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プロローグ

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芯とは

わたしには芯がある
残念なことに自負している

 まだこの世界が美しいと感じていた頃のこと
「俺のことを育ててくれたり大切にしてくれたり、そんな人のために俺はいきたい」
そうだ
一生懸命、生きた
人に助けられたら、その倍は助け返した
見返りがなくとも助けた
貧しくはない裕福とも言えないが、皆期待していた。家族親戚たちの思いを背負い勉強をし、家事を手伝い、友には勉強を教えて…どれだけきつくてもなんとかなると。そう思う人がかっこいいんだって、
それが美しい人だと感じたから
続けることができた。
 高校に通うようになった。
頭痛がする、しない日などない、今日も生きてる。窓の外には車が走り、歩く人もたくさん。この世界には社会があり、法律があり秩序がある。この社会で生きていくためにはルールを守る必要がある。つまり知識である。自分を守る、大切な人を守る、そんな知識が必要。俺は正しい知識を求める、そのためにはどんなことも厭わない。もちろん常識の範囲内である。教えてもらう。お金を払っているのだから当然だ。どんなことでも疑問に思えば聞く。
しかし、教えてくれない。どんな先生も答えられないからか、ウザがったのか、嫌いなのか…いずれにせよ曖昧な答えをする。
は?ふざけるな、そんなんで先生なんて名乗るんじゃない。どんな仕事も一生懸命にやれよ!社会に出ている人だけが命に関わると思うなよ?ここにいる生徒は皆、そういうところに行くんだぞ?つまりな?お前たちが教えることが曖昧だったりそれが間違えていたりする時、救える命が減るかもしれいんだぞ!…テメェらに罪悪感はないんだろうよ、関係ないとか思ってるんだろうよ。今こんな回答するくらいだし。だからダメなんだよ、何が勉強しろだ?口だけも大概にしろ

途方に暮れた
夢を語る大人は皆、それを実践していない
夢を叶えようと奮闘するものを支えるつもりなど毛頭ない。
誰も彼も俺を面倒見きれないんだと
そう付け替えしたのだ。
「自分で調べてみなさい、ほら社会に出たら自分で調べないといけないのよ?それも社会の練習。あ、分かったら先生にも教えてね」
笑って誤魔化すな
俺もう…無理だ
こんな奴ら
先生
なんて呼べない

でも、社会とは上のものについていくもの
習わなきゃ上にいけない
従わなきゃ上にいけない
間違いを正してばかりでは上にいけない
人付き合いなんてものが評価されるから上にもダメな人はいるのだ

もうわからん

 そんな時に先生と呼べる人
恩人…
いや、恩神?
神という一文字で十分伝わるだろう
彼は
殺人の神
そう名乗った
人に対してそう語るか…
別に臆することはない
タイミングなのだろう。
しかし彼は
神は人を殺せない
人に教授し、行く末を見守るもの
どの神も必要である
そう言った
 俺は殺人の神が何故必要なのか聞いた
神は信仰されるもの、されたもの。
誰がそんなもの求めたのか…
「人は苦しみや悲しみがなければ
生きていけないんだ。
それが災害や事件などそれがある時
人は悲しみ、手を取り合い、前向きになる。成長につながる。
しかし、その悲しみがなければ、間違える。人は自らそれを生み出したがる。平和だから大切なものも見えてこない。ともいうが…
君の考え方は好きだよ
大事なのは考え方だ、人は心というのを持っているから、まぁ強制はしないさ」
「…」
「こんな原石はそうそうない」

 人を美しくする力
目の前に広がる美しい景色
瓦礫に埋もれなくものも火傷を負いながらも助ける側に回るものも骨が折れているものも喪失感で溺れるものも。
助けを乞い、その助けに必死に寄り添い手を伸ばす。必死さが伝わる。命が伝わる。
これはドラマやアニメの偽物ではない
あぁ素晴らしい。
何度見ても
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