モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜

文字の大きさ
49 / 112
会談―午前―

05

しおりを挟む


「俺はむしろ、お前について聞きたいんだけど……柚希」
「英雄様ってば、お兄さんに質問? いいよいいよ、何でも聞いて」

 アルビオンがピクピクと顔を引きつらせながら言う。

「その姿が前世の姿という事は、今はスライムが本体という解釈でいいの?」
「そーそー。前世の自分をイメージして、その姿に変身してるの」

 柚希がコクコクと頷く。
 この大きなリアクションは確かにあの賑やかしいスライムだ。

「だから、ほら」

 柚希がクルンと回ると、手品のように彼の姿が一変した。

 クセのない肩まで伸ばした長い黒髪をハーフアップにして、金色の瞳に美しいけど冷酷な印象の悪人面。
 白い司祭服にストラを纏った俺……ヴァニタス・アッシュフィールドの姿へと、柚希の姿は変わった。
 どう見ても鏡に映った俺の姿だった……喋り出すまでは。

「お兄さんが見てる人や知ってる人ならこんな風に変身しちゃえるよ。スピルス君見て見て、ヴァニタス君だよ。惚れちゃう? 欲情しちゃう? お兄さん困っちゃうなぁ……」

 たちまち冷酷な悪人面が破顔して、ほにゃらっとした表情になる俺に変身した柚希。

「ヴァニタス、わかりますか? 同じ外見でも中身がコレだったら、私は貴方に惚れ込みません。魔王のご機嫌取りの役目も貴方に全部押しつけて、私はラスティル王国を離れます。外見はあまり関係がないんですよ。中身が貴方だから、私は貴方を愛しているんです」

 スピルスは俺に変身した柚希を指差しながら、良い笑顔で熱弁する。
 しかも真っ正面からの告白も込みで。
 俺は恥ずかしくて、顔が熱くて堪らなかった。

「俺……も。中身がお前だから好き。お前に会えない間に柚希がお前の姿に変身してくれたとしても、やっぱり俺が好きなのは、中身も含めてスピルス・リッジウェイだから」
「あれ、お兄さんダシにされてる? 惚気話のダシにされてる?」

 柚希は再びくるりと回ると、前世の自分の姿に戻る。

「スライムは不定形だからね。決まった形はないし、逆に言えば、中身の俺が見知っていれば、どんな姿にもなれる」
「この前の雨の日は、腕を刃に変えたってこと?」
「アルビオン君は頭が良いね。そーそー、右腕が透明になって消えたように見えたかもしれないけど、あの時は右腕を透明な刃に変えたんだ」

 スッと柚希の姿が消える。
 スライムの姿もない。

「今お兄さんは前世の人間の姿のまま、透明化してる。もちろんスライムの姿でも透明化は可能だし、片腕や両腕を透明化したまま刃に飼えて攻撃することも可能。スライム状態だと触手みたいに刃をウニュッと伸ばして攻撃したりもできちゃう」

 パチンと指を鳴らすと柚希は姿を現した。

「透明化は他のスライムでも出来るよ。変身は多分お兄さんじゃないと出来ないかなぁとは思うけど」
「隠密行動にはピッタリのスキルなんだけど……中身が伴ってないなー」
「ちょ……3人揃ってお兄さんの中身全否定? お兄さん泣いちゃうよ。ワンワン泣いちゃうよ」
「むしろこの程度のいじりで済むだけ感謝してください。ヴァニタスの服の中に入っていたというだけで、刺身にされたって仕方がない大罪人だと思っていますよ、私は」

 柚希とアルビオンの会話に、笑顔を貼りつけたスピルスが割り入って行く。

 そ、そうか。
 俺の服の中に入っていた時はスライムだから仕方ないなーと思っていたんだけど。
 だからアイツが俺の身体を這い回ったりしても仕方がないなーと思ってたんだけど。
 でもアレはよく考えたらこの柚希なワケで……。

 気づいた俺が真っ赤になって俯いて顔を伏せ、ソファの上で体操座りをすると、スピルスが多分何かすごい魔法を詠唱しかけて、慌てたアルビオンに止められていた。

 想像してた緊張感溢れる会談と違う。
 それもこれも、だいたい柚希のせい。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。  新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。  ___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。  ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。  しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。  常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___ 「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」  ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。  寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。  髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?    

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

処理中です...