モラトリアムは物書きライフを満喫します。

星坂 蓮夜

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会談―午後―

01

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 食事を挟んで午後の会談。
 広いリビングで、午前中のメンバーにセオドアとシルヴェスター、そしてスヴェンが加わった。

「……さて」

 司会進行はスヴェンが勤めるようだ。

「まず午前中の会談の報告を聞きたいところですが……」

 セオドア、シルヴェスター、スヴェンの視線が柚希に注がれる。
 まぁ、そうなるな。
 柚希は午前中のテンションから一転、静かに微笑み口を開く。

「休憩中に小耳に挟んだでしょう? 私はセオドア陛下とヴァニタスの決闘の際に地下水脈に流れ着いた魔物です」

 決闘……の一言にスヴェンが眉を寄せた。
 俺とセオドアに色々言いたいことがあるのだろうが、とりあえず決闘の件については今は沈黙を守ることに決めたようだ。

「予言では王に成り代わった魔物が圧政を強いるそうです。貴方は変身能力があると聞きました。予言の魔物とは貴方のことではありませんか?」

 すっかり忘れていた。
 ゲーム「アルビオンズ プレッジ」ではゲーム開始時点でこの世界の7つの王国の国王は殺され、魔王配下の魔物に成り代わられ、圧政を強いられている。

 王を殺し、王に成り代わる。
 それを達成できるスペックを、柚希は持ち合わせていた。

「私が予言の魔物であるなら、今この場に私はいないでしょう。この会談の隙を狙って、ユスティート王を殺害しに向かいます」

 スヴェンが苦虫を噛み潰したような表情をする。
 言われてみれば、確かにそうだ。
 スヴェンがこの屋敷に来ているということは、王の守りは手薄、ユスティートという王将が無防備になっているのと同義だ。

「魔王は配下の者を各国に忍び込ませているのではありません。各国の、配下になりそうな者に目をつけて接触を図るのです。予言では魔物と呼ばれていましたが、正確には“生まれる前の記憶を取り戻した者”です。以降、この存在を『転生者』と呼ばせていただきます」
「生まれる前の、記憶?」

 シルヴェスターがポツリと呟いた。
 この世界は元いた世界で言うならば、中世ヨーロッパに似た世界だ。
 アルビオンのように視える者でない限り、輪廻転生という概念はなかなか受け入れられないだろう。

「この場で『転生者』に該当するのは、私、ヴァニタス、スピルスの3名です。私を含めた3名の転生者はこの世界に生まれ落ちる前の記憶を保持しています。更に、私の今のこの姿や柚希という名は、この世界に生まれ落ちる前の姿と名前です。この世界での私はあくまでもただの魔物……スライムです。セオドア元陛下は本来の私の姿をよくご存じでしょう?」

 柚希はセオドアににっこりと微笑みかける。
 セオドアは一瞬口をぱくぱくと動かしたが、また無表情に戻る。
 流石は元国王だ。

「殆どの転生者の過去は凄惨なものであったり、平穏な生涯を送ってはいても何らかの強い悔恨を残しています。だからこそ、魔王の配下に下りやすいのです。魔王には各国に生まれ落ちた転生者の存在が把握できます。また、拠点を離れることなく各国の転生者と接触を図ることが可能です」

 柚希はそこまで説明すると、スピルスに視線を向けた。
 スピルスは頷くと、リビングに集まった全員を見回した。

「正確に言うと彼──柚希は転生者ではあるのですが、魔王には柚希の居場所を把握することはできませんし、彼と接触を図ることもできません。柚希は魔王の配下ではありません。ある意味魔王と対等の立場なのです。この国……ラスティル王国で魔王が把握している転生者は2名です」

 スピルスは俺を見て、そっと瞳を閉じると、何かを決意したように見開いた。

「ラスティル王国在住で、魔王が居場所を把握している転生者は私とヴァニタスの2名です。そして魔王は、ヴァニタスではなく私に接触を図っています。私自身は魔王の配下に下ったつもりはありませんが、現在も魔王と繋がっているのは確かです」



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