル侯爵と遭遇。 「一つゲームをしましょう。もし、貴方が勝てばご褒美をあげます」  さらに、その『ご褒美』とは彼と『契約結婚』をすることで――。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。 読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

気づいたら悪役令嬢でしたが、破滅フラグは全力で避けます!

腐ったバナナ
恋愛
目を覚ますと、乙女ゲームの世界で悪役令嬢として転生していた私――リリナ・フォン・ヴァルデン。 ゲームでは、王子への婚約破棄やヒロインへの嫌がらせが原因で破滅する役回り。 でも、私はもう一度人生をやり直せる! フラグを確認し、全力で回避して、自由に、そして自分らしく生きると決めた。 「嫌なイベントは全部避けます。無理に人を傷つけない、そして……自分も傷つかない!」 だけど、自由奔放に行動する私のせいで、王子もヒロインも周囲も大混乱。 気づけば、破滅するはずの悪役令嬢が、いつの間にか一目置かれる存在になってしまった!?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。