異世界転移したら、死んだはずの妹が敵国の将軍に転生していた件

有沢天水

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傭兵と戦士の違い

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「おいおいおい? 威勢だけかよ? 『不死身』の何とかさんよぉ?」

「ぐおっ!」

 ドゴっという鈍い音共に、モーガンの顔は苦悶の表情に歪んだ。

 ゼスの拳がモーガンの鎧ごと叩きのめし、鋼の鎧がべこっとへこんでいた。

「がはっ!」

 モーガンは片膝をついて、うずくまった。戦斧を支えにして、倒れこまないのがやっとである。

「勘弁してくれよ。俺とレツの間に入るにゃちょっと力不足だぜ?」

「やかましい。阿呆」

「ああ~ん?」

 モーガンはぜっぜっと息を切らしながら立ち上がり、戦斧を再び構えた。

「元より貴様に勝てると思うておらんわ。儂の仕事はお前をここに引き留めておくことよ。旦那が『勇者』を倒すまでなぁ!」

 モーガンは戦斧を横薙ぎに振るった。威力だけなら人間数人を寸断できる力強さである。

 しかし、それをゼスは退屈そうに上に飛んで避けていた。

「だったら、もう少し実力を付けてから来いよ? 今のままじゃその仕事すらできねえじゃねえか?」

「ぐおっ!」

 ゼスが鉄甲を、モーガンの戦斧の柄に叩きつける。それだけでモーガンは吹き飛ばされ、戦斧を手から放しそうになってしまう。

 これが命綱だとばかりにモーガンは決して自分の武器を手放さそうとしないが、それでも限界が近づいているのは明らかだった。

「あ~参ったな。今からでもあっちに割り込むかな。レツを倒した後、『勇者』を俺が代わりに相手するのも悪くねえか?」

「無理だな」

「なに?」

「無理だと言ったんだよ糞餓鬼。お前程度じゃあの二人の相手にならねえ」

「やっぱ雑魚だなてめえ。俺とあいつらの実力もわからねえとは......」

「そういうことじゃないんだよ!」

 モーガンがまたしても震える手で戦斧を振るう。

 ゼスにさっと避けられるが、それでもあきらめずに前へ前へと進んだ。

「お前にはわかるまい! 傭兵!」

「何がだよ?」

「あの二人は誰かのために戦っておる。旦那だけじゃない。あの『勇者』もだ」

「なんでそんなことが手前にわかんだよ?」

「わかるさ。数多くの戦で! 最前線で戦ってきた。戦に誰かの想いを背負って戦う男の眼はごまんと見てきた!」

「だから何だってんだ? そんなもんで勝てるほど戦は甘くねえだろ?」

「無論だ! どれだけ思いがあってもどうにもならないことはある! だが貴様程度に敗れるほど奴らは弱くない! 軽くはない!」

「傭兵国家の貴族が何を言ってやがる? 手前らも傭兵として各地で戦に手を貸してきたろ? 俺らと何が違う?」

「それが分からんから貴様は儂を倒せんのだ!」

 モーガンの戦斧がガキンとゼスの鉄甲を捉える。モーガンが早くなったのではない。ゼスが受け止めたのだ。

「くだらねえことをごちゃごちゃと......」

 ゼスの眼は怒りに燃えていた。モーガンの言葉は彼を無性に苛立たせた。

「なら必死で防いでみろ雑魚がぁ!!」

 ゼスは空手の回し受けのように腕を旋回させて、戦斧を弾き飛ばした。そしてくるりと一回転して、後ろ回し蹴りをモーガンに叩き込んだ。

「がふっ!」

 モーガンはもう何度目かもわからないほど、地面を転がされた。それでも気力を振り絞って立ち上がる。

 周りで見ている兵たちはすでにモーガンの闘志に畏敬の念をもって見始めていた。

「じじい。ここまで苛ついたのは久しぶりだぜ」

 ゼスは明確に殺意を持って、拳を構えた。かつて烈に対して使ったわざと同じ構えである。

「食らえ!」

 ゼスが八煌拳を放った。瞬時に人体の八か所の急所に拳を叩き込む荒技である。

 体も満足に動かせなくなったモーガンがそれを防ぐ術はない......ないはずだった。

「なに!?」

 だがその技が当たることはなかった。突然入ってきた人影にすべて打ち落とされたのである。

「あ......あなたは!?」

 モーガンはその人影が誰だかわかり驚愕した。

 それもそのはずである。今この場にいないはずの人なのだから。

 その人影はモーガンを見ながらにやりと笑った。

「おう! わけえの。いい啖呵じゃねえか。気に入ったぜ。『勇者』とやってみたかったんだが気が変わった。助けてやるよ」

 三十代のモーガンを若いと呼ぶその男は、その年齢を感じさせない快活とした表情と、剣さばきで見事にゼスの奥義を打ち破ってみせたのだ。

「カイエン公爵! なぜここに!? あなたは『紫鷹団』と対峙しているはずじゃ!?」

 その人影---ドイエベルン最強の男、カイエン公爵はかっかっかっと笑った。
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