異世界転移したら、死んだはずの妹が敵国の将軍に転生していた件

有沢天水

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『勇者』との決着

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 ガルランディは自身の折れて半分になった長剣をじっと見つめていた。

「公王からいただいた我が宝剣が折れるとはな......」

 目を閉じ、先ほどまで放っていた圧倒的な剣圧も霧散させ、もう戦闘する意思はないかのように、すっと折れた長剣を鞘にしまった。

 その表情はどこか憑き物が落ちたかのようでさえあった。

 一方の烈は満身創痍である。同じように折れた剣を握っているが、肩で息をし、手足に力はなく、立っているのがやっとの状態であった。心技体が一致する状態にまだ体が慣れていないのである。

 その姿を見て、ガルランディはふっと笑った。

「どうやら、ここまでのようだな。互いに剣が折れては戦えない」

 烈はそれでもまだ警戒は解かなかった。

「そうでもないぜ? ここは戦場だ。その辺に落ちてる剣を拾えばまだ戦える」

「強がりを言うな。もう戦う力なぞ残っていまい。特にあの領域に入ったのだからな」

「あんた、心技体の一致の極意を知っているのか?」

「心技体の一致? ああ、なるほど。心と技と体、その全てのバランスが完全に一致すると、各々の能力が互いを補い飛躍的に向上するというわけか」

「あんた、知らなかったのか?」

「うむ。戦っていて極限まで集中が高まるとあの領域に入れることはわかるが、どういう仕組みかは理解できていなかった。教えてもらって助かるよ」

 なんと、烈の言葉だけでガルランディは立花流の奥義を理解してしまったのだ。烈は苦笑するしかなかった。

「まったく、天才どもときたらどいつもこいつも......」

 烈の嘆息を、ガルランディは気に留めていない様子であった。それよりも周りの様子を見回していた。

「どうやら各所でも決着がついたようだな」

 烈もつられて周りを見渡した。確かに、そこかしこで放たれていた殺気が落ちつきを見せ始めている。

「我らは負けたようだな。仕方ない。国に帰るとしよう」

「あっさりと帰るんだな。いいのか? 何も戦果をあげていないだろう?」

「まあな。だが、所詮我らは他国の人間。この程度の兵力では侵略した国を統治することなどできはないしない」

「ならなぜ侵略してきたんだ?」

「さてな。ただ......」

「ただ?」

「あのペルセウスという男。一度ポーレン公国での会談の場で見たことあるが、決して無能というわけではない。三大公爵と敵対することになろうと利するものがあるからこそ、このような戦略をとっているのであろう」

 ガルランディは部下が連れてきた馬に跨り、退却の準備を始めた。そして烈の方を振り返り、涼しげな顔で笑った。

「レツ・タチバナ。『鉄甲鬼』がお前に執着していた気持ちが分かった。お前と闘うのは楽しかったよ。また会おう。つまらぬところで死ぬなよ?」

 そう言うと、颯爽とその場を去っていった。ポーレン公国の軍もそれに合わせて退却していく。

 烈はそれをぼーっと見送っていた。

(強かったな。『勇者』ガルランディ。今までで一番強かった。引き分けたのが不思議なくらいだ)

 烈は折れた剣を見つめた。現代で届かなかった領域に、この世界で到達できたことで、烈は言いようもない達成感のようなものを感じていた。

「お~い! 三番弟子! 勝ったな~」

 突然声のした方を烈は振り返った。そこにはカイエン公爵とそれに肩を貸されたモーガンがいた。

「カイエン公爵!? どうしてこんなところに!?」

「はっはっは! それもうやったぞ? 三番弟子。なに、ちょっとこっちの方が面白そうだと思ってな?」

 快活に笑う予想外の人物の姿を見て、烈は口をあんぐりと開けていたが、時が進むにつれてなんだか可笑しくなって自分も大笑いしてしまった。

 『魔剣』に敗れてから失っていた自分を、なんとなく取り戻すことができたような気がしていた。
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