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時は来た!断罪の卒業記念パーティー!
309: 派手令嬢と公爵令息は踊り、舞い、演出し、羊令息は菫色の愛を誓う。
しおりを挟む私達は踊りながらクスクスと笑い合い、鼻と鼻でつつき合い、額を寄せ合って他愛もない事を囁き合った。
「ふふ、少し、2人だけで踊らないか……。」
アレックスの言葉が終わるか終わらないかのうちに、ふわり、と足が浮く。
「いつもみたいに、認識阻害諸々を掛けたから大丈夫だ。」
そう言いながら、アレックスが私を浮かせて大きくステップを踏む。
ふわり、ふわり、と螺旋状に私達は躍りながら浮き上がり、ひらひら、ふわふわと、令嬢令息達の頭上で踊る。アレックスが絶妙に浮かせてくれてるので、私は安心して空を蹴り、風魔法で回転し、またアレックスに捕まえて貰う。
何だか楽しくて、マジックボックスから試作品の幻影魔法玉、カレイドスコープとファイヤーワークスとサラマンダーフィズをぶちまける。
うわぁぁ!とかきゃぁぁ♡という感嘆が会場中から沸き上がる。
天井の高いホールの空間全体に、色取り取りの幻影花火が静かに咲き乱れ、万華鏡のような光の模様が壁に、床に、踊る令嬢令息達に降り注ぐ。
パチパチシュワシュワと煌めく光の粒はあっちに降り注ぎ、こっちにパチンと弾けて、シューーッと流れ星の様に飛び交う。
うっとりと眺めながら踊る令嬢令息達の頭上で、私とアレックスは抱擁し、体や髪を色々な色に変えながらキスをした。アレックスが何となく、泳ぐように回り、何となく回転してはいるけど、もう、ステップなんざどっかに行ってしまって…。
そんな私達の真下、踊る令嬢令息達の真ん中の空間に、アーレク先輩が婚約者のヴィオルタ令嬢と共に踊り出してきた。
そして、さっとアーレク先輩が跪いて小さな小箱を開けて見せる。
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「ヴィオルタ…色々不安にさせてすまない。愛してるよ!
オブシディアン領でしか採れないパープルサファイア。さっき、父上達にはああ言ったけど、本当はこれの為にあの2人のカモフラージュを引き受けたんだ。他言無用だったから、不安にさせてすまない!」
小さなビロードの小箱に、大粒のパープルサファイアとアンティークゴールドで造られた耳飾りとネックレスと指輪が鎮座していて、ヴィオルタ・フロゥライトは小さく息を呑んだ。
「嬉しい……アーレク……。」
友人の令嬢達に、婚約者が地味な令嬢をエスコートしているのを見たと何度か囁かれ、不安になった時もあった。
だが、いつも誰なのか、とかは問い詰めてもはぐらかされたけど、愛してるのはヴィオルタだと言ってくれたし。
会場にエスコートされてた後、一人きりにされて寂しかったが毎回15分程で大急ぎで帰ってきてくれたし…。と我慢してきた。
とうとうその理由が明かされ、ヴィオルタは嬉しさの余りに返事が出来なくなってしまった。綺麗な菫色のアクセサリーが涙で滲む。
「君が僕の色を纏ってくれてるのは凄く嬉しい。でも、僕って髪も茶色いし瞳も金茶色だろ?いつも、何だか地味になっちゃう君が申し訳なくて…。それに、僕はヴィオルタのその菫色の瞳が大好きなんだ……。だから、どうしても、君に、その瞳と同じ色の装飾を贈りたくて……。」
そっと、アーレクが菫色の瞳を見詰めながら、ヴィオルタのお気に入りのブラウントパーズとアンティークゴールドの首飾りを外し、耳飾りを外し、菫色のものに付け替えていく。
そのデザインは、どれもアンティークゴールドの蔦が菫色に絡み、閉じ込め、アーレクのヴィオルタに対する愛と独占欲を現している様で……。
「僕たちは幼い頃に親が交わした婚約だったから、プロポーズなんて必要ないけど、ちゃんとプロポーズしたかったんだ。ヴィオルタ、愛してるよ……僕と結婚してくれる?」
喜びで口のきけなくなったヴィオルタは、口をパクパクさせながら必死にコクコクと頷いた。
いつもの無害そうな雰囲気とは違い、うっそりと微笑んだアーレクは光と色が漂い幻想的に令嬢令息が踊る中心で、そっとヴィオルタの薬指に指輪を嵌めた。
その左手薬指には、小さな2つの菫色の宝石をがっちりと閉じ込めたデザインの指輪が嵌まっていて、ヴィオルタは、もしかして自分が思っていたより遥かにアーレクは自分を愛しているのかも……と心の中で独り言ちた。
少しぞくぞくするような心持ちで、幼馴染みで婚約者である男爵令息を見詰めれば、そのアンティークゴールドの瞳が、逃がさない、とばかりに危険な色を孕んでいる気がして……。
ヴィオルタはその危険な愛に溺れる覚悟で瞳を閉じ、婚約者の少し固そうな唇に口づけをした。
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