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クリスマスの夜が始まった
あなたは……もしかして!?
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みんなが寝静まる夜の街の上空、トナカイの引くソリの上で私ははぁっと息を吐く。
あれからもう50件以上もプレゼントを配って回った。
もうずいぶんと回ったなぁと、物思いにふけっていると、ナカイさんがソリをガタガタと揺らし、少しだけ頭を私に向ける。
「次で最後だぞ! よく頑張ったな!」
「うん! ちょっと自信ついたかも!」
こんな私にも、できることってあるんだな。
私はこれまでの1日を少しだけ振り返る。
目が覚めたらサンタ村にいて、小人のビットに癒やされて、ナカイさんにソリに乗せてもらって、サンタさんに勇気をもらって、今ここにいる。
最初はとにかく責任を負いたくなくて、逃げようとしていたけれど、やって良かったかもしれない。
「次で、最後か……」
「着いたぞ」
ソリが止まったのは、2階建てのおしゃれな家の前だった。
私はそれまでと変わらず、子供部屋の窓がある屋根へと降り立つ。
そして、ナカイさんに小さく手を振りあいさつをした。
「行ってきます!」
50軒以上も家を回れば、さすがに手慣れたものでするすると窓のロックを解除して、部屋の中へと侵入する。
部屋の中は子供部屋にしては少し広めのようで、なんだか甘い香りがただよっていた。
「おじゃましまーす……」
私はおもちゃの散らばる床に注意しつつ部屋を進んだ。
「プレゼントはここでいいよね」
部屋にクリスマスツリーが飾られていたので、枕元ではなくツリーの下にプレゼントを置く。
そこまで進んでようやく気がついたことがある。
「あれ? 向こうにも誰か寝てる?」
暗くて気づけなかったが、ツリーを挟んで反対側に大きめのベッドがある。
よく部屋を見てみると、部屋にあるものは、だいたいが大小2つセットで置かれている。
大きい方の机に置かれたメイク道具から察するに、1つはお姉さんのもののようだ。
「あぁ、まだ小さいからお姉さんと部屋が一緒なんだね」
ふと、机の下に置かれているバッグが目に止まった。
「えっ? うそ? あれって……」
置かれたバックは見慣れたもので、改めて部屋をよく見ると私の通う学校の制服がかけられてある。
「……この人、同じ学校の人だ。どうしよう、絶対見つからないようにしなくちゃ」
で、でも大丈夫だよ。あとは帰るだけなんだから。帰るだけ。
落ち着こうとする心とは裏腹に、慌てた私はミスをしてしまう。踏みだした足に違和感が!
「いたぁっ!」
おもちゃの角を踏み、私は痛みで思わず声をあげた。
すぐにハッとして口ふさぐ。
しかし、ときはすでに遅かったようだ。
「……ぅんん? …………誰ぇ?」
向こうのベッドから人が起きあがってきた。
「ひ、平野さん!?」
起き上がってきた人物は、何をかくそうクラスメイトの平野にこさんだった。
ドッドッドッ。私の心臓が2倍速で動き始める。
まだ眠気が勝っているのか、ふらふらとした足取りで、平野さんは私の方へ近づいてきた。
そして、平野さんは目を細めて私の顔をまじまじと見る。
「……え? あかりちゃん??」
まずい。バレちゃった……!
ドキドキと今まで以上に心臓が鳴り響き、おしっこを漏らしていまいそうなほど緊張が高まる。
何か言おう、誤魔化そうと口を開くが、一向に声は出てこない。
終わった……。もうおしまいだよ。
ようやく頭が起きてきた平野さんの目が大きく見開かれ、私がすべてをあきらめかけた時だ。
チリンチリン。とベルの音がなる。
すると、平野さんは瞬く間にふらふらと体を揺らしはじめる。
そして、平野さんが床に倒れるすんでのところで、私はその体を受け止めた。
「平野さん! 大丈夫!? ……って、あれ? 平野さん? 寝ちゃったの?」
私が抱きかかえる腕の上でスヤスヤと寝息を立て、平野さんが眠っている。
状況が良く分からないけど、とにかくこれはチャンスだ! 今のうちにこっそり家を出ちゃおう!
私はなんとか平野さんの体をベッドまで運び込み、布団をかぶせる。
すぐにベッドを離れようと思っていたのだが、平野さんの机の上に気になるものを見つけてしまった。
「あれ? なんだろうこのストラップ……? 暗くてよく見えないけど、なんか知ってる気がする」
「なんだっけな?」と、ストラップをもっと近くで見ようとして、立ち止まっていると窓の外から声がかかった。
「おい、早くしろ」
その声で正気を取り戻した私は急いで部屋を抜け出した。
「危ないところだったな」
声の正体はナカイさんだった。
「ごめん、ナカイさん。色々あって遅くなっちゃった」
私は家で何があったのか説明しようと、あの出来事を思い返す。
そういえば、あの時鳴ったベルの音って、いったい何だったんだろう?
私の疑問に答えるかのように、ナカイさんの首元にかけられたベルがピカッと光った。
あのベル……。
「もしかして、ナカイさんが助けてくれたの?」
「そうだ。それも俺の役目なのさ。サンタがピンチの時はこの眠気を誘うベルを鳴らすんだ。なかなかいい音だったろ?」
確かに、言われて見れば澄んだ音だったな。
とにかく、私がドジして平野さんにバレそうになったところを、ナカイさんが助けてくれたってことだよね?
「ありがとうナカイさん」
「気にするな。帰るぞ」
ナカイさんにうながされるまま、重い体を持ち上げソリに乗る。
ナカイさんは疲れを感じさせない足取りで空を駆けた。
大変だったなぁ。ちょっと疲れちゃったかも。
私は最後にどっと疲れを溜め込み、無事、サンタの手伝いという大役を終えた。
あれからもう50件以上もプレゼントを配って回った。
もうずいぶんと回ったなぁと、物思いにふけっていると、ナカイさんがソリをガタガタと揺らし、少しだけ頭を私に向ける。
「次で最後だぞ! よく頑張ったな!」
「うん! ちょっと自信ついたかも!」
こんな私にも、できることってあるんだな。
私はこれまでの1日を少しだけ振り返る。
目が覚めたらサンタ村にいて、小人のビットに癒やされて、ナカイさんにソリに乗せてもらって、サンタさんに勇気をもらって、今ここにいる。
最初はとにかく責任を負いたくなくて、逃げようとしていたけれど、やって良かったかもしれない。
「次で、最後か……」
「着いたぞ」
ソリが止まったのは、2階建てのおしゃれな家の前だった。
私はそれまでと変わらず、子供部屋の窓がある屋根へと降り立つ。
そして、ナカイさんに小さく手を振りあいさつをした。
「行ってきます!」
50軒以上も家を回れば、さすがに手慣れたものでするすると窓のロックを解除して、部屋の中へと侵入する。
部屋の中は子供部屋にしては少し広めのようで、なんだか甘い香りがただよっていた。
「おじゃましまーす……」
私はおもちゃの散らばる床に注意しつつ部屋を進んだ。
「プレゼントはここでいいよね」
部屋にクリスマスツリーが飾られていたので、枕元ではなくツリーの下にプレゼントを置く。
そこまで進んでようやく気がついたことがある。
「あれ? 向こうにも誰か寝てる?」
暗くて気づけなかったが、ツリーを挟んで反対側に大きめのベッドがある。
よく部屋を見てみると、部屋にあるものは、だいたいが大小2つセットで置かれている。
大きい方の机に置かれたメイク道具から察するに、1つはお姉さんのもののようだ。
「あぁ、まだ小さいからお姉さんと部屋が一緒なんだね」
ふと、机の下に置かれているバッグが目に止まった。
「えっ? うそ? あれって……」
置かれたバックは見慣れたもので、改めて部屋をよく見ると私の通う学校の制服がかけられてある。
「……この人、同じ学校の人だ。どうしよう、絶対見つからないようにしなくちゃ」
で、でも大丈夫だよ。あとは帰るだけなんだから。帰るだけ。
落ち着こうとする心とは裏腹に、慌てた私はミスをしてしまう。踏みだした足に違和感が!
「いたぁっ!」
おもちゃの角を踏み、私は痛みで思わず声をあげた。
すぐにハッとして口ふさぐ。
しかし、ときはすでに遅かったようだ。
「……ぅんん? …………誰ぇ?」
向こうのベッドから人が起きあがってきた。
「ひ、平野さん!?」
起き上がってきた人物は、何をかくそうクラスメイトの平野にこさんだった。
ドッドッドッ。私の心臓が2倍速で動き始める。
まだ眠気が勝っているのか、ふらふらとした足取りで、平野さんは私の方へ近づいてきた。
そして、平野さんは目を細めて私の顔をまじまじと見る。
「……え? あかりちゃん??」
まずい。バレちゃった……!
ドキドキと今まで以上に心臓が鳴り響き、おしっこを漏らしていまいそうなほど緊張が高まる。
何か言おう、誤魔化そうと口を開くが、一向に声は出てこない。
終わった……。もうおしまいだよ。
ようやく頭が起きてきた平野さんの目が大きく見開かれ、私がすべてをあきらめかけた時だ。
チリンチリン。とベルの音がなる。
すると、平野さんは瞬く間にふらふらと体を揺らしはじめる。
そして、平野さんが床に倒れるすんでのところで、私はその体を受け止めた。
「平野さん! 大丈夫!? ……って、あれ? 平野さん? 寝ちゃったの?」
私が抱きかかえる腕の上でスヤスヤと寝息を立て、平野さんが眠っている。
状況が良く分からないけど、とにかくこれはチャンスだ! 今のうちにこっそり家を出ちゃおう!
私はなんとか平野さんの体をベッドまで運び込み、布団をかぶせる。
すぐにベッドを離れようと思っていたのだが、平野さんの机の上に気になるものを見つけてしまった。
「あれ? なんだろうこのストラップ……? 暗くてよく見えないけど、なんか知ってる気がする」
「なんだっけな?」と、ストラップをもっと近くで見ようとして、立ち止まっていると窓の外から声がかかった。
「おい、早くしろ」
その声で正気を取り戻した私は急いで部屋を抜け出した。
「危ないところだったな」
声の正体はナカイさんだった。
「ごめん、ナカイさん。色々あって遅くなっちゃった」
私は家で何があったのか説明しようと、あの出来事を思い返す。
そういえば、あの時鳴ったベルの音って、いったい何だったんだろう?
私の疑問に答えるかのように、ナカイさんの首元にかけられたベルがピカッと光った。
あのベル……。
「もしかして、ナカイさんが助けてくれたの?」
「そうだ。それも俺の役目なのさ。サンタがピンチの時はこの眠気を誘うベルを鳴らすんだ。なかなかいい音だったろ?」
確かに、言われて見れば澄んだ音だったな。
とにかく、私がドジして平野さんにバレそうになったところを、ナカイさんが助けてくれたってことだよね?
「ありがとうナカイさん」
「気にするな。帰るぞ」
ナカイさんにうながされるまま、重い体を持ち上げソリに乗る。
ナカイさんは疲れを感じさせない足取りで空を駆けた。
大変だったなぁ。ちょっと疲れちゃったかも。
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