140字小説の記録

Akitoです。

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2024年

8月の記録

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◇『追従する足音』

 深夜3時、病院の3階の廊下を歩くと、その後を追うように誰かの足音が響くらしい。

「信じないぞ」

 そう意気込んで、私は廊下を歩きはじめた。キュッキュッ。スニーカーからゴムのすれるような足音が鳴る。

 カツンカツン。すぐ後ろから、ヒールのようなかん高い足音が鳴った。


◇『ぼっち同盟』

 夏祭りの日、一人ぼっちの僕は夜の学校に忍びこんだ。階段を上って屋上に出ると、そこには予想通り先輩がいた。

「やっぱりここでしたか」

 僕が隣に座ると、ちょうど遠くで花火が上がった。

「なんだか虚しいっすね」

「そうだな」

 屋上から見る花火はあまりに小さかった。


◇『墓参り』

 墓参りに来た。酒瓶をかたむけ、墓石をぬらした後には、小さな線香に火をつける。手を合わせ、俺は故人に話しかけた。

「あんたは嫌がったけど、俺が寂しくて建てたんだ。だから師匠、許してくれよな」

 当然、返事はない。
 ただ、線香から立ちのぼる煙がひらりゆらりと揺らめいた。


◇『月の正体』

 月から落ちる、という夢を見た。妙な話だが、これは予知夢だと思った。

「しかし、分からない。一体どうすれば、遠い月から落ちることができるんだ?」

 そう呟いた直後、私はマンホールに落ちた。

 穴の底から見上げた街灯がやけに明るくて、それが月の正体だとすぐに理解した。


◇『神様のいる方に』

 近所に小さな神社がある。参道の両脇にひまわりがたくさん植えてある、変わった神社だ。

 夕方になると、花は必ず社の方に顔を向けている。それが印象的だった。

 ただ一度、参道の手前に立つ私の方へと、ひまわりが顔を向けたことがあった。あれは一体なんだったのだろう?


◇『日焼け』

 子供のころ、夏は日に焼ける季節だった。赤くなった肌には、お風呂の水でさえ刺激が強くて、浴びるシャワーに隠れてこっそり泣いたこともある。

 でも、今ではどうだろう?
 僕は服をめくって確かめた。驚くほどに真っ白だ。

「流石に海なんて行けないよな」

 僕は病室で涙を流した。


◇『アサガオ』

 部屋を整理していると、一冊のノートを見つけた。小学生の私が書いたアサガオの観察日記だ。

「そういえば、すぐに枯らしたんだったか」

 懐かしさを胸に、私は庭の花壇を見た。

「今年はキレイに咲いてくれたな」

 花壇に青い花が咲いている。私も成長したのだろう、あの花のように


◇『どっちつかずの星空』

 夏の終わりが近づく夜、僕は星座を探す旅に出た。

 東には夏の大三角、西には秋の四辺形、まるで今の自分のようにどっちつかずの空を見つけた。

 この空はきっとすぐに秋になる。

「僕も何かになれるかな?」

 夜空にたずねて見るが、誰も答えてくれなかった。

#140字小説
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