異世界転移したら、死んだはずの妹が敵国の将軍に転生していた件

有沢天水

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残る近衛軍団長

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 ドイエベルン王国の首都ベルン、その王宮の一室で二人の男が机を挟み、席に座って顔を突き合わせて話をしていた。

 どちらも武の匂いがする男である。

 片方は白髪に白髭の壮年の男である。服の上からでもわかる鍛えられた体と厳格な雰囲気が、彼の威圧感を一層大きく見せていた。まさに歴戦の騎士といった感じである。

 もう片方の男は体格は同じくらいだが、兎に角粗野な雰囲気であった。無造作な茶髪の髪に無精ひげを生やし、くあっと欠伸までしている。山賊の頭といっても信じてしまうものもいるだろう。

 見た目は対照的な二人であったが、二人とも同じ近衛軍団、しかも五人しかいない軍団長に位置する人物であった。

「近衛総司令が討ち取られましたけど、第一軍団の様子はどうですかい? ベッカー殿」

 粗野な男の方が世間話程度に話を振った。

 話を振られた壮年の男---近衛軍団第一軍団長シュバイン・ベッカーは目の前に置かれたお茶を飲みながら、静かに答えた。

「特に変わったことはないな。与えられた任務をこなすだけだ。お前の所はどうなのだ? ガーランド」

 粗野な男の名はガーランド・オラウス。近衛軍団第五軍団の軍団長である。

「うちも変わりませんね。元々我々は外様の集まりですからね。権力争いには対して興味もなく」

「くっ。指揮官の性格をよく反映しておるわ」

 シュバインは皮肉気に笑った。

「それはお互い様でしょう? 実際、無能な近衛総司令は討ち死に、近衛軍団の第二軍、第三軍はに吸収されたわけで、実質近衛軍団は半壊しているわけですが、シュバイン殿は総司令に就任しないのですが」

「馬鹿な......私より相応しい方がいるというのになぜその地位に就けようか」

「レーム候のことですか?」

「まさに。あの方こそ近衛総司令に相応しい。私は軍団長の地位がせいぜいよ」

「そういえばシュバイン殿は長年レーム候の副官を務められてたのでしたな。当時からあれほど人望があったので?」

「うむ、無論だ。不思議な方でな。戦場での烈将ぶりとは裏腹に、稽古場ではよく冗談などを言っては人をからかっているような人であった。今もお前や第四軍団長のような曲者がおるが、当時の近衛軍団も中々のものでな。それをよくまとめておったわ」

「は~なるほどね。流石は真の近衛総司令ですな。そんな近衛総司令をクビにして、バウワーなんて男をその地位に就けた現政権を支持したのはなんでです?」

 シュバインはガーランドをじろりと睨んだ。

「何度でも言おう。近衛軍団の役目は陛下の剣であることだ。そこに己の意思はない」

「近衛総司令の任は断ってるのに?」

「うぐっ! な......何事にも例外はある!」

 ははっとガーランドは苦笑いしていた。

「だが、まあ俺もあの人の下でなければ近衛軍団の軍団長なんて面倒なことしてませんからね。似たようなものですわ」

「お前こそ、なぜ中立派なんて気取っている? ペルセウスなんて輩、お前がもっとも嫌いな役人であろう?」

「ちょっとちょっと。今の人に聞かれたらまずいですよ?」

「ふんっ。構わんわ。私はあの宰相殿に忠誠を誓っているわけではない」

「なんとまあ、この親爺は......」

「やかましい。それよりどうなんだ? お前ら第五軍は元々は外様の集まり。陛下への忠誠もなければ、殿下のカリスマ性にやられる口でもなかろう。なら、ペルセウス憎さに殿下に味方しそうなものだ」

「まあ、そうなんですがね......」

 ガーランドはぽりぽりと頬を掻いた。どうしても理由は言いたくない様子だ。

 その様子にシュバインははあっと息を吐いた。

「まあいい。それよりも、ボンド城を取り囲んでいた連合軍が殿下に敗れたらしい」

「なんと!? 『勇者』もですかい?」

「うむ。しかもその『勇者』を破ったのは例の殿下陣営に参加した謎の剣士とのことだ」

「信じられませんな。『勇者』を倒せるとしたら殿下かカイエン公だけかと思っていたのですが......」

「そうであろうな。だがこれでハイデッカー公も殿下の陣営につくであろう。いよいよもってこのベルンが戦場になる日も近いというわけだ」

「なるほど。これでいよいよ陛下は不利になりましたかな?」

「いや、そうでもなさそうだ。またペルセウスをはじめとしたものたちがこそこそと何か準備を始めている。どうやらまだ何か手があるようだし......」

「だし?」

「うむ、どうやら東方三将も動くらしい」

「ほう? あの宰相殿子飼いの?」

「ああ、東方の自分の領土から呼び寄せるとのことだ」

「なるほど。なら陛下側にも勝ち目はまだ残されていそうですね」

「なにより陛下自身が一騎当千の強者だからな」

 そう言うと、シュバインはゆっくりと席を立った。

「お前も最後の戦いまでの身の振り方を考えておくんだな」

 颯爽とマントを翻して出て行く、シュバインをガーランドはやれやれと見送って、すっかり冷めてしまった自分のお茶をすすった。
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