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罪と罰

04

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「あーあ、失敗してしまいました」

 赤い髪に赤い瞳の少女が地面に降り立つ。

「ライラ」
「どうしてバレたんでしょう? 私がこの山小屋を見張っていたことが……」
「何度も同じ手は食わないさ」

 ジェラルドが口にする。

「同じ手? 貴方とは初対面ですが?」
「こっちは初対面じゃないのでね」
「意味がわかりません」

 俺も、ジェラルドから説明を聞いていなければ意味がわからなかった。
 ジェラルドは時間逆行という特異な魔法を使用できる。
 ジェラルドによると、このラスティル王国は既に何度も滅びているらしい。
 ラスティル王国の滅びから、ジェラルドは何度も時間逆行してやり直しているそうだ。
 それは俺たち転生者とはまた違う、辛い道程だっただろう。

 そのジェラルドから、俺たちはこのライラの罠の可能性について聞いた。
 だからあらかじめ準備をしていた。
 だが、ライラの魔力は桁違いだった。
 …………セオドアがいてくれて正直助かった。

「ライラ、君……お兄さんも殺す気だったよね?」

 両腕を刃にして構えながら柚希が言う。

「あら? 柚希さんいたんですか? 全然気づきませんでした」
「君にとってお兄さんは邪魔者ってことかな?」
「まぁ、そうですね。魔王様にとって大切な人でも、私にとっても大切な人とは限りませんもの」

 ライラはクスクスと笑う。

「でも、見事に失敗してしまいましたね」
「捕らえろ、ジェラルド」
「はっ!!」

 ジェラルドがライラを捕縛しようとする。
 しかし、ライラはふわりと空中に浮いた。
 スピルスが呟く。

「そうか、重力魔法。彼女は重力を自在に操れるんだ」
「正解です。ラスティルの大賢者様」

 ライラが笑顔を浮かべる。

「とはいえ、今日はこのあたりで引かせていただきます。先程の攻撃でかなりの魔力を消費しましたもの」
「待て!!」
「これだけは覚えていて。魔王軍はいつか必ずラスティル王国に報復するわ。それが今回のような襲撃になるか、他国を動かしての戦争になるかはわからないけれど」

 ライラはそう言い残すとふわりと消えた。

「俺は……利用されていたのか?」

 アルビオンは顔面蒼白だ。
 そんなアルビオンの背中をシルヴェスターがただ黙って撫でている。

「ジェラルド、ありがとう」

 その言葉に、ジェラルドは首を横に振った。

「俺が知るのはここまで。これからは、俺の知らない物語だ」

 ジェラルドは、ライラが消えた空中を見上げながら呟いた。

「今ここは、やっと辿り着いた奇跡の世界。絶対に誰にも破壊させない。絶対に」



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