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02話
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その場にいた者全員が混乱した。
「僕はルガード公爵家の四男のクルスです。兄が出発時に急死しましたので、僕が兄の代わりにメルデス女王陛下と結婚する為に貴国に参りました」
場の混乱は更に増した。
とりあえずはこの少年を客人としてもてなし、事実確認を急いだ。
既にクルミア王国と帝国の帝都との間には、南部との戦争を勝利に導いたと言っても過言ではない超高速魔導通信網が構築されている。
特殊な魔導技術によって4時間毎に10分の通信が可能なのだ。
帝都との通信の結果、ルガード公爵家の三男の死亡が確認された。
そして帝国外務省との通信でルガード公爵家四男クルスのクルミア王国への婿入りが正式に決定した。
もちろんクルミア王国側は突然のことと両者の年齢差を理由に猛抗議した。
いくらクルスが成人しているとはいえ、余りにも大きい年齢差である。
だが帝国外務省にはまともに聞き入れてもらえなかった。
帝国側からすればいくら弱小国とはいえ、どの貴族が王配を出し発言力を強めるかが重要で、三男だろうが四男だろうが年齢差がいくつあろうがどうでもいいのである。
こうして予定通りに私とクルスの結婚式が行われることになる。
「娘より年下の男の子と結婚するなんてまだ何かの冗談じゃないかと思いたいわ」
互いに少女時代からの付き合いである侍女兼護衛のミアに話す。
私が家族以外で……、いや家族含めても最も信頼する存在だ。
「帝国のやることですから仕方ありません」
「綺麗どころを集めておいてね。彼には城の中だけで満足してもらわないと困るわ」
「かしこまりました」
既に噂は街中に流れている。
帝国への反感は高まるばかりだ。
私は、というよりこの国の王は名君が出ない代わりに失政というものがない。
弱小国故に政治上の選択肢が限りなく無いに等しいのだ。
なので王の人気は人柄だったり経歴に左右される。
夫を早くに亡くした私は同情を集めやすいので国民からは慕われている。
自分達が慕う女王を無下に扱われた国民の怒りは中々収まらなかった。
一部男性の間では自分の母親より年上の私と結婚するクルスに対して同情論があったのだが、いつの間にか聞こえなくなった。
なんでもその同情論の中核を担っていた男性が年下の女性との浮気現場を古女房に見られて袋叩きに……
ウソか本当かわからないそんな噂も流れていた。
この情勢を危惧した家臣達によって、結婚式後に城下の街をパレードする計画が持ち上がった。
私は速攻却下した。
そのパレードを見た人の誰もが私達のことを夫婦ではなく母子と見るでしょうから。
「僕はルガード公爵家の四男のクルスです。兄が出発時に急死しましたので、僕が兄の代わりにメルデス女王陛下と結婚する為に貴国に参りました」
場の混乱は更に増した。
とりあえずはこの少年を客人としてもてなし、事実確認を急いだ。
既にクルミア王国と帝国の帝都との間には、南部との戦争を勝利に導いたと言っても過言ではない超高速魔導通信網が構築されている。
特殊な魔導技術によって4時間毎に10分の通信が可能なのだ。
帝都との通信の結果、ルガード公爵家の三男の死亡が確認された。
そして帝国外務省との通信でルガード公爵家四男クルスのクルミア王国への婿入りが正式に決定した。
もちろんクルミア王国側は突然のことと両者の年齢差を理由に猛抗議した。
いくらクルスが成人しているとはいえ、余りにも大きい年齢差である。
だが帝国外務省にはまともに聞き入れてもらえなかった。
帝国側からすればいくら弱小国とはいえ、どの貴族が王配を出し発言力を強めるかが重要で、三男だろうが四男だろうが年齢差がいくつあろうがどうでもいいのである。
こうして予定通りに私とクルスの結婚式が行われることになる。
「娘より年下の男の子と結婚するなんてまだ何かの冗談じゃないかと思いたいわ」
互いに少女時代からの付き合いである侍女兼護衛のミアに話す。
私が家族以外で……、いや家族含めても最も信頼する存在だ。
「帝国のやることですから仕方ありません」
「綺麗どころを集めておいてね。彼には城の中だけで満足してもらわないと困るわ」
「かしこまりました」
既に噂は街中に流れている。
帝国への反感は高まるばかりだ。
私は、というよりこの国の王は名君が出ない代わりに失政というものがない。
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なので王の人気は人柄だったり経歴に左右される。
夫を早くに亡くした私は同情を集めやすいので国民からは慕われている。
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