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ルート別

50.薬草発見

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「午前中の結果はどうだった?」
全員が揃ったところでお義兄様がそう言った。

「鑑定は全て済ませましたが、残念ですが」
「そうか、では食事をした後に採集を続けよう」
「......」

私の言葉にお義兄様は、淡々とそう言ったけれども、
ダンさんは、やはり落胆しているみたいだった。

無理もない、今朝聞いた話だと着実にハーレック殿下の容態は悪くなっている。
万全の体調で万全の治療施設であれば、まだ体力ももつと思うけど、
この島に来てからはロクな食事も出来ずに、
川の水を直接飲んで直ちょく腹痛にもなっていたらしい。

加えて最近の暑さや不衛生な環境、病気にかかっていなくても、
厳しい環境だったのだ。

「そう言えば、デュークさんが来る前に、
聖女がダンに話かけていたみたいですが、
何かあったのですか?」

「いや大した事じゃないから気にしないでくれ」
まさか聖女に食べ物を恐喝されていたなど言える訳がないわよね。

今回聖女と少しばかり関わって分かった事は、
聖女はまるでハーレック殿下の心配をしていない。

人の婚約者をかすめ取っておいてとは思わないけど、
あまりにも情が無いのだ。
多分だけど彼女には私達が同じ人間と言う認識が無い。
攻略キャラと悪役令嬢キャラ、自分は幸せが約束されたヒロイン。

このゲーム全く知らない私はその考えが正しいか分からない。
でもそんな私だからこそ悪役令嬢に選ばれたのだろう。
身の破滅が分かっていても想い人が忘れられない重い女。

彼女みたいな人が悪役令嬢になっていたら、
殺意マシマシでヒロインを殺そうとするだろう。

欲しい物は全て手に入れる、ルートも何もあったものではない。
王妃の身分を手に入れて、デュークお義兄様を欲しがる。
悪役令嬢とは言え、肉食すぎるわね。

「あとお義兄様、水の備蓄がそろそろ足りなくなりそうです」
「そうだね、今日の午後採集して見つからなければ、
補充も考えた計画の見直しが必要だね」

「はい、食べ終わった食器は、そのままにしておいて下さい、
そのまま持って帰って水がある場所で洗いますので」
「帰る時に湖によってそこで済ませましょう、
では午後の採集を始めましょうか」

ルイード様の声で皆が立ち上がると、
ルー君がクンクンと臭いを嗅いでいる。

良く見るとダンさんのズボンの裾に、
紫色の小さな蕾をつけた雑草が付いていた。
まだ鑑定をした事が無い。

動物は人間よりも死や病気に敏感だと言う。

ダンさんは、昨日の夜ずっとハーレック殿下を看病していた。
ダンさんの体に人間では気付かないような病気の臭いが付いて、
その病気に効く草を嗅ぎ分けたのかも知れない。

「みんな待って下さい」

私はそう言うとダンさんの裾についた草を鑑定した。

『鑑定』

【鑑定結果】
名称:リキュール草
分類:植物
取得可能場所:湿地帯、倒木の側など
その他:草の根に強い殺菌効果がある
調合①:ツワブキ草と一緒に調合するとデトール薬の作成可

「ダンさんおめでとう、これがリキュール草です。
この草の根とツワブキ草を調合すればデトール薬が作れます」
「本当か…ありがとう、ありがとう」

ダンさんは泣き出した、見た目と違って本当に涙脆く、情に深い人だ。
そこからの行動は早かった。

「ルー君、この草が欲しいの探せる?」

ルー君は、草の臭いを嗅いでコクリと頷いた。
ダンさんに今日採集した場所までルー君と探しに行って貰い、
お義兄様は、風魔法で後を追っていった。
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