136 / 144
『勇者』との決着
しおりを挟む
ガルランディは自身の折れて半分になった長剣をじっと見つめていた。
「公王からいただいた我が宝剣が折れるとはな......」
目を閉じ、先ほどまで放っていた圧倒的な剣圧も霧散させ、もう戦闘する意思はないかのように、すっと折れた長剣を鞘にしまった。
その表情はどこか憑き物が落ちたかのようでさえあった。
一方の烈は満身創痍である。同じように折れた剣を握っているが、肩で息をし、手足に力はなく、立っているのがやっとの状態であった。心技体が一致する状態にまだ体が慣れていないのである。
その姿を見て、ガルランディはふっと笑った。
「どうやら、ここまでのようだな。互いに剣が折れては戦えない」
烈はそれでもまだ警戒は解かなかった。
「そうでもないぜ? ここは戦場だ。その辺に落ちてる剣を拾えばまだ戦える」
「強がりを言うな。もう戦う力なぞ残っていまい。特にあの領域に入ったのだからな」
「あんた、心技体の一致の極意を知っているのか?」
「心技体の一致? ああ、なるほど。心と技と体、その全てのバランスが完全に一致すると、各々の能力が互いを補い飛躍的に向上するというわけか」
「あんた、知らなかったのか?」
「うむ。戦っていて極限まで集中が高まるとあの領域に入れることはわかるが、どういう仕組みかは理解できていなかった。教えてもらって助かるよ」
なんと、烈の言葉だけでガルランディは立花流の奥義を理解してしまったのだ。烈は苦笑するしかなかった。
「まったく、天才どもときたらどいつもこいつも......」
烈の嘆息を、ガルランディは気に留めていない様子であった。それよりも周りの様子を見回していた。
「どうやら各所でも決着がついたようだな」
烈もつられて周りを見渡した。確かに、そこかしこで放たれていた殺気が落ちつきを見せ始めている。
「我らは負けたようだな。仕方ない。国に帰るとしよう」
「あっさりと帰るんだな。いいのか? 何も戦果をあげていないだろう?」
「まあな。だが、所詮我らは他国の人間。この程度の兵力では侵略した国を統治することなどできはないしない」
「ならなぜ侵略してきたんだ?」
「さてな。ただ......」
「ただ?」
「あのペルセウスという男。一度ポーレン公国での会談の場で見たことあるが、決して無能というわけではない。三大公爵と敵対することになろうと利するものがあるからこそ、このような戦略をとっているのであろう」
ガルランディは部下が連れてきた馬に跨り、退却の準備を始めた。そして烈の方を振り返り、涼しげな顔で笑った。
「レツ・タチバナ。『鉄甲鬼』がお前に執着していた気持ちが分かった。お前と闘うのは楽しかったよ。また会おう。つまらぬところで死ぬなよ?」
そう言うと、颯爽とその場を去っていった。ポーレン公国の軍もそれに合わせて退却していく。
烈はそれをぼーっと見送っていた。
(強かったな。『勇者』ガルランディ。今までで一番強かった。引き分けたのが不思議なくらいだ)
烈は折れた剣を見つめた。現代で届かなかった領域に、この世界で到達できたことで、烈は言いようもない達成感のようなものを感じていた。
「お~い! 三番弟子! 勝ったな~」
突然声のした方を烈は振り返った。そこにはカイエン公爵とそれに肩を貸されたモーガンがいた。
「カイエン公爵!? どうしてこんなところに!?」
「はっはっは! それもうやったぞ? 三番弟子。なに、ちょっとこっちの方が面白そうだと思ってな?」
快活に笑う予想外の人物の姿を見て、烈は口をあんぐりと開けていたが、時が進むにつれてなんだか可笑しくなって自分も大笑いしてしまった。
『魔剣』に敗れてから失っていた自分を、なんとなく取り戻すことができたような気がしていた。
「公王からいただいた我が宝剣が折れるとはな......」
目を閉じ、先ほどまで放っていた圧倒的な剣圧も霧散させ、もう戦闘する意思はないかのように、すっと折れた長剣を鞘にしまった。
その表情はどこか憑き物が落ちたかのようでさえあった。
一方の烈は満身創痍である。同じように折れた剣を握っているが、肩で息をし、手足に力はなく、立っているのがやっとの状態であった。心技体が一致する状態にまだ体が慣れていないのである。
その姿を見て、ガルランディはふっと笑った。
「どうやら、ここまでのようだな。互いに剣が折れては戦えない」
烈はそれでもまだ警戒は解かなかった。
「そうでもないぜ? ここは戦場だ。その辺に落ちてる剣を拾えばまだ戦える」
「強がりを言うな。もう戦う力なぞ残っていまい。特にあの領域に入ったのだからな」
「あんた、心技体の一致の極意を知っているのか?」
「心技体の一致? ああ、なるほど。心と技と体、その全てのバランスが完全に一致すると、各々の能力が互いを補い飛躍的に向上するというわけか」
「あんた、知らなかったのか?」
「うむ。戦っていて極限まで集中が高まるとあの領域に入れることはわかるが、どういう仕組みかは理解できていなかった。教えてもらって助かるよ」
なんと、烈の言葉だけでガルランディは立花流の奥義を理解してしまったのだ。烈は苦笑するしかなかった。
「まったく、天才どもときたらどいつもこいつも......」
烈の嘆息を、ガルランディは気に留めていない様子であった。それよりも周りの様子を見回していた。
「どうやら各所でも決着がついたようだな」
烈もつられて周りを見渡した。確かに、そこかしこで放たれていた殺気が落ちつきを見せ始めている。
「我らは負けたようだな。仕方ない。国に帰るとしよう」
「あっさりと帰るんだな。いいのか? 何も戦果をあげていないだろう?」
「まあな。だが、所詮我らは他国の人間。この程度の兵力では侵略した国を統治することなどできはないしない」
「ならなぜ侵略してきたんだ?」
「さてな。ただ......」
「ただ?」
「あのペルセウスという男。一度ポーレン公国での会談の場で見たことあるが、決して無能というわけではない。三大公爵と敵対することになろうと利するものがあるからこそ、このような戦略をとっているのであろう」
ガルランディは部下が連れてきた馬に跨り、退却の準備を始めた。そして烈の方を振り返り、涼しげな顔で笑った。
「レツ・タチバナ。『鉄甲鬼』がお前に執着していた気持ちが分かった。お前と闘うのは楽しかったよ。また会おう。つまらぬところで死ぬなよ?」
そう言うと、颯爽とその場を去っていった。ポーレン公国の軍もそれに合わせて退却していく。
烈はそれをぼーっと見送っていた。
(強かったな。『勇者』ガルランディ。今までで一番強かった。引き分けたのが不思議なくらいだ)
烈は折れた剣を見つめた。現代で届かなかった領域に、この世界で到達できたことで、烈は言いようもない達成感のようなものを感じていた。
「お~い! 三番弟子! 勝ったな~」
突然声のした方を烈は振り返った。そこにはカイエン公爵とそれに肩を貸されたモーガンがいた。
「カイエン公爵!? どうしてこんなところに!?」
「はっはっは! それもうやったぞ? 三番弟子。なに、ちょっとこっちの方が面白そうだと思ってな?」
快活に笑う予想外の人物の姿を見て、烈は口をあんぐりと開けていたが、時が進むにつれてなんだか可笑しくなって自分も大笑いしてしまった。
『魔剣』に敗れてから失っていた自分を、なんとなく取り戻すことができたような気がしていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる