【完結済】サバイバル奮闘記 転生悪役令嬢の逆転劇

忠野雪仁

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32.嵐の夜に

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昼間からの豪雨は夜中になっても止むことは無かった。
それどころか遠くに雷の音まで聞こえる。

「ヒッ・・・」

割と近くに落ちたのか空気を裂く様な大きな音がしたので、
思わずルー君を強く抱きしめてしまった。

腕の中にいるルー君は抗議に唸る事も無く、
ペロっと腕を舐めてくれたので少しばかり落ち着いた。
・・・良い子

王都の屋敷にいる間は特に雷を怖いとは思わなかったが、
洞窟の前の入り口に浸水防止用として、軽く石を積み上げただけで窓がある訳でも無い。

洞窟の中で雷の音がやけに大きく反響するのだ。

ルシエルは先ほどから寝ている二人に声をかけようか散々悩んでいた。

だけどこれから先もこんな事は何度もあるだろう。
その度に二人に頼っていては、ただの足手纏いになってしまう。

ルー君を抱っこしていれば平気、直ぐに夜が明ける、とりあえず目をつぶろう。

まだ落ち着かないうちに目を閉じたのが行けなかったのか、
ルシエルは、船が沈没して海に投げ出されたあの夜を思い出してしまった。

たまたま船が完全に座礁する前に独房から抜け出せたから良いが、
そうでなければ船と共に暗い海の底に沈んでしまっただろう。

あの断罪の日に周りにいる全ての人間にから責められて、
お義兄様やルイード様にも嫌われていると思い込んだまま。

気がつけばガクガクと震えてしまっていた。

そうだ少しだけ声をかけてみて返事が無かったらこのまま寝てしまおう。
こんな雷の音だものどちらか起きているかもしれないし。

「お義兄様、ルイード様起きてますか?」

ルシエルはそっと体を起こして、小さな声で二人に呼びかけた。

しばらく二人からの返事は無く諦めかけた時に、
同時に返事が聞こえた。
まるで妥協して手を取り合う事を決めた様に。

「どうしたんだいルシエル。」
「どうしました?怖い夢でも見たんですか?」

「少し眠れなくて」

「そっちに行って良いかい?」

「はい」
私は二人に見えているか分からないがコクリと頷く。

二人とも寝袋や敷物を持って私を挟む様に横になった。
「可哀想に怖かったろう」
お義兄様は私の髪を撫でてくれた。
「こんなに冷たくなってしまって」
ルイード様もルー君を抱いている手のひらの上にそっと手を被せてくれた。

二人のおかげでさっき迄の不安感は、すっかり無くなった。

さっき迄の不安感は無くなったのだけど違う不安感と言うか、
危機感と言うか何となく不味い気がする・・・

「ありがとうございます、二人とも安心出来ましたので私はもう少し奥で寝ますね」
これ以上奥はトイレの前だけど。

「駄目だよルシエル」
「そうですよ、ルシエルさん暗いなか動き回ると危ないですよ」
「それに選んだのはルシエルだから」
「そうですね、不満が無いと言えば嘘になりますが必然かとも思いますしね」
「おい、一番この結果に不満があるのは俺なんだが。」
「まあまあ」

気付かない間に何か選んでしまったのかしら。
考えても分からないですし、取りあえず寝てしまいましょう。
緊張はあるけど二人とも紳士だから平気なはず。

「二人ともありがとうございます、おやすみなさい」

そう言って眠るルシエルを見る二人の目は普段とは少し違う。
まるでこれから堕ちていく深淵を見つめる様に薄っすらとした怪しさを感じた。

恐怖から解放されたせいかルシエルは直ぐに寝りに落ちてしまった。

あれ程激しかった雷雨は進むべき道が決まった事に満足したのか、
次第に雨足が弱まっていった。

ルシエルも本来はそこまで鈍くない、仮に乙女ゲームを第三者的にやっていたら、
自分がどの様な選択肢を選んでしまって
どの様な未来が待ち受けるかなど容易に想像する事は出来たろう。
だが自身のことだからか、目まぐるしい程の環境の変化のせいか気づく事が出来なかった。

王国一の技術を持つ男と、王国一の頭脳を持つ男がこの日手を組んだ。
上等な獲物にこれ以上余計な獣を近づけさせない為に。

『コベツルート ノ フラグカイシュウ ニ シッパイシマシタ』
静かに告げる機械音に気づく者はいなかった。

ーーーーー

別章と言うかルート別として掲載を始めました。

これ以降の話は、別サイトのなろう様で随時掲載をして
こちらのサイト様にはまとまった所で展開する予定です。
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