上 下
6 / 9

わがまま

しおりを挟む
は?何が起こったのだろうか…
背中が熱い
彼女はまだ腕の中にいる
息をしている、よかったと安堵した。
?「あれ?体繋がってる?」
感情のこもっていない言葉が耳に触る。
僕は奴を睨んだ。
奴は自身の背丈ほどの太刀を両手に握ってこちらを見ている。
表情ひとつ変えやしない、無表情な奴。
?「ん?肝が座ってるね。
ねぇ君知ってる?そいつ人殺し。人を殺さないと自分が生きていけない奴。」

…そうなのか?だとしても奴に言われる筋合いはない。考えに怒りの感情が混じる
「お前が彼女の姉を殺したのか?」
?「それはちょっと教えることができないかな」
彼女は声を堪えるように泣いている
体を小さくして僕の身体に隠れるように。
僕の服を握る手に力が入っている
くしゃくしゃの顔を強く僕の胸に押し当てている
「なら、質問を変える。何故この子を殺そうとする?」
?「は?人を殺すやつは悪い奴だろ?だから殺す。それだけ。子供の君でも分かる。別に殺すのが趣味とかそんなのじゃないよ?僕は仕事だから。依頼なんだよ、これで幸せになる人がいるんだ。僕はそれに従うだけ。」

?「昨日は1人でよかったのに、今日はその逃げ出したガキも殺せってよ。困ったもんだ。てか、君は人間だろ?殺せと依頼されてないし、君は殺さないさ。君も大人になれば分かるよ。社会ってこんなもんだよ」
…彼の言葉や今までのことをまとめると彼女は人じゃない。そして、人を殺さないと生きていけない。
…けど、どこか納得がいかない。
理由はうまく口にできないけど、この男の言葉よりも彼女のことを信じたいのかもしれないし……。

けど、僕は今、生と死の狭間にいる。
命がかかっている。
…僕は生きることに対して苦しさを感じていた。だから、何をしても心から楽しむことなんてなかった。常に苦しいと感じていたから。でも、誰かの楽しむ姿、楽しく生きる姿を見ることによって僕は生を感じるようになっていた。
彼女は死を選ばなかった。
今も生きている
人のように普通に塾に通って、普通に暮らそうとしている。僕はそれを努力と呼ぶ。その精神をすごいと讃える。
姉が死んだそれでもなお、今ここにいるのだから。
この子は今死ぬべきではない。

「僕はあなたに反抗する
あなたが気に入らないから
あなたに僕は負けない
あなたのような嘘つきには負けない
…“お前”は人である僕を殺すことを躊躇わなかった」
しっかりと奴を見つめる
逃れられないこの現実を受け止める。
僕は呼吸を整える
彼女から手を離す
「少しだけ待っててください」
「ごめんなさいこんなことに巻き込んでし…」
鼻に人差し指を当てる
「シーっ、謝らないで。
君は何も悪くない
何が起きても君のせいじゃない」
僕は奴と向き合う
?「え、刃向かう気?可哀想に、何も学んでこなかったんだね…仕方ない、大人に刃向かうってことがどう言うことか教えてあげるよ。大人とは社会そのものだよ?つまり、悪いのは君。
死ね」
彼はまた同じように構えた
しおりを挟む

処理中です...