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決死

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何度切られただろうか
目でひたすら奴の姿を追う
が、見えるのは刃先が体に触れる少し前のみ
かわしきれずに切られる
足場も悪い、動きにくい
奴はそれでも早い
雨の音や雨粒で聴覚も視覚も遮られる。
「ハハ、最高だね
仕事だけじゃ刺激が足りないんだよ
生きるには刺激がなきゃいけない
お前は最高のおもちゃだ」
足がもつれる
…ついに仰向けに倒れてしまった
雨を顔面に受ける
見えるのは灰色の空だけ
【頼りない】
本当に何もできないんだ僕は。
期待をさせるだけさせて
何もできずに終わる
能力がなんとかかんとかって彼女は言ってた。もしかしたらピンチになったら…とか自分なら何とかなる!とか過信せずに彼女を逃すことを考えるべきだったのだ

?「おうおう、もう終わりか?」
馬乗りになってきた
今度は殴ってきた
奴は楽しんでる
…もう、別に死んでもいいか。
彼女は逃げることができたであろう…
待っててなんて言われても逃げたほうが健全でそれが当然の行動だ。
でも、なんとなく分かる
彼女はずっと逃げずに僕を見ている
信じて待っている。
このまま死んでいいのだろうか…
このまま「逃げろ」って叫んでいいだろうか…
彼女の姉もこうして死んだのだとしたら。

おそらく目にしたんだ。
彼女は目の前で大切な人が死ぬ瞬間を

死を二度も見せることになる。
?「守るだけじゃ何もできねぇぞ笑」
守るしかできない
…わけじゃない

近くにあったガラスのかけらを手に取り、先に膝を裂いた。
奴が膝の痛みに反応している瞬間、攻撃がなくなる。一瞬のすきに奴の眼球にガラスを突き立てた。そのまま奴の両目を裂いた。
?「ぐぅ……クソガキがっ!」
奴は手に刀を取りとどめを刺そうと振りかぶった。
殺気に満ちたその刀は、躊躇うことなく振り下ろされた。
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