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54.渦巻く闇 〜ルシエル
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「聖女が死んだ?」
「本当ですか?」
ハーレック殿下を治療して、
ニ日後にダンさんから、そんな話を聞いた。
「死因は?」
「分からない、外傷も無かったし、病気でも無さそうだ、
朝起きた時気づいたら死んでいた」
「まあ、心臓発作とかかも知れませんし、
ありえない事では無いですね」
「それで?」
「いやそちらにも因縁があるし、この暑さだと死体の腐敗も早いから、
一応立ち合うか聞きにきただけだ」
「まあ俺の魔法で火葬するか、ルイードはどうする?」
「念の為、私も死体の状態を見ておきます。
有名な伝染病とかであれば見れば分かりますからね、
ルシエルさんに移ると不味いですから」
「だがそうすると王太子とルシエルを二人にする事になるが」
「私ならルー君もいるし、王太子もあんなに弱ってますので平気ですよ。
看病がてらにここに残ります」
「分かった、小一時間もせずに帰って来るから、
くれぐれも用心する様に」
「はい、行ってらっしゃいませ」
「では、ルイード頼む」
「ええ、ダンさんも捕まって下さい」
「ああ」
『転送』
掘っ立て小屋の前に三人は転送した。
明るい時に見ると尚更酷い建物なのが分かってしまう。
「聖女はこの中か」
「ああ」
「では一度外に運んで火葬しよう、希望の場所はあるか」
「こんな森の中だから何処でも変わりはないが、
小屋から少しばかり離れた場所で頼む」
「分かった、入るぞ」
「ああ」
そこには無造作に聖女が横たわっていた。
死んでから間もないから腐敗も始まっておらず、まるで生きている様だ。
「今少し動きませんでしたか?」
「ダン?」
「いやまさか、俺が確認した時は確かに死んでいたんだ」
「デュークさん」
「ああ、魔法鞄に入っている体力回復の薬を飲ませてみよう」
デュークが取り出した小瓶の中の液体をコクリと聖女は飲んだ。
瞬間聖女は明るい光に包まれた。
「聖魔法?馬鹿な邪な心の持ち主が使える訳が無い」
デュークは、目の前にいる聖女を改めてみると、
確かに少し前にあった彼女とは別人にも思える。
「貴方が助けて下さったんですか?」
「目が覚めたのか、私が助けたと言うか、成行きだな、
君は本当に聖女リリーナか?」
「聖女かどうかは分かりませんが、リリーナです、記憶はあやふやですが」
「どこまで覚えている?」
「ハッキリと覚えているのは、学園にいたころです」
「......そうか、少し長い話しになるが、
これまでの事を説明した方が良さそうだな、
辛くなったら言ってくれ、腹は空いているか?」
「そのお恥ずかしい話しですが、かなり」
「では手持ちの食料でも食べてから話を始めるか、
悪いが王都の様な食事は用意出来ないがな」
「いえ、野戦地にお供させて頂いた時も皆さんと同じ食事を取ってましたので、
口にできれば、なんでも平気です」
「......君は本当に聖女な様だな」
「はい?」
デューク達は、食事を取ってその後にこれまでの事を話しだした。
その頃、アイリス達は。
「殿下調子はどうですか」
「おかげでずいぶん良くなった」
木陰に座っているハーレックの顔色は確かに随分良くなった様に見える。
「そう言えば、デュークとルイードと結婚したと聞いたが」
「ええ、こんな場所ですから結婚式とかはあげられてませんが」
「そうか、今幸せか?」
「はい、生活自体は王都にいたときの方が流石に便利でしたが、
あの二人と結婚出来たのは幸せです」
「......そうか、済まないが水を一杯飲ませてくれないか?」
「はい、どうぞ」
そういって不用意に近づいたルシエルの口の中に、
王子は指を入れて喉の奥に何かを無理やり突っ込んできた。
ルシエルは、反射的にそれを飲み込んでしまった 。
王子が怖がるのでルー君を洞窟の中に留守番させてしまったのが失敗だった。
「王子、何を」
「心配するな、毒では無い、いずれ解放されて楽になる」
そんな言葉を聞きながら私は意識を無くしてしまった。
「リリーナ、これで良いのか?」
「ええ、完全に私が乗っ取るまでは、一週間ほどかかりそうだけど、
迎えに行くわ、そうしたらこの体で存分に愛してあげる」
「ああ、待っている」
これで、全部全部私のモノ、
やっとモブ女の退場ね。
キャハハ、本当に馬鹿な女、
ヒロインに勝てるわけが無いのに。
「本当ですか?」
ハーレック殿下を治療して、
ニ日後にダンさんから、そんな話を聞いた。
「死因は?」
「分からない、外傷も無かったし、病気でも無さそうだ、
朝起きた時気づいたら死んでいた」
「まあ、心臓発作とかかも知れませんし、
ありえない事では無いですね」
「それで?」
「いやそちらにも因縁があるし、この暑さだと死体の腐敗も早いから、
一応立ち合うか聞きにきただけだ」
「まあ俺の魔法で火葬するか、ルイードはどうする?」
「念の為、私も死体の状態を見ておきます。
有名な伝染病とかであれば見れば分かりますからね、
ルシエルさんに移ると不味いですから」
「だがそうすると王太子とルシエルを二人にする事になるが」
「私ならルー君もいるし、王太子もあんなに弱ってますので平気ですよ。
看病がてらにここに残ります」
「分かった、小一時間もせずに帰って来るから、
くれぐれも用心する様に」
「はい、行ってらっしゃいませ」
「では、ルイード頼む」
「ええ、ダンさんも捕まって下さい」
「ああ」
『転送』
掘っ立て小屋の前に三人は転送した。
明るい時に見ると尚更酷い建物なのが分かってしまう。
「聖女はこの中か」
「ああ」
「では一度外に運んで火葬しよう、希望の場所はあるか」
「こんな森の中だから何処でも変わりはないが、
小屋から少しばかり離れた場所で頼む」
「分かった、入るぞ」
「ああ」
そこには無造作に聖女が横たわっていた。
死んでから間もないから腐敗も始まっておらず、まるで生きている様だ。
「今少し動きませんでしたか?」
「ダン?」
「いやまさか、俺が確認した時は確かに死んでいたんだ」
「デュークさん」
「ああ、魔法鞄に入っている体力回復の薬を飲ませてみよう」
デュークが取り出した小瓶の中の液体をコクリと聖女は飲んだ。
瞬間聖女は明るい光に包まれた。
「聖魔法?馬鹿な邪な心の持ち主が使える訳が無い」
デュークは、目の前にいる聖女を改めてみると、
確かに少し前にあった彼女とは別人にも思える。
「貴方が助けて下さったんですか?」
「目が覚めたのか、私が助けたと言うか、成行きだな、
君は本当に聖女リリーナか?」
「聖女かどうかは分かりませんが、リリーナです、記憶はあやふやですが」
「どこまで覚えている?」
「ハッキリと覚えているのは、学園にいたころです」
「......そうか、少し長い話しになるが、
これまでの事を説明した方が良さそうだな、
辛くなったら言ってくれ、腹は空いているか?」
「そのお恥ずかしい話しですが、かなり」
「では手持ちの食料でも食べてから話を始めるか、
悪いが王都の様な食事は用意出来ないがな」
「いえ、野戦地にお供させて頂いた時も皆さんと同じ食事を取ってましたので、
口にできれば、なんでも平気です」
「......君は本当に聖女な様だな」
「はい?」
デューク達は、食事を取ってその後にこれまでの事を話しだした。
その頃、アイリス達は。
「殿下調子はどうですか」
「おかげでずいぶん良くなった」
木陰に座っているハーレックの顔色は確かに随分良くなった様に見える。
「そう言えば、デュークとルイードと結婚したと聞いたが」
「ええ、こんな場所ですから結婚式とかはあげられてませんが」
「そうか、今幸せか?」
「はい、生活自体は王都にいたときの方が流石に便利でしたが、
あの二人と結婚出来たのは幸せです」
「......そうか、済まないが水を一杯飲ませてくれないか?」
「はい、どうぞ」
そういって不用意に近づいたルシエルの口の中に、
王子は指を入れて喉の奥に何かを無理やり突っ込んできた。
ルシエルは、反射的にそれを飲み込んでしまった 。
王子が怖がるのでルー君を洞窟の中に留守番させてしまったのが失敗だった。
「王子、何を」
「心配するな、毒では無い、いずれ解放されて楽になる」
そんな言葉を聞きながら私は意識を無くしてしまった。
「リリーナ、これで良いのか?」
「ええ、完全に私が乗っ取るまでは、一週間ほどかかりそうだけど、
迎えに行くわ、そうしたらこの体で存分に愛してあげる」
「ああ、待っている」
これで、全部全部私のモノ、
やっとモブ女の退場ね。
キャハハ、本当に馬鹿な女、
ヒロインに勝てるわけが無いのに。
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