出〇転生~異世界でも充電させてもらえませんか?~異世界には電気がなくてヤバいよヤバいよ~

明石竜

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第十三話 この国のコスプレ祭りに参加したけど、俺のコスプレもやはりいてヤバいよヤバいよ

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 ある日の夕方、コリル宅の夕食団欒中にこんな会話が交わされていた。
「観光ガイドブックで知ったんだけど、この国にも近々コスプレ祭りっていうのがあるみたいだな」
「今度の日曜日にあるよ。凄く楽しいお祭りだよ。世界中からコスプレ好きの人達が集まって来るんだ。わたしやお友達も毎年参加してるの」
「そうなんだ。俺も出てみたいな」
「絶対出るべきだよ。でも哲朗おじさん、コキアダワさんのコスプレだけは絶対にしちゃダメだよ」
「それは分かり切ってる。今までの経験で」
「哲朗さんのコスプレをされてる方も、今年はかなり増えてると思うわ」
「それは俺も嬉しいな。日本にもコミケとかのコスプレイベントがいっぱいあるよ」
「日本のも楽しそうだね。わたしは今年はケットシーのコスプレするんだ」
「わたくしは、魔女さんよ」
「二人ともとても似合いそうっすね。俺は何のコスプレしよっかな」
「哲朗おじさんはそのまんまでもコスプレになってると思うよ」
「そっか」
「コスプレ以外にも動物のショーとか、手品ショーとか、コンサートとかいろんな催しがあるんだ。当日は会場の外でも街中コスプレの人だらけだよ」
「めっちゃ楽しみだ」

      ☆
 
開催日当日。
「おう! めちゃくちゃ似合ってるじゃないっすか!」
予定通り、コリルはケットシー、コスヤは魔女のコスプレ姿をお披露目。
「俺は俺自体がコスプレみたいなもんっすから、このままでいきます」
哲朗は普段通りのサロペットにスイカヘルメット姿になって、三人揃ってドラゴン風の生き物に乗せてもらい、お祭り会場の市民憩いの公園へ。
「凄い賑わいだよ、東京のイベント並みだよ。何万人いるんだろう?」
 哲朗は幼い子どものように大興奮。
 屋台もいっぱい出ていた。
「哲朗だ!」
「哲朗さんはそのままなんだね」
 しょっちゅうお風呂に入りに来て芸をするようにせがんでくるコリルのお友達も、可愛らしい魔物の着ぐるみや、騎士やシスターやメイドのコスプレ姿の他、
「見て見て、ヤバいよヤバいよ」
哲朗のリアルなラバーマスクを被った子もいた。
「俺がいっぱいいてヤバいよヤバいよ」
 周囲を見渡してみると、他にも大勢。
 さらには、
「ボビーじゃねえよ。ビーボだよ。哲朗、どう? 似てる?」
「アハハハッ、そっくりだよ。俺もそのお面欲しいな」
「あそこの屋台で買えるよ」
「本当だ。買って来ようっと♪」
 ビーボのリアル過ぎるラバーマスクを被った人々も大勢いた。
 目を大きく見開いて、素っ頓狂な表情になっている時のがそっくりそのままに再現されていたのだ。
「みんな、恥ずかしいから、オレのコスプレなんかやめてくれよ。オレはお笑い芸人じゃなくてただの一般国民なんだよ。オレの顔までお面にするのは辞めてくれよ。オレみたいな顔の奴らが街中にいっぱいいたら不気味だし怖いだろ。まあ、利用料が貰えたのは嬉しいけどな」
 ビーボは顔を手で覆って、照れ臭がっていた。
「やあボビー、じゃなくてビーボ。おまえも来てたんだな」
 哲朗はビーボのラバーマスクを被って話しかける。
「だからそのお面被らないでくれよぉ~」
 ビーボはますます恥ずかしがってしまう。
「俺は俺のお面被ってくれる人いっぱいいてくれる方が嬉しいけどな」
 哲朗はすぐにビーボのラバーマスクを脱いであげた。
「ビーボさんも哲朗さんも、飴細工にもしてみたよ。哲朗さんのは栗味、ビーボさんのはコーヒー味で美味いよ」
 屋台の獣耳なお兄さんが勧めてくる。
 二人を模った飴細工が数十本ずつ並べられていた。
「オレ、飴細工にまでなってるのかよ!」
 ビーボは模られた表情そっくりな素っ頓狂な表情になる。
「そっくりじゃん。共食いしまーす。おう、めっちゃ美味いじゃん」
 哲朗は自分を模った飴細工をぺろぺろ舐める。
「恥ずかしいけど、めちゃくちゃ美味いじゃん。職人さんの技術力凄過ぎるんだよ。オレにも作り方教えて欲しいよ」
 ビーボも自分を模った分を食してみて照れ笑いだ。
「この子にも哲朗とビーボさんの飴細工一本ずつ下さい」
「まいどあり」
 お客さんで、騎士のコスプレをされていたエルフ耳なお姉さんがご購入。
 そのお方は、ダリーカオジィも一頭連れて来ていた。
「あいつにそっくりな動物だ。この子も芸をやるんっすね」
「はい。これからお見せ致しますよ。ボルノ君、どうぞ」
 お姉さんは右手に哲朗、左手にビーボの飴細工を持ち、ダリーカオジィのボルノ君に差し出す。
 するとボルノ君はその飴細工を交互に超高速舌ペロで舐めていった。
「おう! 俺の顔が瞬く間に溶けていくよ」
 哲朗は楽しそうに眺める。
「オレ、悲しい気分になっちゃうよ。特徴的に無理なんだろうけど、もっと味わって食えよ」
 ビーボはしょんぼりした表情だ。
「ねえパパ、どうしてお外に出るといつもバカみたいなフリしたしゃべり方とリアクションをしてるの?」
「バカのフリじゃねえよ。パパは人前に出ると、どうしてもあがってこんな感じになっちゃうんだよ。子どもの頃からあがり症なんだよ」
 五歳くらいに見える息子からのピュアな質問に、ビーボは悲し気な声で少し焦り気味に答える。
「ふぅ~ん。お外のパパの方が面白くてボクは好きだよ」
 息子は一応納得してくれたようだ。
「ボビーもテレビに出る時と普段とでキャラが変わるから、そこもそっくりだな。ビーボ、お子さんもいらっしゃってたんっすね。ビーボにそっくりだ」
 哲朗はくすくすと笑う。
「家では真面目な学者さん風、人前ではおバカなお笑い芸人みたいになっちゃう、そのギャップがこの人の魅力なの」
 奥さんもご一緒していた。メイドさんのコスプレ姿、ブロンズヘアー、青い瞳でフランス人形っぽく可愛らしかった。ウサギっぽい耳と尻尾もついていた。
「めちゃくちゃ美人さんじゃないっすか。俺の嫁よりもずっとかわいいっすよ」
 哲朗は満面の笑みだ。
「哲朗、そんなこと言うと奥さんに怒られるぞ」
 ビーボは微笑み顔で忠告する。
「哲朗、パパは哲朗のこと、いっしょにいると楽しくなるし、他人への思いやりもあるすごくいい奴だって褒めてたよ」
 ビーボの息子は満面の笑みで伝える。
「そっ、そんなこと言ってねえよ」
 ビーボは俯き加減で焦り気味に呟く。
「俺のことは、なじってもらった方が嬉しいっすよ。嫌われてなんぼの芸人っすから」
 哲朗はほんわかと笑った。
「オレもう帰りたいよぉ~」
「ビーボさん、子どもみたいなこと言わないの!」
 ビーボはいたたまれなくなったのか、この場から逃げるように走り去って行った。
 奥さんは微笑ましく見送る。
「夫婦仲、めちゃくちゃ良さそうっすね」
「はい、ビーボさんとっても家事上手で心優しいですし」
 哲朗ににやけ顔で突っ込まれ、ビーボの奥さんは頬をほんのり赤らめたのだった。
 俺のいた世界のビーボそっくりなボビーは奥さん叩いて逮捕歴あるけどね。まあ、夫婦仲は良いけど。
 哲朗はふふふっと微笑む。 
 付近では、先ほどのお姉さんによるダリーカオジィショーが始まった。
「これからボルノ君の超高速ペロペロで、この氷を一気に溶かしていきまーす」
 大好物だという木の実の数々が分厚い氷で固められていた。
 ボルノ君は巨大な氷の横に移動するや、すぐに超高速ペロペロし氷を溶かし始める。
「俺もやるぞ!」
 哲朗は飛び入り参加。反対側から超高速ペロペロを真似して氷を溶かしていく。
 まもなく、
「くっついちゃいました。ヤバいよヤバいよ」
 哲朗の舌が氷にぴったりくっついてしまった。
 アハハハハハハハッ!
 観客から大きな笑い。
「哲朗おじさん、表情も面白ぉい!」
「ダリーカオジィに挑むなんて無謀だよね」
 コリルとお友達も大笑いしていた。
 ボルノ君は超高速ペロペロを続けたまま、あっという間に木の実に到達。
「あら? 普段ならそのまま木の実に舐めつくところですが、なんと、哲朗さんの方まで進んで溶かしてくれようとしています。ボルノ君、優しい」
 ダリーカオジィショーのお姉さんはちょっぴり驚く。
 パチパチパチパチパチッ!
「さすがボルノ君」
「頑張れ! ボルノ君」
 観客から大きな拍手喝采が。
 ボルノ君は哲朗の舌の寸前のところまで超高速ペロペロで進み、哲朗の張り付いていた部分も溶かし切った。
「焦ったぁ~。ボルノ君、サンキューベリーマッチ。お礼に番組オリジナルのシールを差し上げます」
 解放された哲朗は、例のシールをボルノ君に差し出す。
「あーっ、ボルノ君、それは舐めちゃダメだよ。ヤバいよヤバいよ」
 イラスト部分が超高速ペロペロされてしまい、瞬く間に色落ちしてしまった。
 哲朗は苦笑い。
 アハハハハハハハッ!
 観客からも大爆笑だ。
「ボルノ君、それは餌じゃないですよ」
 ダリーカオジィショーのお姉さんはボルノ君を抱きかかえて優しく注意してあげた。
木の実の方へ移動させると、ボルノ君は一心不乱に木の実を超高速ペロペロで舐め尽していく。
「「「「「ぃやぁ~ん、きっも~い」」」」」」
 アハハハハハハハッ!
 観客からまたも大きな笑い。
 キモいと言いつつ楽しそうにイラストに描いている人も多くいた。
「表情も本当、あいつそっくりだよ」
 哲朗も大笑いしてしまう。
 ともあれ、大好評でダリーカオジィショーは幕を閉じたのだった。

「哲朗おじさん、わたしはお友達とママといっしょに衣装作り体験コーナーに行くんだけど、哲朗おじさんはどうする?」
「俺は会場内全部見て回りたいから、一人で周るよ」
「そっか。じゃあ、最後はあそこの鐘の前で合流しよう」
「了解」
 こうして、哲朗はコリル達と一旦別れることに。
           ☆
「日本でお馴染みのひょっとことかおかめとか、天狗とか、一つ目小僧とか、能面とか、鬼とかのお面被ってる人はさすがにいないか。ドラゴンの着ぐるみ着てる奴らもいるよ。格好いい! 魔女もヤバいよ。俺のいた世界じゃ見たことない動物や、ゾンビやドラキュラピエロやミイラや海賊や騎士や、ベネチアンマスク被ったコスプレもわりといるなぁ。さすがヨーロッパ風って感じだな。王様のコスプレもいるじゃん」
 哲朗は屋台の料理を食べ歩きもしつつ会場内を巡っていく。
 コスヤさんは衣装だけであったが、いかにも悪い魔女って感じの老婆のお面を被っている人の姿も多く見受けられた。 
「「「「「「「「「「うをぉぉぉぉぉぉぉっ、ふぅっ! うをぉぉぉぉぉぉぉっ、ふぅっ! うをぉぉぉぉぉぉぉっ、ふぅっ! うをぉぉぉぉぉぉぉっ! ふぅっ!」」」」」」」」」」
 こんな掛け声を上げながら時折ジャンプしつつ、熱いメッセージやイラストの描かれたタオルやうちわをブンブン激しく振り回したり、拳を上げてくるくる回転したりして、奇妙な踊りもしていた、主に十代後半から五十代くらいに見えるいろんな種族の男達もいた。
 その前方にはステージがあり、
『濃い味 フナ虫クッキー 苦味は そんな悪くないよ Hey Hey Hey♪』
いろんな種族の若い女の子達が歌ったり踊ったり。
「この国にもA●Bみたいなアイドルグループがいるんだな。ファンの人達のオタ芸も容姿も、日本と似たようなところもあるな。天●・向みたいな感じの人もいるし。ペンライトはまだ発明されてないっぽいな」
 哲朗は微笑ましく眺める。
「ママ、あの人達、森にいる気味の悪い魔物みたいに吠えて暴れてるよ」
「コラッ、ああいう人達は気味の悪い魔物よりも気味悪いんだから、絶対近寄っちゃダメッ!」
 興味津々で近寄って行こうとした幼い子を必死に止めるお母さんの姿も。
「ハハハッ」
 哲朗は大きく笑う。
 あの場所から少し遠ざかった場所では、
「「「「「「「「「「「きゃあああああっ~ん♪」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「きゅん、きゅん、きゅん♪」」」」」」」」」」」
「「「「「バイアく~ん」」」」」
 こんな掛け声を上げながら、熱いメッセージやイラストの描かれたハンカチやうちわを振り回したりして叫び回っていた、主に十代から五十代くらいに見えるいろんな種族の女性達もいた。
その前方にはステージがあり、
『深海に一匹だけの魚 一匹一匹 違う個性を持つ♪』
いろんな種族の若いお兄さん達が歌ったり踊ったり。
「ジャ●ーズみたいなのもいるのか。失礼ながら、ファンの方はあまりモテなさそうな感じの子がやっぱ多いな。オカ●ナみたいな感じの子もいるよ」
 哲朗は楽しそうに眺めながら、その場所を通り過ぎていった。
 しばらく歩き進んでいくと、
「あらまぁ、哲朗さんじゃありませんか。はじめまして」
 背後から甲高い声を掛けられた。
「そのコスプレ、かなりヤバいんじゃ……ひょっとして、不敬罪で牢屋に入れられたという、ミスターホシコチヤさんですか?」
 哲朗は振り向いた瞬間、思わず笑ってしまう。
「その通りざます。オホホホ」
コキアダワさんのコスプレをされていた。
「勇気ありますね」
「おれは国家権力なんかにはビビりませんよ。何度牢屋に入れられようと、コキアダワさんのモノマネを続けますよ。この人のモノマネが一番やりやすいからね。ご本人様からの制裁と警察が怖くてモノマネ芸人が務まりますかって」
 ミスターホシコチヤはホホホッと高笑いする。
「その心意気、尊敬出来ます。さすがっすね」
「哲朗さんの体を張った芸の方が尊敬出来ますよ。よくあんな危険なことが怯まず出来るなって。おれには絶対無理です」
「いやいやぁ。慣れればお茶の子さいさいっすよ」
 哲朗とミスターホシコチヤ、初対面ですぐに打ち解ける。
「あーっ! ミスターホシコチヤだぁ~! 牢屋から出してもらえたんだね」
「コキアダワさんのモノマネのお兄ちゃんだ! 久し振りぃ♪」
「ミスターホシコチヤ、さっそくそのコスプレとは命知らずだな。その化粧、急いで取った方がいいぞ」
 周りに大勢の人々が集まって来た。
「あなたは何をされてる方なの?」
 ミスターホシコチヤはお決まりのモノマネを披露する。
「あいつそっくりじゃん。声だけならあいつにやられたのと同じく騙されそうだよ」
 哲朗は元いた世界のモノマネ芸人の一人と比較して称賛する。
 アハハハハハハハッ!
「面白いけど哲朗風に言うとリアルガチにヤバいよヤバいよだぞ」
 パチパチパチパチパチッ!
 観客から拍手喝采。
「きさま、また性懲りもなく。コキアダワさんに対する不敬罪で逮捕する」
「確かにあなたのモノマネ芸は面白い。でもやっちゃダメだ」
 いつの間にか、警察官の方々が彼の周りに。
 そして、すぐに逮捕された。
「これもおれの芸ですから~。では皆さん、またいつかお会いしましょう。コキアに、お任せ!」
 ミスターホシコチヤさんはドラゴン風の生き物に乗せられて、慣れた様子で警察署の方へ連れていかれたのであった。
「ミスターホシコチヤさんにアッ〇さんのモノマネもさせてみたいな」
 哲朗とファンの方々は、ピースのようなポーズをとって温かく見送った。
 
         ☆

「こんなにみんなコスプレしてるのを見てると、俺もなんかコスプレしたくなっちゃったよ。屋台でも衣装売られてるし、何かやってみるか」
 哲朗は様々な種類の着ぐるみやお面が売られている屋台を物色する。
「おう、これいいじゃん。これにしまーす」
グレーの体毛、肉球と耳はピンク、赤い首輪と黄色い鈴、六本の黒ヒゲの生えたケットシーの着ぐるみを八〇〇〇ララシャで購入した。
「俺のサイズにぴったりだし、ニャばいよ、ニャばいよ」
 さっそく着込んでみる。
「哲朗、ネコになってるぅ」
「ヤバいかわいい。ニャンニャンニャン♪」
「ネコ哲も超似合ってるじゃん」
「哲朗、お手」
 若い女の子達も集まって来て、イラストに描かれまくる。
「いてててっ。コラァッ、少年少女」
「「「「「キャハハハッ」」」」」
 幼い子ども達には蹴られたりもした。
 ともあれ、ご満悦な哲朗はその格好のままお祭り会場エリアを一通り巡り、来た道を引き返していく。
「さっきA●Bみたいなのがライブやってたとこ、握手会もやってるのか。これも日本とよく似てるな。ハグもやってるじゃん! 日本だと問題になりそうだな。この世界、CDは無さそうだけど、これに参加するためには何買ってるんだろ?」
「推しの子達のイラスト集や、その子達が描いた絵本や漫画や小説や詩なんかに、握手会の参加券が付いてくるんだ。アイドルとの握手会はほぼ毎週全国のどこかで、時には外国でもやってて、皆勤参加してるリアルガチ勢だと同じ子の本を数百冊、中には数千冊買ってる奴もいるよ。まあ、残念ながらお目当ての子に当日ドタキャンされちゃうこともよくあることだけどね。同じ子の本を百冊購入ごとに一回ハグして貰える権利も貰えるんだ。おいらは三〇〇冊買ったよ。おいら達のおかげで、この国の書籍年間売上ランキングはアイドルの関連書籍が上位を占めてるんだ。女の方も、男のアイドルの関連書籍かなり買ってるよ。社会評論家のババアがこの国の将来が心配とか嘆いてたけど、そいつが今までに出したしょうもない評論本の一億倍は売れてるからね、嫉妬してるんだよ」
 推しの子との握手待ちの列に並んでいたエルフ耳の小太りなおっさんは、鼻息を荒げながら早口で高い声で熱く語る。
「それは凄いな。グッズの複数買いは日本のアイドル事情とよく似てるよ」
 そりゃあドタキャンしたくなるよ、こんなヤバそうな連中ばかりじゃ。
 哲朗はそう思いながら苦笑い。
「あーっ、哲朗さんだ」
「ほんとだぁ! ヤバいヤバいヤバい、猫のコスプレしてるぅ。かっわいい♪」
「新聞や雑誌で話題の人、生で初めて見れて嬉しい♪ ヤバいよヤバいよ」
「ファンです! 握手して下さい」
 アイドルの女の子達が待機中のファンをよそに哲朗の側に駆け寄って来て、握手して来たり、なでられたり、ハグして来たりして来た。
「ぅおい、なんでこいつグッズ買ってないのにこんなにサービスしてもらえてるんだよ?」
「誰このおっさん?」
「哲朗っていう、熱湯風呂とか鼻ザリガニとか体を張ったリアクション芸で今話題の超々有名な芸人さんだよ」
 ファンの方の疑問に、アイドルの子の一人が伝える。
「知らねえ。おれその手の芸人には全然興味ないし」
「いくら人気芸人だからって特別扱いするなよ」
「「「「「「「「「「そうだ、そうだ!」」」」」」」」」」
「僕だって魔物養殖場主だぞ。年収一億ララシャあるんだぞ」
 ファンの方々からの妬みと怒りの眼差しに、
「ヤバいよヤバいよ」
 哲朗はいたたまれなくなり、この場から走り去っていった。

打ち合わせた鐘の前でコリル達と合流する。
「コリルちゃんもお友達も、めっちゃかわい衣装じゃん!」
 白雪姫風や、王様風や魔法使い風や、謎の果物の着ぐるみなどなど、みんな体験コーナーで作った手作りの可愛らしい衣装を身に纏っていた。
「哲朗おじさんのその衣装もすごくかわいいよ」
「ヤバかわいい」
「その格好のままで学校の授業にも参加したら?」
「それはきついよ暑いよ動きにくいよ」
 コリルとお友達に褒められて、哲朗は照れ笑い。

 ともあれ、哲朗とみんなはコスプレ姿のままで、家路についたのだった。

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