【本編完結済】白豚令嬢ですが隣国で幸せに暮らしたいと思います

忠野雪仁

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第三章

少佐だって、ダイエットで痩せて出世したんだ。

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「白豚はいるか?」

第一王子は、教室に入ってくるなり大声でそう叫んだ。
王子の呼びかけに危なく良い返事をしそうになったけど何とか自制した。

第一王子も令嬢に白豚いるかと訪ねて返事が返ってくる思っているのかしら。
まあ危うく返事しそうだったけど。

ただでさえ生徒の人数が少ない教室なのに、
この王子の一声で見事に静まりかえってしまった。

「うむ、まだ来ていないようだな」
「デブだから動きもノロマなんですよ」
「そうですよ、きっと」

ざわめき一つ起こらない教室に流石の王子も状況を理解したのか、
後ろに控えてるたいこもチーズに話をふって誤魔化した。
もチーズも間髪いれずに合いの手を入れた、お見ごと。

でも空いている席順から考えて、良くて侯爵家、多分伯爵家の人達が、
隣国とはいえ、筆頭公爵家の私に向かって、公衆の面前でデブとかノロマとか言ったら、
下手すれば物理的に首が飛んじゃうんだけど、分かっているのかしら。
平等って何を言っても良い訳じゃないのよ、自分の言動には自分の責任が伴うの。

帰る前に、ジーク様とエレオーレさんを止めないと、
もしお母様の耳に入ったりしたら、早々に八人クラスになってしまう。

いや王子にも容赦しそうにないから七人クラスね、
この人達はウィンザー王国城の悲劇を知らないのかしら、
我が国では、歴史の教科書にのるくらいの事件だったんだけど。

被害者の私が何故かそんな心配をしていると、
教室の後ろ扉がいきなり開いて、
ピンクちゃんが、教室に飛び込んできた。

「いけなーい、遅刻遅刻、私ってドジなんだから、テヘっ」
といいながら、頭をコツンと叩きペロって舌を出した。

学園の門をくぐってから、もうお腹いっぱいです女神様。
せっかく文化レベルを上げようと、お昼のお弁当は友達の女の子用にお弁当を作って来たけど、
全部身内で食べちゃいますよ。

私の心の悪態が届いたのか、テヘペロ爆弾が聞いたのか、
その後は、教室は少し歳のいった丸ぶち眼鏡の女性の担任が来るまで平穏に過ぎていった。

担任は教室に入って来て、今後の授業方針や明日の予定などを簡単に説明してくれた。
明日のAクラスは、お昼ちょっと前から男性も交えて茶会をして、
その後は自由時間で生徒同士の交流を深めたり、構内施設を確認したり、
クラブ活動を見学したりとノンビリしたスケジュールが組まれていた。

一般的な教養の授業も選択すれば受けられるのだけど、
爵位によって学園で学ばなければいけない内容に違いがありすぎる為に、
各クラスによって授業内容が大きく違う。

細かな説明は各家にパンプレットを既に渡しているらしいので、
私は帰ったらお母様に相談して、
ジーク様と一緒に選択学科やクラブを決めたいと思っている。

担任の先生からひと通り説明が終わると自己紹介が始まった。

自己紹介は席順通り、爵位の高い順にしていくみたいだった。
下位の爵位は、上位の爵位の生徒や派閥に鑑みて発言出来るようにと学園側の配慮らしい。
学園内では平等をうたっているけど、長いものに巻かれとけ主義である。

まずは、第一王子が自己紹介をしたのだけど、長くうざかった。
選挙演説ですか?自画自賛ですか?みたいな内容だったのだ。
もチーズも途中途中に拍手をしたり、褒めたたえたりと大忙し。

次のジーク様の自己紹介は、簡潔明瞭でそれでいて自分の方針を話していった、
危なく私は、もチーズになってしまうところだった。
危ない危ない、と言うかこの後私じゃないの、どうしよう。

一発狙ってこのクラスを三日でチメルぞとか言おうか、
だけど外したらその後の学園生活が終わってしまう。
無難にいこう、そうしよう。

「ウィンザー王国から来ました、リーナ・クラウドです。
まだこちらの国に来て間もなく、分からない事も多いですがよろしくお願いします。
後、出来れば女の子友達が欲しいので気軽に話しかけて来て下さい」

どや、無難?THE無難でしょ?
そう思って周りを見渡すと、クラスの皆が驚いた顔で私を見ていた。
つ、追加で「ワタシ、ガイコクゴ ヨク ワカーリマセン」とか言って逃げようかと思ったが、
着席してしまったのでもう手遅れだ、泣きたい。

『リアルちゃん、なんか私失敗しちゃったかな』
『大丈夫よ、リーナ。
馬鹿王子も言っていたけど、多分まだ皆白豚だと思っていたから驚いてるだけよ』

おお、流石リアルちゃん、的確な分析だ。

こ、この豚痩せたぞ。
少佐だって、ダイエットで痩せて出世したんだ。
痩せてしまえばこっちのもんよ、状態ね。

私は少し落ちついて、その後の皆の紹介を聞いてビビットする娘を探す事にした。
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